13 / 69
冷遇妻編
冷遇妻の交渉
しおりを挟むずしりと腹にのしかかる重さ、そして超絶男前な犬耳付きの男が眼前に広がる…
先程あまりにも暇すぎて外眺めてバードという人間観察ウォッチング中に、旦那様の真の奥様を目撃して…なんかふと、初夜の準備で尻穴まで丹念に洗われて香油を突っ込まれると言うとんでもない羞恥と苦痛の記憶が蘇り、余りにもおれの尻が不憫で可哀想で泣いてただけなのに
なんでおれは旦那様にソファに押し倒されて、口を塞がれているのだろうか…?
いや、違うな…おれが何かを言おうとしたらこんな事になった様に思う
久々に、初夜以降始めて見た旦那様に大喜びして…離縁して使用人として人質にしてくださいとお願いしようと思っただけなんだけど…
「り」まで言ったらこの状況だ…え、もしかして離縁ってワードこの人質冷遇妻生活の禁句だったりする!?
空気の読める国で生前過ごしてきたおれにはわかる…この旦那様の行動と焦り…たぶん離縁とはおれの死を意味するのかも知れない…旦那様、そんな狼みたいな形相と動きでおれを助けてくれるのだから、ホントはいい人なのかもしれない?
そう言えば父がフリード辺境伯殿は常識があって良い方だと言っていた…なるほど、今回の婚約破棄事件に伴う制裁結婚生活の同じ被害者としておれを守ろうとしてくれてるのか…ありがたい事だ
おれの禁句を誤魔化すように、旦那様がこの暮らしどうだと聞いてくる…途中噛みそうなのは同じ被害者だからだろう…でも、素晴らしい冷遇してくる夫みたいなセリフの言い回しで心をえぐりに来る…できるなおれの旦那様
答えたいが口を塞がれて声が出せないんですよ旦那様!そう伝えたくて、口を覆う手に自分の手を重ねてみると旦那様が何かを堪えるような顔をした…
え、そんなにおれに触れられたくない!?すいません…真の奥様居るんだものそうですよね?!失礼しました!
しかし、この辺境伯家当主である旦那様と会える機会はホント奇跡だ…!このタイミングを逃したら…また暇人生活に戻ってしまう…!交渉を、ここは交渉をさせてください旦那様…!
おれが禁句を言わないとわかってくれたのか口から手を離してはくれた
だが、腹の上から退けてくれる事はなく、今度は手を握られソファに縫い付けられている…何故…?
え、おれそんなに逃げ出しそうな顔してる?あなたなんて嫌い!離縁よ!とか言って走り出す顔してる?
出会ったばかり過ぎて信用ないとこんなにも拘束されてしまうのか…勉強になるわほんと
しっかりと言葉を選びながら話さないと交渉なんて出来やしない…この暇をなんとかする為に…!!
冷遇されてても許可されそうな事、許されそうな事を探せおれ…!
「お会いしたかったです…旦那様……あの、此処での生活は…ひ、酷く寂しいです
ご飯も冷たくて、固くて…とにかく寂しい…お、私が此処に連れてこられた意味は理解しています…
でも寂しくて…それが堪えきれないのです
…旦那様、お願いします、せめて裏庭へ出ては駄目でしょうか…?花(とか色々)を育てて愛でたいのです…」
弱々しい可憐な妻が言いそうな言葉のチョイスで旦那様に交渉を試みる…!
裏庭などこの別邸には無い、あるのはほぼ森だ…つまり裏庭への許可が出ればほぼ森に出れる!ついでに花を育てたいの中には色々な意味が込められてるため暇な時間を利用して家庭菜園なんかしたい気持ちで溢れている…!
寂しいのも嘘じゃない、ほんと寂しいんだよ旦那様…なんかもうソファに縫い付けられてるこのよくわからない格好…これでさえも人肌っていうの?人の重み?感じれて嬉しくなるくらいなのだ
「そうか…寂しさを、少しは反省しているようで安心したよ…裏庭で花くらいなら許可してやろう、好きにするがいい
だが、祖国に帰れると思うなよ?お前は一生俺の物だ」
ニヤリとイケメンが笑って許可をくれる
泣いていた理由を聞かれて寂しかったからと言ったら、ついでに商人も呼んでくれると…!ありがとう旦那様!
優しいかよ…さすがあの可愛い男を嫁にしているイケメンだけはある…
しっかりと冷遇ポイント辺境伯家からは金を出さないというセリフも聞けて満足だ
明日、商人を手配してくれるらしい…早い!毎日暇すぎ生活からおさらばできると思うと嬉しくて涙が溢れてきた
ソファに押し倒され縫い付けられた腕では涙を拭うことが出来なくて、ソファが涙で濡れちゃうじゃんって思いつつ、暇じゃなくなる事が嬉しくて…嬉しかった
涙でぼやけた視界にいつの間にか旦那様の顔が近づいてきていた事が分からず、ペロリと目尻に何かが触れたので理解した
おれから溢れる涙を、何故か旦那様が舐めたのだ
何故…???狼の獣人って泣くと舐める習性でもあるの?
「だ、旦那様…?」
「……………っ、仕事に戻る、大人しくしていろ」
理由は話さず旦那様はおれから退いて、部屋から出ていく…旦那様が近づいてきた瞬間、甘い…いい匂いがした理由も分からなかった…
しかし、おれはそんな事を気にするより、暇生活の終わりに感動して心の中でよっしゃー!と叫ぶのに忙しかったのだ
3,560
お気に入りに追加
4,860
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
婚約者は運命の番(笑)を見つけたらしいので俺も運命の番を見つけます
i
BL
俺の婚約者であるオリオ・オフニス侯爵令息は、浮気をしていた。しかもその相手は平民のオメガだった。俺はオリオに問い詰めようとしたが、偶然にも平民のオメガとオリオが関係を持っている現場を目撃してしまった。
翌日、俺は婚約破棄の手紙を受け取った。
俺はどうしても彼を許すことが出来ず、彼に小さな復讐をしてやろうと決意する──。
国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる