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騒動編
ドキドキ!誘拐体験会! 中編
しおりを挟む若干の曇り空、遠足には向かないが誘拐事件体験ならこのくらいの天気が丁度いいのかもしれない
先日話し合った通り本日、おれは誘拐騒動に巻き込まれる被害者を体験する
昨日はなんか不安な気持ちが湧いてきてたけど…どうしよう一晩寝たら遠足気分になってしまった…
普通なら良い子は真似しないでね!!絶対駄目だからな!って感じの体験を合法的?王家監修の元?できる貴重な機会…冷遇妻さえも楽しんでたおれには丁度いい経験な気がするのだ
おやつも持ったし!気分は遠足!軽く旅行!
なんとなく、聖女が何しようがパンデミック公爵家双子が何を考えてても、おれが誘拐されたら平然とフリード様が直に助け出してくれるって気がするから内心とても安心している為、心はとても穏やかである
「ではフリード様!行ってきますね!」
「……………ああ、本当は行かせたくないが…
何度も言うが、決して無理はするな…何かあったら俺を呼べ…わかったな?
後、いくらレドラ王子のサポート込みであえて誘拐されると言っても犯人を刺激しては駄目だ
そのおやつ、犯人の前では絶対食べるなよ?」
「え、あ、あうん?おう!もちろんだとも!」
やばいやばいフリード様はおれの思考回路がわかっちゃう系旦那様なの!?流石すぎる…!おやつは食べませんので!迂闊に変な事を考えてはいけないって事を学んだよフリード様…
そんなこんなでメアリー達メイドや執事の皆さんにも本当に誘拐されに行くんですか?と泣かれつつ、おれは無害そうだけどすごく仕事が出来るショタ、チュウ太くんを護衛兼従者として引き連れ、パン屋と御者を兼務するイノシシおじさんの馬車に乗り込んだ
「リデン様とフリード様達で誘拐に対する温度差酷過ぎておいら風邪引きそうです」
と、チュウ太くんに言われつつ…
元気にアデルバイト辺境伯を出発したおれたちはパカパカといい感じに眠くなる馬車の音を聞きつつ、辺境伯領の一番大きな街へ向かう
片道馬車で15分!狼フリード様の背中に乗ったら僅か5分!で到着する孤児院を訪れるのが今日の目的
その移動の最中にモブモブ双子がおれを誘拐して、街外れに用意してあるパンデミック双子の貸別荘へ…
そのタイミングまではまだ分からない為、気を引き締めて欲しいって話だった
おれよりもチュウ太くんの方が緊張してるっぽいが、大丈夫大丈夫!たぶん!
ミルドおじさんが悲しむことをたぶんあの第三王子はしないだろう…おれが亡き者にされるとかもミルドおじさん的には悲しい筈だし?
レラージェ国の不良債権な聖女がこれ以上国に迷惑をかける前になんとかした方がいいのも分かるから
現状、何か罪として裁くにはきっと足りないのだろう…メニラ姫から婚約者を奪い取ったのも充分罪だとは思うが…聖女って立場では裁けないのかな?
まぁ、今は考えてもしょうがないしその辺はドラレイド帝国にお任せしよう
おれはとりあえず、本当に孤児院訪問は予定してたため、気合い入れて準備していた差し入れのお菓子の味見をチュウ太くんに頼んだりとかしてその時が来るのを待った
「来たみたいですよ、リデン様」
そう、チュウ太くんの冷静な声と共に、パン屋な御者おじさんの「誰だお前達!!」そんな声が聞こえ…馬車が急停止する
直後、かなり丈夫である筈の馬車の扉が弾け飛び、モブモブ双子が馬車に乗り込み、手際よくおれとチュウ太くんを拘束した
腕を後ろで縛られ、猿轡を噛まされる
すごい…手際の良さ!本格的!猿轡なんて初めての体験過ぎる…!てかショタにまで猿轡すんの!?なんか倫理的に不味くないですか!?
急な出来事に動揺し、声も出せず怯える妻っぽい雰囲気のまま、同じく怯えるショタと共に目隠しをされてから馬車を降ろされる
そのまま持ち上げられるような浮遊感があり、何処かに運ばれるのがわかる…
目隠しは流石にちょっと怖いかも…!とドキドキしていると小声でモブモブ双子が「あまり動かないで下さいね、怪我しますんで」って気遣ってくれる声がした
動きたくても動けないくらいには拘束されてます!大丈夫ですよ!モブモブ双子さん!
…………………
……………
………
暫くモブモブ双子に運ばれ、連れていかれた先はなんとなく埃っぽい場所?だった
パンデミック公爵家の双子が借りた貸別荘にしては埃っぽい…もしや地下室なのか?目隠しを外してくれないからわからないが…
種明かし含めていつになるのだろうか?そう思っていると、さっきまで優しく運んでくれていたモブモブ双子のどちらかが急にうめき声を上げ、おれは浮遊感に襲われた
「うぐっっ………っ、!!うがぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーーーー!?!?」
「うわあっ!?!?」
ボスンッ
急に感じる背中への衝撃的、なんだ!?一体何が起きたんだよ!?!痛くはない…痛くは無いが急にどうしたんだ…!?!
背中に当たる感じから、ソファとかそんな感じの場所に向かって投げられたのか?って想像しかできない…モブモブ双子急にどうしたんだよ…!?
わからない、目隠しされてるから何が起きてるかわからない…え、何?何があったの?モブモブ大丈夫なのか?何が………
「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーー!!!やめでぐれぇぇぇぇぇーー!!!痛い痛い痛い痛い痛いーーー!!」
「モブット!!!やめてください聖女様!!!何をなさるんてすか!?言われた通り辺境伯夫人をここに連れてきました!何が不満なんですか!?!」
「は?煩いわよモブ、なんで手酷く犯してから連れてこいって言ったのに優しくソレ、持ってきてるのよ!
馬鹿じゃないの?言葉理解できてる!?
ソレをゴミ同然にして捨てるの、この世から!あたしの人生をめちゃくちゃにしたあの男を消すの!その意味わかってる?」
「ぎゃぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーーーーー!!!!!!」
酷い悲鳴が響き、ドサリとおれの横に何かが降ってきた…気がする…
聖女、あの聖女何をしたんだ?結界魔法って人を叫ばせる物じゃ無いだろ!?何が起きてるんだよ…??
わけもわからず猿轡されてる事も忘れてて声を出そうとした瞬間、視界が白く染まる…目隠しを無理矢理取られたんだって理解したのは目の前にソファから崩れ落ちたモブモブ双子の片割れが泡を吹いて倒れてたから
何をされたのか理解したくないけど、どう見ても失神し失禁しているその姿はあまりにも可哀想に見える…
それから……………
「いいご身分ね?モブ野郎…!レラージェ国ではよくもあたしの素敵な断罪からの第二王子と結婚して王妃って未来潰してくれたわね?
あたしと同じ転生者さん?
絶対許さないんだから…フリード様は渡さない、フリード様と外伝ストーリーで結婚して幸せになるのはあたしなんだから!!!!」
鬼の様に醜い顔をした聖女がおれを睨見つける
え、腕の立つ筈のモブモブ双子さんをこうも容易く無力化出来るのかよこの女…………
な、なんかやばくない?誘拐事件体験会!とかいって浮かれてたおれは馬鹿だったのかもしれない…
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