離縁しようぜ旦那様

たなぱ

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冷遇妻編

狼の気持ち

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Side フリード




我が国の皇帝より、俺に急な縁談が持ち込まれた…今こちらではそれどころでは無い状況だったのだが… 
 


そうなった要因は末の姫、メニラ姫が嫁ぐ先で断罪される事件が起きたと言うのだ…あの可憐な姫が断罪…?
その事件は子を、家族を、他者を愛する絆の深い者が多い獣人の国、ドラレイド帝国を震撼させたと言ってもいい


同盟を結ぶ相手に対する行いでは無いことを平然と行うレラージェ国、更には姫を獣と罵った…それは獣人の国を蔑ろにし侮辱していると同義、許されない事だ


国の顔でもある王族がその様な輩の集まりでは未来は無い
レラージェ国と開戦だと皇帝は叫び、国防総司令官である俺にも勿論招集された、しかしそれを止めたのは冤罪で断罪などされ傷付いた筈のメニラ姫…
皇帝も重鎮も俺も、その必死さに違和感を覚えるしか無かった


悪いのは一部であって全てでは無いと、あの国が全て腐っている訳ではないと皇帝に伝えるメニラ姫の目は本気だったのだ
確かに…俺も国を守る中でレラージェ国の国防大臣であるハミルトン公爵殿と何度かお会いしたことはある…家族思いの素晴らしい人物、メニラ姫を断罪する者と同一視して欲しくないのもまた事実なのは認める


しかし、このまま賠償金程度で済ませてしまえば獣の呼ばれた事を受け入れた事に繋がり兼ねない
我が国を侮辱したレラージェ国をただ許してしまうのは避けねばならなかった
そこで持ち上がったのが、我が国へレラージェ国から人質として嫁入りさせ本当に断罪など起こした人物と他の者が違うのか見極めよう…というものだった


皆、頭に血が上っていたのだろう
嫁いでくる相手への状況説明も最低限、メニラ姫が受けた仕打ちと同様に冷遇されても我々獣人を罵り、獣の蔑む事が無いのかを検証するのだと外務大臣が叫んでいた気がする


誰を誰に嫁がせるか、その話になった時
戦場で戦果を上げ続けている事から勝手に鮮血の人狼閣下など呼ばれている俺が選ばれたのは言うまでも無い

獣人であり化け物と呼ばれる俺に嫁ぎ、冷遇されれば直ぐにでも尻尾を出すだろうと高笑いする内務大臣は化け狸の血族だ…狼の血族である俺に全てを投げようという算段も見てくる



色々問題を抱えているのにも関わらず、その方向で皇帝が乗り気になってしまった為、拒否など出来る筈は無く…俺は嫁を迎え入れる事になったのだ





皇帝達より出された任務は3つ

婚姻を結ぶが白い結婚を貫く
辺境伯家全体で冷遇しどれだけ耐えれるかを見る
逃げ帰ったり獣人を罵るなどあれば即開戦
嫁はバラバラにしてレラージェ国へ送り返せばいいと



メニラ姫を蔑ろにされ、相当腹にきてきたのが伺える余りにも酷い任務の内容だった
正直あまり乗り気ではない、おそらく何も知らされていない相手もそうだろうと思った
…互いに今回の件に巻き込まれてしまった哀れな存在、それはまさかの男だったのだ


ドラレイド帝国では同性婚も多いがレラージェ国では同性婚は無かった筈…直接会う前に名前を聞き、まさかのハミルトン公爵殿の次男である事にさらに驚く…
何故選ばれたのか気になって調べてみると、あのメニラ姫の断罪劇で唯一動いた存在だと言うのだ
そんな姫からの推薦があったらしい


おそらく皇帝の策略を知らないメニラ姫の中では助けてくれたお礼にドラレイド国で茶会でも開ける立場に来てもらおう…そんな魂胆があったのだろう…
しかし現実的に皇帝は人質として…いや開戦の狼煙として俺と生贄を婚姻させる気だ

どちらの思惑も当の本人へは伝える事が出来ない、獣人の威信を賭けたように見せかけて怒りに任せた任務にため息しか出ない



俺と婚姻を結ぶ白い結婚相手、可哀想な被害者にどんな顔をして会えばいいのか悩んだが、現実はそれどころでは無かった




「リデン.ハミルトンです、よろしくお願いしますフリード様」



そう、俺に挨拶をするリデン…茶髪に薄黄色の瞳…中肉中背のその男は…まさかとは思ったが、血がざわめき全身を駆け巡る存在…俺の番に違いなかった

言葉が出せなかった、人にはわからない獣特有の本能…愛おしさ溢れ挙式などせずに、早く巣に持ち帰りひたすらに愛したくてしょうがない気持ちに駆られてしまう



だが、これは任務…皇帝から与えられた任務なのだ…愛してはいけない、伝えてはいけない…俺が本能のまま襲った時点でこの男…リデンは獣を罵るだろう、国に帰ると暴れるかも知れない…


俺の番が目の前で肉塊にされる事などあってはならない!!!!



何事もない時であれば祝福もされた、しかしタイミングが悪過ぎる…皇帝もこの国の重鎮すべてがレラージェ国に疑心を持っている
リデンが例え俺の番だとしても、良からぬ薬でも使ってここに来たと解釈してもおかしくない


任務を遂行し、リデンでこの国に留まってもらう…ほとぼりが冷めた日には改めて俺の番である事を公表するしか道が無かった…
それに俺の家にはとんでもないものが住み着いているんだ…とりあえず別邸にリデンを隠し任務を遂行する事が重要、間違っても愛おしさから襲わぬよう距離を保たねば…


そう思ったのに、挙式でのリデンとの口づけに理性が飛びそうになり、披露宴でのリデンの可愛さに雄叫びを上げそうになった

極めつけは初夜、本当はお前を抱くことなどないと、嫌でも言わなければいけなかった…だが、乳首やペニスまで薄っすら見えるほど薄い布地の寝巻きに身を包んだリデンが可愛過ぎて違うことを口走った気がする



くそ、何故俺はリデンを可愛がってはいけないのだ?こんなにもリデンが欲しい!愛おしいのに…!!
目先の目標は任務を遂行しつつ、この国から返さない事、事態の収束を願うことしかない…





絶対に死なせるわけには行かない、俺の番を




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