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闇の加護
しおりを挟むソラト…いやヒロイン♂が作った異物入りの菓子をみてあそこまで私は狂ったように豹変するなんて自分自身が一番驚きだ
先日、リナルド様とレヴィル様が持ち帰った学園祭で回収した大量の菓子、その菓子をみた瞬間ごく僅かな歓喜の気持ちが湧いてきて怖かった事を覚えている
そして一つ開封され、時間が経っているのにも関わらずあまりにも綺麗なままの状態だった菓子…そこから漂う甘いクリームの香りとソラトの気配…
ただひたすらにその菓子を喰らい、自分を満たして幸せな感情に浸りたくてどうしようも無かった
まるでソラトと言葉に出したくもない行為に勤しんでいた時に感じた様な感情、どうしようもない渇望感に豹変した気がする
なんとなく意識はあるのに身体が動かないような気持ち悪さ…を感じていた、レヴィル様が口移して魔力を飲ませてくれるのに身体の中から抵抗されているような気持ち悪さだ
けど、舌を吸われ、口内を愛撫され続けると次第にその気持ち悪さは消えていって…私は気絶していた…
確実な神のようなナニかによる魅了と精神汚染を強く受けたモノの成れの果て…そうとしか思えなくて怖かった
レヴィル様がそんな異質な存在であるヒロイン♂接触しにいくと聞いて本当は止めたかった、しかし今後の対策を練るうえでも必要な事だと説得されて…
自分がおかしくなったら私にキスで目覚めさせてほしいなんて笑ってくれる…私の中にもレヴィル様は番なのだと言う意識が芽生えている現在、その言葉は何よりも嬉しかった
レヴィル様もリナルド様、エア様それぞれが現場各々異物について調査している
私に出来ることは既に精神汚染されている教会関係者が現在どうしているかの調査…
現在、私経由でなければ教会内部に入り込むことは出来ないのだから、異物を一度摂取しその後摂取したかった者の変化を見れる状態
大司教様にもこれまでの話をしようと思い、学園に教会本部への帰還を伝え、ここにいる
「ラドラ様…!お戻りでしたか!?よかった…!
こちらからご連絡を入れようと思っていたのです、大司教様がお呼びです、こちらへ!」
「………………わかりました、急な何かがありましたか?」
「詳しくは大司教様より聞いてくださいませ、っ………端的に言いますと、以前ラドラ様と一緒に来られた学生…神子様からの差し入れを食べたものが正気に戻ったのです…ですが…」
そこまで伝えると、急ぎ移動する私たちの耳に獣のような叫び声が響いた
まるで菓子を求めてレヴィル様の前で豹変した時の私の様な…気味の悪い声が
…………………
……………
………
気味の悪い声を聞きつつ、長い廊下を抜け、大司教様の部屋へたどり着くといつもの様に恐らく精霊と思わしき存在が扉を開けてくれる
今日、私がここに来ることをまるでわかっていたように大司教様は椅子に腰掛け微笑みながら、私を待っていてくれたようだ…
「失礼します大司教様、ただいま戻りました」
「おかえり、ラドラ
そろそろ来る頃だと思っていたよ、さて…呼ばれた理由とここに来た理由はおそらく一緒だね?
」
私が聞きたいことを全てわかっているかのような大司教様は紅茶を淹れ、私を席へ促す
まずは落ち着くように言われ、前回と同じ様に大司教様はヒロイン♂の作った菓子を出してきた
前回これを見てからだいぶ時間が経っている…手作りにも関わらず、全くカビの一つも生えず、そのままの状態でそこに存在する菓子…
しかし、今ならこの菓子の匂いを嗅いでも先日のように豹変し暴走はしないと、なぜか自身を持って言える…身体に満ちているのはレヴィル様から受け取った深く優しい闇…それが私を守ってくれているような気さえするのだ
「さて…落ち着いた所で本題に入ろう
ラドラ、お前も気付いただろうがこの菓子を食べた者のは以前、お前と接触してから正気に戻りつつあった
しかし、まるで中毒症状のようにこの菓子を求めて暴れるのだ…ここに来るまでに声を聞いただろう?
体内に深く何かが侵食しているのかわからないが…あの存在を連れていたラドラ、お前なら何かわかるだろうと連絡を考えていたんだよ」
教会の関係者があのような狂った状況になっても尚、大司教様は全く動じる素振りを見せず、適切に対応している
今の状況をヒロイン♂教えてはならない、王太子殿下に情報が流れるであろう王家にも内密に、防壁の魔術を展開して教会本部内に菓子を食べた者を閉じ込めていた
一度、王家対しておかしな事を言った連中だ
正気に戻りつつある状況を含めても内密の方が都合がいい…
「大司教様…私も同じ様な狂った状況に陥りました…しかしレヴィル様…聖獣の守り人の子である方の魔力を受け入れ…その後、正気を取り戻した可能性があります」
口移しで魔力を受け入れたとは恥ずかしく言えなかったが大司教様は少し考える素振りを見せる
「以前、ラドラがここに来た時に良い出会いをしたねと言ったのを覚えてるかい?
あの時、ラドラの周囲には優しい闇を感じた…それこそ儂の近くにいる精霊が喜ぶような気配だ
お前が来てから狂った思考の者が徐々に変化していった事を考えるに、この妙な菓子を食べた者は正気と狂気の間で戦っているのだと…そう思えるのだ」
そう言われて何処か納得した気がした…
私はソラトと狂ったように過ごしていた時、何故違和感を覚えたんだ…?
リナルド様とエア様に出会ったから…そして…彼らの周囲に優しい気配を感じて…その日から出会う度に何かが変わった…
私にも出来ることがあると、大司教にレヴィル様のいた部屋に向かうことを伝え地下に降りる
レヴィル様の変わりにこの地に魔力を、注ぐようにと置いていったリナルド様から受け取った闇の魔石がある場所…
あの魔石には大蜘蛛様の魔力と何故かリナルド様、エア様の魔力が入り混じり深い闇のような闇の魔力に変化していた、私がリナルド様達に出会ったことで何かが変わったのなら
これを代用出来るのではないのか…?
優しい鈍い光を放つ闇の魔石を手に取り、大地に流す魔力の一部を教会本部に向けて流す
これが正しい判断だと私には思えて仕方なかった
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