離縁しようぜ旦那様

たなぱ

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冷遇妻編

さらば冷遇妻生活

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今日は色々な事が起こりすぎててどう理解していいかわからない、お昼寝してたら筋肉に囲まれ、メニラ姫婚約破棄現場の真実を皇帝が知ってくれて筋肉集団に謝罪されるという未知の体験をして…


謝罪として願いを叶えてくれるというから、遂に理由のわからない男の妻を卒業!旦那様と離縁してこの屋敷で使用人として雇ってもらって楽しく生活したい夢が叶うと…

笑顔で旦那様に禁句解除された離縁を求めたら
旦那様が気絶した…何故だ



おれをしっかりと抱き締めたまま気絶した旦那様はあれから3時間ほど経過したがまだ目覚めない…
もしかしておれから離縁してって言われるのプライドものすごく傷つけた?自分から言いたかった?

そう、不安になりながらも旦那様が目覚めるまで筋肉いっぱい応接室で皇帝やメニラ姫達と話をする貴重な経験をする事になったのだ



「番…ですか?」


「ああ、フリードの様な強者が気絶する事を考えるとお主はフリードの番なのだろう
くくっ…ハッハッハ!まさか番に笑顔で離縁を求められるなど、我はとんでもない現場を目撃してしまったな」


「お父様!笑っている場合じゃありません!殴りますよ!………本当にごめんなさい…お二人が番だったなんて…冷遇の強制はそれはもう苦痛だったでしょうに…」


「「「「「ぅ゙うううっ……ぅ゙うあぉ………」」」」」


チュウ太くんは知らぬ間に逃げ出し、お茶を運んできたウサ耳メイドは涙を流しながら、美味しい始めてティースプーンの付いた温かいお茶を淹れてくれて…ムキムキ重鎮達が涙を流し、メニラ姫は申し訳無さそうにして、皇帝は腹を抱えて笑っている…


おれが番…そうか番なんだ…だから…きっと…番だったから…………え、番?番って何?そんな爆笑しながら涙を流すような代物なの…?

番って何ですかと聞きたいが、ドラレイド帝国では常識っぽい状況に聞けずにいると、そんな気持ちに気付いたのかウサ耳メイドが教えてくれた…


獣人の国には番という、魂が互いに惹かれ合う存在が居るのだと
男女であったり同姓であったりと様々だが出会う事すら奇跡に近い、魂の形質が似通った存在
番に出会えることは幸福であり、祝福される事なのだと、しかし獣人からそれがわかっても人族からは中々わからない
だが番は共に過ごすだけで心が満たされる尊い関係らしい…


それが旦那様とおれが番…うん、全く実感というか、全然番なのかもわからない
けど、おれが離縁しようぜって言った時、旦那様が気絶した理由がこれでわかった



精神的ショックによる気絶だ…
ごめんよ旦那様…まさか離縁がそんな気絶するほどショックとは思わなくてね?
え、この冷遇生活初日に初夜でお前を愛することは無いって言ってたけど、それは?
うん、わからない…わからないが旦那様にとって離縁って言葉は人質生活での禁句以上に精神的ショックの禁句なのだろう


おれを抱き締めたまま気絶し、一向に離す様子がない旦那様の顔を見ると何故かなんとなく癒されるような気もする…
もしかしたら旦那様、おれが番で更には元々真の奥様居てどうしていいかわからない状況なのかもしれない
そう考えると冷遇生活は皇帝の指示だったとしても、でこの別邸から出るなって言う事と裏庭で畑作りは好きにさせてくれた事とか…なんとなく繫がる気がした


旦那様、おれ達が番だとしてもおれは元々の真の奥様と過ごす夫婦生活を邪魔するつもりはないですよ
…………むしろ番は愛や恋、夫婦とか恋人以外にも親友だったりそっち方面で一緒に居ることも出来るんじゃ無いだろうか?


それこそあれだ、離縁しておれを使用人兼親友として雇ってくれ、屋敷で仕事しつつ互いに交流して時々酒を飲み交わす飲み友…いや親友…うん、いい仲だと思う





…………………
…………
……





その後も、色々な話をした…第二王子と聖女に今度こそドラレイド式の報復をしたいだとか、おれの父様と交易をしたいとか…冷遇生活楽しんでいたおれに驚いたりとか…
そんな話をしながら楽しくお茶を飲みつつ過ごせて楽しかった


しかし楽しい時間は続かない
仕事を全面的に放棄しておれに謝罪に来ていた皇帝と重鎮の皆さんは、突如として現れたインテリ眼鏡のイケメンに連れて行かれてしまったのだ

まだ帰りたくないという皇帝を軽々と担ぎ上げて転移魔法で帰宅する眼鏡のイケメンさんは…とてもイケメンだった
ムキムキを細腕で担ぐのは凄すぎる…





満員筋肉応接室から筋肉と姫が消え、静かになった室内に残されたのは旦那様とおれ
ウサ耳メイドさんも仕事に戻り、チュウ太くんはずっと逃げ出したままだ、狼さんもまだ帰ってくる時間ではない…

動けないしどうしようかと思ったが、不意に抱き締められる力が強くなり、旦那様は目を覚ましたようだった



「旦那様、おはようございます?」


「……………おはよう、リデン……………っ……よかった……目が、目が覚めたらお前が居なくなっていると思うと怖かった…
…………っ、離縁等と言わないでくれ…頼む…冷遇生活を強要した事は謝る、初夜の日の事も…本当にすまなかった…

俺にはリデン、お前が必要なんだ…側にいて欲しい、頼む…お願いだ…」


まるで旦那様は体温を分け与えるみたいに、おれをしっかりと抱き込み…謝ってくれる
今、分かったが男に抱き締められる事が別に嫌じゃない…いや、番だという旦那様だから嫌じゃないのかもしれないとそう思う…

でも、男の妻は冷静になるとやばいって事、絶対旦那様も後悔すると思うんですよ…
でも急に言うとショックで気絶する、だったら段階を踏んで円満に離縁しましょうよ旦那様



「大丈夫です…どこにも行きません、おれは此処での生活以外と楽しくて好きなんですよ?
離縁の話は保留で…此処でまた生活させて下さい
とりあえずおれ、旦那様とまだ知り合いでも無いくらい交流が無いんです

だから友達から始めてみませんか?互いに知るところから始めましょうよ旦那様、いえ…フリード様?」



笑ってそう言うおれに、フリード様は呆気に取られたような顔をした後、優しく笑ってくれた
友達から始めれば真の妻が居るのに更におれまで妻なのはおかしいと、夫婦じゃなくてよくない?と分かってくれる筈

そのままの流れでおでこにキスされたのは置いておこう、………………フリード様?野郎にキスしても楽しくないですよ?










こうしておれの1ヶ月ちょいに及ぶ、冷遇妻生活は終わりを迎えたのだ








第一部  完
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