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幼少期編

父の謝罪、母の秘密

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おれの義妹が可愛すぎる




その一言で全て解決するだろう
もう本当にそれで解決する、いやまだ正式に父様が再婚していないから義妹予定だが、それは些細な問題だ
階段から落ちた打撲の痛みも徐々によくなり、部屋の外へ出れるようになったおれをシャルティはトコトコ着いてくる…


「おにいたま、ルティもいっしょにいきたいです」


めちゃめちゃに可愛い顔でそう言われたら断るなんてできようか?否、無理、絶対無理、罪悪感でおれが死ぬ
手を繋いで食堂に行ったり、隣同士で座って食事をしたり…おれの勉強を隣で絵本を読みながら見ていたりと…おれの義妹が最高に可愛い…歩く癒しアイテムでしかない…
廃れた社畜の心を癒してくれる可愛い存在最高
本来顔合わせだけの予定だったが想像以上におれとシャルティが仲よくなったため数日泊まっていくことになったペトラさん達


どこに行くにもシャルティは嬉しそうに着いてくるため、そんなおれたちの姿をペトラさんも父様も優しく見ている、仲よくできてよかったと、そんなふうに思っているのを感じるよ
さらに、ペトラさんは本当にとても優しい、いい人であることもここ数日一緒に過ごし把握した…長年の社畜が乗り移ったこの身体は他人の裏表に敏感なのだ
父様との再婚も準備を進めているとのこと、事情があり盛大に挙式は出来ないが自宅で婚姻パーティーを行うと話していた

事情ってなんですかね?父様…?


ペトラさんもシャルティも良い人なのは理解した、しかし父様、あたなが何を隠しているかによってはおれはあなたを許せない心がある…



だからこそ、ペトラさん達が一度伯爵家へ戻った日、おれは父様の部屋で母について聞いた








「父様、少しお時間を頂いてもよろしいでしょつか………
どうしても、ペトラさんやシャルティをこれから家族として本当に受け入れるのに…幸せな家族になるのに…知りたいことがあるのです」


就寝前、父様が自室で本を読んでいる時間帯におれは、これからの事を考えてと強調し父様の下を訪れた
ぼくの言葉に拒否などせず、父様は手招きしてくれる…膝の上に乗せられ頭を撫でられ、この人は本当にぼくの父様なのだと実感する


「話とは…こんな夜更けにどうしたんだい?ルディヴィス」 


「どうしても知りたいことがあったのです…ぼくはペトラさんもシャルティも大好きになりたい…でも、でも………
ぼくを置いていってしまった母様がいつか帰ってきたら…ぼくは、どうしたらいいんだろうと不安でたまらないのです…」


父様の胸に甘えるようにしがみつき、幼い息子が2人の母を抱える可能性に怯えている事を伝える
おれの記憶の中では母と父が離婚したとまでは知らない、シャルティの見た目もあり、父様が隠している事実を知らなければ先に進めるわけがないんだ

息子の不安な気持ちに父様はどう答える?はぐらかすのか?そんな気遣いは不要だ内緒だけど精神年齢だけ三十路になっているんですおれ、何でも打ち明けて来い


「ルディヴィス………そこまで思い詰めていたんだね…気付いてやれずにすまない
まだお前は幼い…真実を知って傷つくかも知れないと隠していたのは私の勝手な判断だったのかもしれないな…真実を聞きたいんだね?


わかった…
後悔しないと…誓えるかい?…」


父様が頭を撫でながら、おれを真剣に見つめ問いかける、すかさず頷くと、大人になったんだねと微笑まれた…すいません中身が三十路になってます…なんて言えなかった…



どこから話そうかと、父様は語る…
何故母がいないのか、何故再婚となったのか…何故シャルティはおれや父様に似ているのか…
想像の斜めを行く答えが返ってくるなんて思ってもみなかった



おれの、ルディヴィスの本当の母は隣国の公爵家に生まれた令嬢
名をメルティーラと言い、大人になっても夢見がちで可憐な美女だった…父様と母様は国同士の結びつきを強くするための政略結婚で結ばれ、おれが生まれる事になる
しかし、夢見がちなおれの母は母にはなれなかった…子育てを乳母に任せるのはいい、だが我が子として受け入れる自覚がなかったのだ…拒絶を繰り返したまま、時が流れ…そしておれが5歳の頃、庭師の男性と恋に落ち、逃げるように駆け落ちしたのだと言う…

元々政略結婚、隣国の公爵家からは娘の失態について謝罪があったが、大事にしてほしくないと話し合いの末、双方同意の上離縁となった事になっている


そしてペトラさん、彼女は父様の初恋の人だった、しかし政略結婚を組まれ、サングイス公爵家の跡取りだった父様はその恋を諦めメルティーラさんと婚約した

ペトラさんは元々とても優しく教養も高い、こちらも政略結婚で父様の弟と婚姻したと言う、顔立ちの似ていた弟だったと、だからシャルティは父様やおれにもよく似ているのだと…

父様はずっとペトラさんに対する想いを伏せ、弟の婚姻も喜び祝福してきた…そして自らの妻となったメルティーラさんについても愛を捧げた…
しかし、その思いは届かず妻は庭師と駆け落ち…弟は昨年流行り病で帰らぬ人となる


何故、今ペトラさんと再婚する事になったのか…それはペトラさんの実家で早くに夫を亡くした彼女の立場が弟夫妻に奪われてしまったからだという
このまま放置すれば確実に病気に見せかけ闇に葬られる可能性が高いのだと…
自分の初恋を抜きにしても、弟の忘れ形見を無碍にできず…多少周囲からの反対もあったが押し切り今回の再婚に至ったと…簡単におれに分かるように父様は、ぼくを抱きしめながら教えてくれた


………………うん、重い!!!想像を超えて重かった!!
父様がペトラさんと浮気しちゃってたのかな!?とかおれの浅はかな考えを謝罪したいくらい重かった…すいません…父様人格者じゃん…イケメンじゃん…

これは言えねぇよ…普通に考え幼い子にお前は実質的に生みの母に捨てられたんだよなんて…言えないって…
ペトラさんも本当にいい人でしかなかった…
シャルティが似ているのも、父様が顔合わせを早く終わらせてこちらにペトラさん達を引き入れたいのもよくわかった…

でも、これはおれが精神年齢社畜だからこそ受け入れられる事だ…幼い心のおれではきっと母に捨てられてないと駄々をこねペトラさんもシャルティも受け入れなかった家もしれない

それが乙女ゲームの世界でのぼくなのか…憶測でしか言えない
けど今、ここにいるはおれだ…
父様の肩が震えるのがわかる、息子に嫌われてしまう可能性もあるよな、わかるよ
でも、おれは大丈夫、ちゃんと受け入れられる…

父様の胸にぐりぐりと頭をこすりつけ、ぼくは伝えた

 


「こんなにも優しい父様で嬉しいです…ぼくは2人と、父様とちゃんとした家族になりたい」






そう、伝えた時、頭上で父様が涙ぐんだ声が聞こえた

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