離縁しようぜ旦那様

騒動編

本気で招かれざる客

ドラレイド帝国の一夫多妻制は恐ろしいと学んでいる最中のおれにとって最も強大な相手…それは諦めない強い心を持った存在だと言える

なんでかって？
それは普通なら、唐突に第二夫人の話をされたとしても、自分フリード様の嫁だけど人なんで！ドラレイド帝国的なあれこれ分かりません！妻が決める事でもフリード様に決めてもらわないと…か弱いおれは一夫多妻制とか第二夫人とか言われても困るんです！って返答すれば大抵怒って帰宅するから…この場合はめんどくさいが1回で済む

しかし、中にはこんな素晴らしい話はありません、ドラレイド帝国に嫁いできた以上一夫多妻制を取り仕切るのは第一夫人の役目！何故それがわからないの！わたくしこんなにも優しく強く、第二夫人に相応しいのに！もう！！！って物凄く自信がある強い心の女性…と男性…彼らは一回の訪問じゃ諦めないのです

そう、例えば今目の前にいるかれこれ5回目の御懐妊おめでとうございますと第二夫人如何ですか？って話を持ち込んでくるパンデミック公爵家の双子の方とか………



「そろそろ気持ちは纏まりまして？わたくしも、こちらのノヴィも直ぐにでもこちらに嫁げますのよ？
フリード様は強き雄、強き子を残す事を定められし雄です
リデン様お一人では………こう言ってはなんですが…半獣しか産まれない可能性もありますわ
だからこそ未来のアデルバイト辺境伯の為にも第二夫人としてわたくし、第三夫人として双子の弟のノヴィを強く進めます！わたくし達何度も言いますけどリデン様の立場を害するつもりはありませんのよ？
フリード様が発情期に入った際、わたくし達も参加させてくれるだけでも…ねぇ、ノヴィ？」


「ソノケンニカンシマシテハ、ダンナサマニカクニンヲトリマセント、タダノヒトデアルワタシニハニガオモクデスネ…………」


「……………………っ！はぁ…もう、なんて強情なのかしら？強い子を残せないフリード様の身にもなってくださいまし…！今日はこのくらいにしてまた明日来ますわ…行きますよノヴィ！」


「ゴムリナサラズ…ホント…ホント…………」




連日なんで諦めずに来るんですかパンデミック公爵家ー！！！前世的にはパンデミックって感染爆発的なノリなんだよ！？感染の根強さなの！？何が何でもアデルバイト家に嫁いでやるって気合いなの！？
訳が分からない…！！でも相手は公爵家、下手にふざけんな無理だよくんな！とか言えない…爵位の壁がある！！

はぁ、諦めてくれ…おれには一夫多妻制とか荷が重いから諦めてよ…そう思うのにたぶん明日も来るんだよなあの双子
毎日来て気持ちは変わりました？って第二夫人と第三夫人を勧めてくる…めげずに…毎日決まって三十分くらい粘って後は帰るんだあの双子…なんで三十分か、知らん！おれが知りたい！


お疲れ様ですとメアリーが紅茶を準備してくれる…うう、紅茶が心に染みわたる…
ついでにチュウ太くんが肩まで揉んでくれる…ショタの優しさが染みるっ！意外と力強いのねチュウ太くん！
肩を揉まれながら紅茶を啜り、パンデミック公爵家の双子について改めて考えてみた


ドラレイド帝国で強い力を持つパンデミック公爵家はバイソンっぽい見た目の獣化をするご当主様が治める一族らしい
フリード様の第二夫人とかになりたい2人ももちろんバイソン系と思われる茶髪になぜか赤いメッシュが美しい…見た目は物凄い美形の美男美女
パンデミック公爵家の八女と八男で双子、とは言え生まれた順に姉と弟らしく、姉のガラレナ様と弟のノヴィ様と呼ばれてるとかなんとか…

フリード様が鮮血の人狼と恐れられていた頃、一度婚約の話が持ち上がったが、他の人と同じく恐れをなして拒否したらしい話も聞いた…なのに、何故今になってめげずに一夫多妻制をしましょう！って凄まじい圧で来られるのか………全く理解できない

一度断れば諦める人たちと違って毎日毎日…どうやって辺境伯まで来てるんだ？もしかして辺境伯領に泊まり込んでたりするのか…？こわっ！！
何かに焦るような雰囲気もあったし…何か急ぐ理由でもあるのかな？知らんけど
ドラレイド帝国の結婚事情が奥深過ぎて胃もたれを起こしそうだ…



「よし！どうせ明日も来るみたいだし？考えてても疲れるだけだから今日は皆でお茶しよう！
久々に別邸でケーキ作っていい？」


メアリーの耳がケーキでピクリと揺れ動く、これは良いよって事だろう
嫌なことがあったら息抜き大事！ストレスは赤ちゃんに良くないって言うし！そんな気持ちでおれは無心でケーキ作りをして、別邸でまったり過ごした



嫌なこと忘れた筈なのに…
ただ一言、フリード様とおれの間には半獣しか産まれないって部分、その言葉が引っかかって頭から離れない…もし、もしもそれが本当の事なら…フリード様の妻として人間のおれは本当に相応しいのだろうか？