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冷遇妻編
迷子の鼠
しおりを挟む夜中目が覚めるとカタカタと何か物音がする事は無いだろうか
幽霊か、悪霊か、怨霊か…まさか生霊だったりしてと内心ドキドキしつつ音の発生源を探ってしまうなんて事はないだろうか…?
そう、例えば今のおれのように…身を守るいい感じの棒が無かったから、寝ぼけたまま近くにあった夜食の釘が打てるパンをバットのように持ち、音のする方へ移動するなんて事、人生で一度は経験したことがきっとあるはずだ…たぶん
本日、異世界農業楽しすぎ生活1週間記念で1人きりお野菜パーティーをしたおれは、お腹がいっぱいで早々に寝てしまっていたのだ
辺りが真っ暗で静まり返った明らかに夜中、おれしかいない屋敷で夜中に物音がしたらそりゃ目が覚めるだろう?カタカタと変わらず音がするのは明かりのついていない厨房か…
こんな夜中にうさ耳メイドが来るはずがない、旦那様も来るはずがない…他は名前すらわからないから来ないと思う、ロバネルさんはこんな夜中にお買い物しませかなんて来ないだろう…だとするとなんの音だ?誰が出してる音…?
ゆっくりと足音を殺しながら厨房に近づきバット(パン)を掲げる、物理攻撃が効く幽霊であってほしいと思いつつ、ちょっと肝試し気分でそっと覗き込む…
そこには……………
獣耳ショタが頬をパンパンに膨らませ、レタス菊を口から覗かせ床に倒れていた
…………………
……………
………
「いやぁ、申し訳ございません奥様…お騒がせしました!
迷子になりお腹が空き過ぎてあまりにも美味しそうだったお野菜に齧りついてしまったのです…
窒息しそうな所助けて頂きありがとうございます!あ、おいらは鼠族のチュウタグルとお申します」
「これはこれは…どうも…お…私はリデンです?」
新事実が判明した
この獣人の国では夜中にもの音がするのは幽霊ではなく鼠族が迷子になるからだと言うこと
他人の家で迷子…迷子?迷子ってなんだっけ?
見たことも無い可愛い系ショタが玄関に倒れてましたならギリわかるが、家の中で迷子?知らない鼠くんなのに?
……………いやいや、きっとこの国にはこの国の迷子と言うものがあるのかもしれない!ここはアデルバイト辺境伯領土邸の敷地内、その別邸だ!不法侵入者が悠長に屋敷に侵入し、レタス菊を食べたりしている訳がない、そんな冷遇の類も聞いたことがない
つまり、目の前のショタは本当に自宅内迷子なのだろう……………たぶん
他人の自宅内迷子ってなんだよと思うがそれがこの国の常識ならとりあえず書類上の妻は受け入れてみせようぞ
そんな気持ちで謎のショタを受け入れ、作りすぎて保管していたおれの育てたお野菜をフル活用した料理をお腹が空いたと泣く彼…チュウ…なんだっけ…ちゅ、ちゅ、チュウ太くんに振る舞う
目を輝かせてほっぺをハムスターのようにしながら美味しそうに食べる姿を見ているとこちらまで嬉しくなってしまう
例え質問してみた会話の70%が記憶喪失でと言われようが、獣耳ショタの笑顔は可愛い、何より久々の長時間に渡る人との会話楽しい
そして念願の、知らない人だけどお野菜美味しいって食べてくれる事が嬉しかった
行くところが無いのなら此処に居たらいいと伝えるとチュウ太くんは幼稚園児が笑うみたいにニッコニコになってはしゃいでた…おいおい可愛いなショタ
謎の物音事件から始まったショタとのルームシェア?ルーム屋敷生活は食べすぎて見た夢などではなく、目が覚めても実在した
「おはようございます奥様!」
「お、おはよう?チュウ太くん」
挨拶されていい天気ですねと言われて…夢じゃ無かったと叫ばなかったおれは偉い、てか奥様ってフリード様の書類上奥様ってこと?それは知ってるんだね迷子くん!?
一体このショタは何なんだろうと思うが、考えてもよくわからないし貴重品は魔法で異空間収納しているし、泥棒な幼稚園児は流石に無いだろうと深く考えることを辞めた
何故かこのショタはうさ耳メイドを呼ぶと即座に屋根裏へ姿をくらますが、おれの料理を美味しいと食べて一緒に畑仕事………お庭でお花を愛でてくれるのだから実質いい子だ、寂しかったおれにショタの癒しが降り注ぐみたいなそんな気持ちでなんとなく受け入れていた
「奥様は獣人きらいじゃないんですか?」
「奥様はこんな生活嫌じゃないんですか?」
「おいらチーズも食べたいな!」
そんな質問と要望を伝えてくるチュウ太くんになんとなく返答しつつチーズを食べるなら牛とか居ないと…と、考える
しかし獣人の国で牛って喋って二足歩行じゃないの?家畜っていうより従業員って感じだよね?と思うとなんか搾乳って言葉がエロい気がして大変だね!?
ミルクについてはうさ耳メイドさんが持ってきてくれたらねーと誤魔化したりもしたのだった
別にこの生活が嫌って訳じゃない、暇じゃなくなったし…獣人も嫌いじゃない、むしろモフりたい程に実は好きだし、実質生前も動物大好きな磯野司であるおれには実は天国だったりする
男なのに嫁とか謎の冷遇とか無ければ使用人として末永くここに居たい程度には好きだ
そんな事を度々質問してくるチュウ太くんに答えながら更に1週間ほどが過ぎていった
かわいいもふもふ弟美ショタのようなポジションで居座る可愛い彼が癒しだなと思った頃、事態は大きく動き出……………したのかもしれない
チュウ太くんを狙うでっかい狼までもが、他人の自宅で迷子になる展開が訪れたのだから………
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