離縁しようぜ旦那様

たなぱ

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冷遇妻編

動揺する周囲

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Side うさ耳メイドは見た




リデン様が泣いて室内に戻られるのを、私は見てしまった…



リデン様付きのメイドとして、なんとか冷遇の中でもバレない程度に、快適に過ごして頂きたい…
せめてベッドのリネンくらいは上質なものでも許されるだろうと、内緒でゴワゴワからスベスベのシーツに切り替え、いつもの様に交換に向かおうとした時…私の目に映ったのは、窓越しに外を眺め…涙を流しながら別宅の室内に逃げるように向かうリデン様…
そしてその視界の先、そこにはアデルバイト辺境伯家にいるとんでもないモノがいた………………



ま、まさか…!まさかリデン様が本宅の方を!?
あのとんでもないモノを見てしまわれたの!?
いや、普通に見ただけではあの存在は理解できない…しかしリデン様が読唇術でも使えたりしたら…?


その涙はもしかして………とんでもない大きな勘違いをされてしまっているかもしれない




動揺が隠しきれない、これは私が対応していい事では無い気がする…あのとんでもないモノをどう説明していいのか分からないのだから…
旦那様に伝えなければ…!そう思い私はリネン交換を諦め踵を返し、本宅へ急いで戻った
アレに会いたくない旦那様は基本地下室のお部屋にいらっしゃる、王宮へ行くにも隠れて裏口から出入りする当主様など聞いたことが無いが、それだけアレはとんでもないストレスを与えてくるモノなのだから…
入室の礼儀もなっていない事をお許しください旦那様…!けど、それどころでは無いのです!



「急な事で失礼します…!旦那様!大変です!リデン様がアレを…!とんでもないモノ見てしまわれました!っ………ラヴ様をみて泣いてしまわれております!
私はリデン様が涙を流しながら部屋に戻られるのを見てしまいました…!!!!」



私の切羽詰まった声と表情に旦那様の動きが止まる

地下に作られた大きな書斎、そこで執務をこなすフリード様はペンをおる勢いで驚かれていたのが分かり、事の重大さが直ぐに理解できたようでしたわ









…………………


Side フリード



メイド長であるメアリーが私の執務室に駆け込んでくるなど異例だった、しかしその内容が余りにもとんでもない事で…

私は万年筆をへし折り、裏口を使い別邸へ急ぐ
冷遇とか接触とか言ってる場合ではない!このままではリデンに待ってるのは………


まずい、まずい!!!リデンがあの存在を見たと言うのか!?いや、可能性はあった…しかしアレをただ見ただけでは普通の男…だ

なのに涙を…泣いていたと言うことは…心を傷つけられる何かがあったと言うこと…知ってしまったかも知れない事実に冷や汗が止まらなかった



狼の獣人である私は気配でリデンがどの部屋にいるかわかる、そして泣いている事も扉越しに理解する
耳に聞こえるのは確かにすすり泣く声、本当に泣いている…あのとんでもないモノを見て…
最悪の事態が脳裏を過ったが周囲にバレる前に私が対応すれば、まだ隠し通せるかもしれない…


部屋をノックすると我が番の可愛らしい泣き声でどうぞと返答がある…くそっ、こんな声ですら可愛くてどうする!私が暴走してもいいと思ってるのか…!


冷静を装い室内に入ると、ソファにもたれ掛かり泣いていたリデンが顔を上げる、そして私の顔を見てとても嬉しそうに余りにも可愛い笑みを浮かべてたのだ…!!どうしよう、とても可愛い
杞憂だったか…?そうであったならいい…しかし念の為一応事情を確認しておこうと室内に入り、ドアを閉めるとリデンは可愛い顔でこう言って…


「旦那様!お会いしたかったです…!ほんとずっと待ってました、おれと早くり「わぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーー!!!!!!」」


来ようとしたのを必死に止める
獣人の身体能力を舐めるな!言葉の先を言わせぬよう即座にソファに押し倒し、口を手で塞ぐ
何を、何を、何を言おうとしたんだリデン!?禁句を言おうとしてなかったか!?今…!?

そんな可愛すぎる表情で言うことでは無いことを言おうとしてなかったか…!?駄目だ、駄目だぞリデン!禁句だけは言ってはいけない…!四肢が身体と別れを告げてしまうんだよ!?
それに私達は番!これから時を見計らって互いに分かち合うのに何を言う!?いや、言わせない!私の下からリデンが物理的に居なくなってしまうなどあってはならないのだから


皇帝が脳筋が故の怒りに満ちた現状でその言葉は駄目だ、今回の任務に辺りリデンが禁句である『離縁』『獣』と言うワードに感知術式が反応する可能性がある
悪意や耐えきれぬという心に反応する尋問に使われるもの、それがこの別邸の至るところに設置され監視されている事実をリデンは知らない…いや、教えられない


ついでに私達にも冷遇をしっかりしているか行動を度々監視されてるが故、無駄にリデンに会いに行っては番に対する愛しさしか込み上げてしまい、私が暴走するから此処にも来れない…初夜以来なのだリデンに会うのが…!なのに何故禁句を言おうとする!?いや、冷遇されているのだから当然か…



……………いや待て、なんだこの心のざわめきは…

リデンはソファに押し倒されて、手で口を封じられ…俺が乗り上げる形になっている…いや待て…なんだこの構図…!?
余りにも可愛というかエロい…俺の俺が狼になってしまうほど可愛いっ…!くっ、なんて可愛らしさなんだ…


冷静な顔を維持し、本性を現さないように必死に脳みそを動かし、言葉を噤むのがやっとだった



「リデン、久しいな…お前と初夜などする暇もなく仕事が忙しくてな、お前の事をわ、わ、忘れそうになったよ………
別邸での暮らしはどうだ?先程泣いて居たのだからそれ相応なのだろう?」





心がものすごく痛い…しかし
しっかりと嫌な冷遇夫を演じられた私に偉いと褒めてやりたい



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