悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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ラドラ様の秘密①

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効率よくヒロイン♂を自室に攻略対象者な王太子殿下達と共に実質の軟禁に成功したおれは、教員に呼び出しされるも証拠をしっかりと提示し、むしろ被害者はこちらなのでは?しかし神子様がそんな事を………と悩みに悩まれ実質無罪で解放され、教室に戻りエアからの続報を待っていた

先程までのシナリオが嘘の様に静かに教室で授業を受ける、やはり一人でいる時間は慣れない…慣れていたはずの世界が寂しい…
昨晩エアをたっぷりと補充した筈がもう恋しくなっている…今夜もまた吸ったら流石に変態と思われてしまうだろうか…
そんな事を考えていたら少しだけ気持ちが楽になる
エアの事になるとおれは暴走しがちなってしまう…それを全て受け入れてくれるエアは本当に優しいんだろう

早くエアに会いたい、そう考えているとエアから通信魔法が飛んできた
指定する場所に急いで来てほしい準備ができたと、準備…?準備ってなんだ?
よくわからないが呼ばれたら行くしかない、エアに会いたい気持ちが抑えられないのだから






指定された場所はエアが探りを入れていた教会だった
教員に留学生のサポートを依頼されたと素直に伝え、授業を早抜けして教会に向かう
そこで待っていたのはエアと、まさかのラドラ様本人だった………



「リナルド様………この度は本当に申し訳ない…貴族として相応しくない対応を何度もあなたにしてしまった………」


呼ばれた先は教会にある個室、神官が寝泊まりするようなシンプルな部屋だった
落ち込んだラドラ様とエアがまさか居るなど想像もせず、突然謝りだしたことに驚きを隠せない…なぜ急にそんな顔で謝罪をしてくるんだ……?


「リナルド様、僕が調べていた事とラドラ様について説明してもいいですか…?この状況を見てある程度は察するかと思います…ラドラ様からも伝えたい事があるみたいなんです…」


おれは頷く事しかできなかった
ヒロイン♂を愛するこのゲームの攻略対象、おれを異端審問するらしい存在のラドラ様がなぜ落ち込みながら謝ってくるのか…これまでの違和感を感じた出来事に近しい何かを感じた

エアは教えてくれる、おれがヒロイン♂を引き付けている間にラドラ様への情報収集と接触を図っていた時の事を


「今思うと、初めからラドラ様の動きはおかしかったんです…ガレリナの箱庭の世界ではヒロイン♂に対して攻略対象者は異常な愛ゆえに、常に側に居たがる…ハーレムルートならそれは顕著に現れます

でもあの討伐作戦イベントの…合同合宿の日、リナルド様とヒロイン♂の所にたどり着いたあの時、ラドラ様だけがいなかった
会場に戻ってからもラドラ様だけヒロイン♂が怯えて意味もなく泣くあの集合場所にいなかったんです

それに気付いて僕はラドラ様の行動をここ数日追いかけました…ほんとモブで良かったと思います
周囲から誰も気付かれないでかなり側で観察したりてました…


そこで知ったんです」


エアは一息付き、おれの目を見て、少しだけ喜んだような顔をした…


「リナルド様の引きつけによって、ヒロイン♂と接触しない環境を強制されたラドラ様は日に日に迷いのある行動をしていました
教会と学院を行き来する、それは変わらない…でも事あるごとに、リナルド様を傷付けたこと、暴言を吐いたことを後悔し、それを日記にすらも残していた……

そして、僕が夜まで帰れなかった日、ヒロイン♂…………ガレリナの神子様である彼に対して、何故好きだったのかわからないと影に隠れて泣いていたんです、どう見ても敵ではないと思えるほど、つらい表情で…」


エアの言葉に息を呑む
おれを傷付けた事を後悔する?日記に書くとは……?
それに、何故あそこまで愛していると接触しおそらく既に肉体関係もあるヒロイン♂を今更好きではないなんて泣くんだ…?
理解できないことが多く動揺しているのがエアにも、ラドラ様にも伝わるだろう

ラドラ様はエアが話している間、辛そうな表情を続ける…今にも涙を溢しそうな…そんな顔だ


「そんなラドラ様を見てしまい、どう考えてもおかしい状況に、僕はラドラ様への直接的な接触を持ちかけました…それが今日です

ラドラ様に僕は聞きました…闇の聖獣様の書物はこの教会で見れますか、女神ガレリナとは誰ですかと…………

その瞬間、ラドラ様は酷く動揺し気絶してしまいました…目が覚めた時にはリナルド様への謝罪を繰り返し…リナルド様が来ないと説明はできないと話され今に至るんです…
だから至急来てくださいと呼びました…そこまでが僕の知っているラドラ様の全てです

ラドラ様…これでいいですか…?今度こそ、全てを話してくれますか…?」


おれの視線とエアの声に少しだけ青褪め、涙を浮かべるラドラ様は頷き、ゆっくりと口を開く

あまりにも震えた声で上手く言葉を発する事が出来ない状況…何を知っていたらそんな状況になるのか分からない…今は話してくれるのを待つしかない…








「全て…お話します…ですが、私も………私にもわからないのです…………助けて下さい
………私は、どうしたらいいのですか…」







悲痛な顔で涙を流すラドラ様の顔からは嘘や偽りを感じない…何故、悪役令息というポジションのおれに助けを求めるのだろう…










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