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冷遇妻編
始まる冷遇生活
しおりを挟む目が覚めると昼だった
初夜に旦那様と初めて一言、言葉を交わしただけ…
それだけで、その後何もせずに寝たおれ
朝まで寝ていたと思ったら昼…もう昼?
誰も起こしに来ない事が獣人の国では当然なのか?それすらもわからない…
嫁入り準備も何も、国からの褒美と言うなの命令で急遽嫁いだおれには、ドラレイド帝国での嫁のしきたりも過ごし方も授業とかで習うお隣の国情報くらいしか無いのだ
説明くらいちゃんとしてくれないと困るんですけど旦那様…?
此処に居ない相手に心のなかで語りかけながら、背伸びをすると心地よい疲れ…寝すぎた時のあれである
この国では朝食って食べない風習だっけ?と思いつつ、ベッドサイドにあるベルを鳴らす
昨日、あらぬ所まで洗ってくれたメイドが御用があればと言ってたのを思い出したからだ
チリリンと澄んだ音が部屋に響くと暫くして一人のメイドが室内に入ってきた
昨日は羞恥で死にそうで気付かなかったが、うさ耳にメイド服を着てきた…そうだドラレイド帝国は獣人の国だ…!
リアルにうさ耳メイドとか本当にいるのかと驚く…え、うさ耳メイド、めちゃめちゃ可愛いな!?
「お呼びでしょうかお客様」
能天気にうさ耳メイド可愛いと真顔で思ってたおれの耳に聞こえたのは違和感だった
今、なんと言った?このメイド…お客様…?
一応ドラレイド帝国の教会でフリード様と書類上確実に夫婦になり、盛大に式を挙げて誓いのキスとか無心でこなしたおれがお客様…?
一応フリード様の妻となったおれの呼ばれ方はお客様なのか…?
そんな疑問に胸が何故かざわつきつつも、とりあえず顔を洗いたい、あと食事もしたい…出来たら図書室とかあったら情報収集したい…
奥様ってこの国では何するのかも一応、知りたい…
色々聞きたいこともあったがおれを見つめるメイドの目つきはとても冷たかった
「顔を洗いたくてね、あと食事は出来るかな?」
チッ……………
なんか聞こえた
上から目線だと不味い気がしてフレンドリーに話しかけたのになんか聞こえた気がする
え、このメイド舌打ちした?したよね?幻聴だったりする!?男嫁いで来てそんなに嫌だったりしてる!?
「…………かしこまりました、少々お待ち下さいお客様」
冷たい目で、冷たい声でうさ耳メイドはおれに再びお客様と、そう言って部屋を出ていった
とてつもない違和感…胸がざわつく異様な気配…
これって…まさか…
ざまぁ見学の次は嫁いで冷遇体験…?だったりするのか…?
「顔洗うのに氷水ってどう考えても嫌がらせだよな…」
洗面器に水を入れカートを押してきたメイドは、ベッドサイドにそれを置くと手伝うことも無く直に退室する…おれの予想は悲しくも当たってしまったのである、これはたぶん確実に嫌がらせだと思う
カラカラとわざわざ入れたであろう大粒の氷が水面を埋め尽くす洗面器…少し触れてみると夏場でも凍えるほど冷たい…今、梅雨の時期くらいだから更に冷たい…
旦那様の指示…では無いと思いたい
フリード様はまだあんまり直視した事は無いけど高身長で鮮血の人狼閣下とか呼ばれるほど、恐ろしい見た目では無かった…薄青を含んだ銀髪に青と緑のオッドアイ…どっちかって言うとイケメン優男みたいな方向の人だ
男の妻なんて嫌だとか駄々をこねておれに氷水を届けるよう指示を出す見た目もしていなければ、そんな事してるほど暇でも無いはず…
と、なるとメイドか…?
旦那様にあんな平凡な男が嫁いできて!何様のつもりよ!きっと無理矢理来たんだわ!さっさと追い返さないと!
みたいな方の冷遇かもしれない
おれじゃ無かったらきっと泣いてたぜ?………たぶん
ざまぁも冷遇も異世界転生しているおれは、前世で姉貴が読んでいた小説で履修済みだ、ついでに男同士での方法さえも履修済みとかいらない事を思い出してしまった
とりあえず、この屋敷…あのメイドはおれが嫌いなのだろう事は察した、別に傷付かないけどね?
嫌われ冷遇体験も人生経験としてありかもしれない、そこから図太く生き残るキャラもこれまで読んできたから…おれもそれになればいい!
前向きに行こうと、手のひらに火炎魔法をほんの少量まとい、氷水の洗面器を微温湯になるまで加熱する
あってよかった魔法!素晴らしい異世界転生!
レラージェ国の国防大臣な父を持つおれは野営もしっかりとこなせるのである、肉やお湯を調達するくらいなんてことない
平凡な威力で全属性の魔法が使えるのも異世界転生特典だとこれまで色々勉強してきた甲斐がある
いい感じの適温になった洗面器で顔を洗うと、続いての冷遇攻撃、見た目は豪華なのに触り心地最悪の超ゴワゴワのタオルがおれを待ち構えていて笑った
うさ耳メイド…やるな?二段構えとか笑うしかないし、どうやって洗濯したらこんなにゴワゴワになるんだよタオルって
余りにもゴワゴワ過ぎて逆にすごいタオルを持ちなおし、野営でもよくやったなーと思い出しつつ、水魔法と風魔法、柔軟剤代わりに光魔法を駆使していい感じに洗いたてふわふわタオルへゴワゴワを進化させ顔を拭く
うん、生まれ変わった素晴らしいふわふわタオルでお肌も喜んでいる
鏡が姿見しか無いのが面倒だが、すっきりした
着替えも超ゴワゴワをカートの下に準備されてて再度笑いつつ、こちらもシルクみたいな着心地へと進化させ、忘れてたスケスケネグリジェ姿からきちんとした私服にやっと戻る事ができ少し感動した
男にこんなスケスケ着せちゃ駄目だって…特におれみたいな可もなく不可もなくみたいなやつに…
ネグリジェで思い出したが…昨日、おれのあられもない場所準備したメイドさん達の心境を思うと胸が痛い…
愛するつもりないならもっと早く言ってくれない?フリード様!おれもメイドさん達も非常に嫌な体験になってるんだよ!
そんなツッコミを心のなかでしつつ、食事はまだかなとベッドに腰掛け待つことにした
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