離縁しようぜ旦那様

たなぱ

文字の大きさ
上 下
95 / 118
騒動編

真実と判決

しおりを挟む




「お願いっ、ううっ、フリード様に会わせて!」


そう、何度も何度も涙を零しながら泣きじゃくる聖女を見てフリード様はどんな気持ちでいるのだろう?もしかしたら運命の人…的な存在だったり?

彼女が何かしらの物語の中でそのヒロインが聖女だったら…そう考えてしまうのは、前世でそういう物語が流行ったとか知ってるからだ
ねーちゃん経由で色々無駄に知識だけはあるんだのなー前世のおれ、磯野は

でも、そんな想像をしても全然不安にならないのは、ひたすらおれが狼吸いしてても嬉しそうに受け入れているフリード様が居てくれるから
早く帰りたいな…既にアデルバイト辺境伯の応接室だけど!!!おれは寝室に帰りたい!!!


「レラージェ国の聖女、キミの言い分はよくわかったよ…フリードに会わせたら満足するんだね?ちゃんと話ができるなら会わせてあげるよ」


隣から声が聞こえてくる…顔は見えないが、雰囲気からしてレドラ王子はこの取り調べ的な現場を面白おかしく楽しんでるのがなんとなーくわかる
彼女がおれの誘拐事件を計画し、排除しようと実行したのは事実…取り調べとして今話を聞いているけどそれはほぼ無意味だ
聖女の罪はもっと大きくなるかな?とか、聖女がフリード様が狼って事実を知った時の反応を考えつつ話してるようなそんな感じがする…


「もちろんです!フリード様があたしを見たら全部わかります!誰が間違ってるか!そこのモブがいかに酷い人間かも!!!」


自分の立場わかってるかい!?聖女!!!あと何を根拠におれを酷い人間だと言うのか…聖女よ…
てか、モブなのはモブ顔で生まれてきた自分が一番よくわかってるぜ!
既にドラレイド帝国の辺境伯夫人なおれに対して酷い事を言っている事実も罪に付け加えていそうなレドラ王子は楽しそうに聖女の訴えに対してこう言った


「リデン夫人の祖国で不要だと言われた聖女様はフリード、キミと会いたいそうだけど…ずっと目の前で会い続けてる時ってどうしたらいいかな?
ねぇ、フリード?」



レドラ王子は横にいる巨大な狼に話しかける…けどフリード様は答えない…いや、答えられない
だって獣化していると話せないから…ついでに獣化してると全裸だ
おれがしがみついているとはいえ、喋るために獣化解いたら一糸まとわぬ美しい肉体美を晒す事になる…つまり全裸を晒す事になってしまう
でも、それで良い!おれの旦那の美全裸はおれだけのもんなんで!


「え………?うそ…………そ、その…その化け物がフリード様?モブのバカでかいペットの犬でしょ?
何言ってんのよ…フリード様は獣人よ?
フリード様よフリード様…!あたしが会いたいのはフリード様!!!アデルバイト辺境伯の当主で銀髪の…かっこいい小説のヒーロー………
それがそんな犬なわけ…毛むくじゃらの気持ち悪い獣なわけ無いじゃないの!!!!」


「……………………は?
おい、聖女…今なんて言った?何処が毛むくじゃらの獣だ!!!フリード様はこんなにもスベスベふわふわの最高級な毛並みで良い匂いもして超絶可愛いしかっこいいんだからな!?!
フリード様が気持ち悪い!?!ふざけた事言ってんじゃねーよ!!恐ろしいほど素敵だろ!!おれが居ないと生活できない♡とかいって四六時中甘えてくるこの可愛さを馬鹿にしてんじゃねーよ!!!
おれ、この姿のフリード様にも抱かれていいって思ってますし?この姿の狼ちんこだって愛せますし!?普段のちんこの威力も知らねぇ雌がフリード様を愚弄すんな!!!!」


「………ふふ、くくくっ………あっはっはっ!!!いいねぇ、リデン夫人最高だよ!フリードも嬉しいからって尻尾振りすぎるとホコリが舞うよ?
あー楽しい…ふふふ…っ、帰ったらミルドにも教えてあげなきゃ」


おれは聖女の言葉になんか我慢が出来なかった…
フリード様を気持ち悪い獣っていう部分とか特に許す事なんて出来なかった…だからこそもふもふ胸毛に顔を埋めたまま叫んでしまったのだ
まだ風呂でちょっと見ただけだけど、獣なフリード様のフリード様とか規格外でやばいんだからな!?気持ち悪いっていうより全身が神々しいだろ!?
馬鹿にすんじゃねぇよ!!ていうかフリード様全身、抜け毛の一本までおれのだし!?!

はぁ、はぁと息を整えつつ、フリード様にしがみつき直す…
ふと、見ると本当にレドラ王子が言うようにフリード様はおれの言葉が嬉しいのか、ふっさふさの可愛い尻尾をブンブンブンブンブンブンと激しく振ってる…うん、くそ可愛い

聖女が嘘よ!そんな!信じないわ!とか言ってるけどもう、どうでもよかった
てか聖女、メニラ姫の時もだけどさ…全然学習しないのな?ドラレイド帝国の禁句、余裕で破ってく姿は逆に凄いと思うよ


ひとしきりレドラ王子は楽しそうに笑った後、フリード様はこんな毛むくじゃらの気持ち悪い獣じゃない!信じないわ!と喚き散らす聖女の口を再び封じたような音が聞こえた


「どこまで愚かなのか気になって泳がせてたけど…想像以上に酷いね
こんなのが友好国となるレラージェ国の聖女だと信じたくは無かったよ…ドラレイド帝国で行ってはいけない差別の言葉を辺境伯に向かって連呼した罪で開戦だってあり得るのにね…
でも安心するといい、戦争なんて野蛮な言葉父上達脳筋の考えだからね

聖女、ドラレイド帝国第三王子である僕がお前に下す判決は……奴隷穴嫁としてナッグミッド侯爵家へ嫁ぐ事を命ずる…これでどうかな?リデン夫人?」


「…………え?おれ!?!え!?!よ、よ、よ、ヨロシクテヨ?????」




流石レドラ王子、おれがふと思ってた聖女の罰ドンピシャな判決をしっかりと下して下さった



しおりを挟む
感想 125

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

金の野獣と薔薇の番

むー
BL
結季には記憶と共に失った大切な約束があった。 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎ 止むを得ない事情で全寮制の学園の高等部に編入した結季。 彼は事故により7歳より以前の記憶がない。 高校進学時の検査でオメガ因子が見つかるまでベータとして養父母に育てられた。 オメガと判明したがフェロモンが出ることも発情期が来ることはなかった。 ある日、編入先の学園で金髪金眼の皇貴と出逢う。 彼の纒う薔薇の香りに発情し、結季の中のオメガが開花する。 その薔薇の香りのフェロモンを纏う皇貴は、全ての性を魅了し学園の頂点に立つアルファだ。 来るもの拒まずで性に奔放だが、番は持つつもりはないと公言していた。 皇貴との出会いが、少しずつ結季のオメガとしての運命が動き出す……? 4/20 本編開始。 『至高のオメガとガラスの靴』と同じ世界の話です。 (『至高の〜』完結から4ヶ月後の設定です。) ※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。 【至高のオメガとガラスの靴】  ↓ 【金の野獣と薔薇の番】←今ココ  ↓ 【魔法使いと眠れるオメガ】

弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~

荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。 弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。 そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。 でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。 そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います! ・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね? 本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。 そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。 お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます! 2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。 2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・? 2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。 2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

処理中です...