悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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ラドラ様の秘密②

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涙を見せるとは想像していなかったおれは、かける言葉も見つからず、涙を流すラドラ様をただ見つめることしかできなかった

悪役令息としての役割をこなそうともしないおれが何故ラドラ様から助けてと言われるのか、救うことができる…?無理な話だ

暫くの間、ラドラ様を泣き声だけが室内に響く…おれが居ないと話を話が出来ないと言われたエアも動揺し何も言えずにいる…



「っ…………すいません、リナルド様……エア様……急に取り乱してしまい……………」 

「……………ラドラ様…一体何があったのですか…?話して頂かないとわからない事が多く判断ができません…
ヒロインお…………異世界の神子様や女神ガレリナについて何か知っているのですか…?」


おれの問いかけに、ふるりと身体を震わせ、ラドラ様は真っ直ぐにおれを見据える
泣き腫らした目が痛々しい、男前が台無しだ…


「何から話せばいいのでしょうか………まず、私は…異世界の神子様ソラトに対して愛おしさや愛情は持ち合わせていません…むしろ嫌悪感があります

ですが、ソラトに話しかけられると…視界が歪み…自分でも思っていないことを口走るのです…まるで身体を乗っ取られたように…

これまで何度もリナルド様に…公爵子息に対して礼儀のなっていない酷い言動、誹謗中傷の数々を……でもそれは私の意思では無いのです…信じてもらえないかもしれない…でも…本当なのです……」


顔を青褪めさせそう告げるラドラ様が嘘を言ってるようには見えなかった…
ヒロイン♂と会話をすると身体を乗っ取られる…?おれへの言動はエアの知っているゲームでのシナリオで発せられるセリフだ…そしておれの既視感の世界でもある…
違和感がある…おれと同じような…違和感…
乗っ取らる…それは、ゲームのセリフを言わされている事なのか…?
灰色の既視感の世界がセリフも込みでおれを動かしていたら…ラドラ様と同じ状況と言えるんじゃ無いだろうか


「ラドラ様、直に信じる…そういう訳にはいかないことをご理解下さい…状況の確認のため、いくつか質問します…答えてくれますね…?」


弱々しく頷くラドラ様の顔色は悪い
だが答えてもらわなければ何も先には進まないんだ…おれは1つずつ気になったことを問いかける、時々エアも案をくれるが、ラドラ様は素直に全てを答えてくれるようだった

ヒロイン♂であるソラトとの逢引、肉体関係については話しかけられている間は身体の自由が一切効かず、性行為まで行ってしまっていること、行為が終わりヒロイン♂が眠るか気絶すると解放され、逃げるように自室に戻り全身を清め、吐いていたらしい

なぜ、そのようなヒロイン♂に肉体を奪われるとわかったかについては、おれとエアが知り合い、過ごすようになってから…自分の発言の違和感に気付き、一度気付くと全てがおかしいと怯えて暮らすようになったと

合同合宿では他に王太子殿下達がいるおかげで自分に話しかけてくる回数が減り、タイミングを見計らって自室に逃げたと話す…
ヒロイン♂は突然現れる、まるで行先を知っているかのように…それはおれも感じた事だ、質問に対する返答は事実としか思えなかった


「ありがとうございます…最後にもう一つ質問します………女神ガレリナとは………いったいなんの女神ですか…?」

「……………女神ガレリナ…神子様がいうその女神は……私の知識上この国には、存在しない女神です。
ですが、闇の聖獣様と同等レベルに存在もしている…書物も文献も、宗派すらないのに…今、この国に存在しないはずなのに…存在している…

訳がわからない事象、それが女神ガレリナ…です
私からはこれしか言いようがありません…」


存在しない筈が存在している女神ガレリナ…
その存在しない筈の女神の寵愛を受ける神子様、ソラト…それが意味する事は一体………
理解できない事が多いが…1つだけ明確に分かったことはある、この世界はガレリナの箱庭じゃない、闇の神獣様を崇めるカレリナ国という事…


「ラドラ様…ありがとうございます…
あなたは私に助けを求めました、それはつまり私達の敵ではないということ…そう捉えても大丈夫ですか?」

「勿論です…!私は、私は………リナルド様暴言だけでなく、ソラトを好きでも何でもないのに…あんなっ………ううっっ闇の聖獣様を後世に伝える大司教となる身であんなことを…………
この学院で、ソラトを前にしても態度を変えないのはリナルド様達だけなんです…だから、私は………」


再び涙を溢れさせるラドラ様とは見た目とは裏腹に幼く見えた
異世界の神子様、ソラトに対しての反応でおれ達に救いを求めてきた…それは間違いじゃない
あの学院は全てがおかしいんだ…それに気付ける存在が増えることはいいのかもしれない
望んで肉体関係を得ていた訳じゃないラドラ様は可哀想と言っていいだろう…気の毒に…

この世界は闇の聖獣様を崇める世界、存在しないはずの女神ガレリナという異物は何処から来たのか…それはわからない

…………………合同合宿でおれに、ありがとうと言った蜘蛛の化け物が脳裏を何故か過った
ソラト達を排除しようとしていたように見えたあの化け物…おれに対しては無反応だった大蜘蛛…







何故、ヒロイン♂を排除する…?
それは、あの蜘蛛の化け物がゲームのキャラクターではないからでは無いのか…?


わからない事が多い、けど…少しずつ真実に近づいている気配はある
ラドラ様、彼をどう扱うか…まずはそれを決めようと、おれは涙を流すラドラ様に今度はハンカチを手渡し、肩をさすってあげた






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