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幼少期編

プロローグ

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人生とは就職する職場でその後のその七割が決まってしまう、それはおれの体験談から言える事だ
新卒で就職した所、そこは所謂社畜が生息する会社だった
他の会社でもこんなものだよと、指導についてくれた先輩はおれが独り立ちすると、寿退社していった…主夫になるといって


先輩がいなくなってから何年経っただろう…自分がブラックな企業で社畜として飼われているのだと気付いた時にはもう色々と遅かったのだ
ブラックな企業あるある、辞めるなら後釜を用意してからにしろ、お前が辞めれば仲間が苦しむ、お前の代わりはいくらでもいる、ここを辞めたら次は無い等など
…良いように丸め込まれて過ごす日々


会社の歯車に組み込まれてしまったおれには逃げ場など無く死ぬその時までその会社に飼われ続けたのを覚えている
そう、死ぬその時まで…





14連勤帰り…おれは…
階段から足を踏み外して死んだ筈だった





「坊ちゃま!坊ちゃま…!!ああ、なんてこと…!主治医を!早く主治医を呼びなさい!
坊ちゃま!お気を確かに!旦那様も奥様も外出中になんということだ…!」


おれの名前は坊ちゃまじゃない…おれは…おれは誰だ?階段から落ちた記憶の続きは坊ちゃまと呼ばれる知らない世界だった…そんな事があっていいのだろうか…?
坊ちゃまと呼ばれるおれ…階段から落ちていた事を目の前の真っ青な顔をする男と女が慌てながら話し、対応どうこうなど言っていた気がする…


意識ははっきりとしているのに、視界にモヤが掛かったような…不思議な感覚…
これは、社畜を極めたおれが階段から落ちた事によって見る夢なのだろうか…しかし、この全身を襲う痛みは…紛れもなく本物の痛みだ………


 
ここは…おれは………………






………………
…………
……



次に目が覚めた時、おれは知らない部屋に寝かされていた
肌触りのいい寝具…これは社畜では買えそうもない素晴らしい触り心地…高級品だとわかる
頭と手足に包帯が巻かれているような感じもする…
階段から落ちて怪我をして…何処かに運ばれたのか?

打撲してしまったであろう自分の手を見る
しかし、成人をとうに過ぎた男の手はそこにはなかった
色白の華奢な手、それも子どもの手が目の前にある……握りしめると子どもの手も同じ動きをする………嘘だろう………?

まさかと思い、ベッドから起きるが視点が低い…
まだ痛む体を引き釣り姿見を見つけ覗き込み、おれは絶望した


姿見に映り込むのは、くたびれた三十路の社畜ではない…先端に掛けて色褪せた暗い赤色の髪、血のような赤い瞳…………整った顔立ち、しかし幼く、包帯を巻かれた箇所が痛々しい…6.7歳ほどの美少年が姿見の前に居た






「だ、誰だよ………これ……………」







急に動いた痛みに、また意識が遠のく





階段から落ちたおれは…社畜だったおれは………
ここは何処なんだ…おれは誰なんだ……?





意識を手放すおれに、誰もその答えを教えてはくれなかった
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