悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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合同合宿①

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「只今より、合同合宿を始める
各自必ず安全確保の為、この生体バンクルを必ず着用し参加するように!
二泊三日、各々が授業での成果活かし有意義に過ごす事を願う、注意点だが、毎年のように生命の危機に瀕した場合強制的に教員の元へ転送.保護となりその時点で失格だ!安全第一で対応しろ、さらに他者への妨害も減点項目となる、詳細は生命バンクルでの各個人を評価していく、以上!解散!」




教員の号令で合同合宿が始まった
毎年必ず一回、各学年事に規模は違うが行われる恒例行事、徐々に薄れゆく闇の聖獣様の加護無しでも人が生きていけるよう、自衛意識と知識.技能を高めるのが目的の野営合宿
エアの知る、ガレリナの箱庭ではこの合同合宿はヒロイン♂と攻略対象者が野営でいい感じに好感度を上げ、限定の衣装を楽しみながら、課金アイテムと言うものを無料で貰えた素適なイベントらしい?

おれ達サイドの目的はその課金アイテム、魔晶石…おれへ害のあるイベントを起こさせない為にも、毒を使う魔獣を何とかして手に入れる

この合宿では一人ひとりに生体バンクルが付けられる…取り外すことはできない
生徒の動きを収集し危機に転送魔法が起動する高位魔道具により命の安全は確実な物だからこそ貴族が通う学院でありながら保護者は同意する
これまで大型の魔獣は出るには出たが…エアの言う危険の高い何かは出ていない…ヒロイン♂がいる今回だからこそ何かが起るのか…想像ができない
悪役令息という役割らしいおれも、今回のイベントではオープニングにちょっと顔を出すだけみたいだ



今、見ている既視感がそうだろう…



「リナルド様、ぼくは…ぼくは負けません!
ロベール様の自由を奪い続け、卑劣な行為を繰り返すあなたになんて…負けない!」

「ソラト……!そこまで私の事を思ってくれているのか…?ああ……嬉しいよ!…………見たか!リナルド!貴様の足りない部分を補っても余りあるこの素晴らしいソラトを何故蔑む!何故見習わない!!!」

「公爵子息って偉そうにし過ぎなんですよ、身分の垣根を越えて交流を深める為の学院で、女王様みたいに気取ってる最低な奴…」

「殿下、この様な低俗な奴に何を言っても無駄です!他の男に媚を売っているという話もある!汚らわしい!ソラトに近づくな!リナルド.アークランド!!!」


上から神子様、殿下、天才魔道士、近衛騎士団長の息子…
開始の挨拶終了直後、クラス合同な事もありかなりの大人数の生徒がいる森の中で、一番端でエアと互いのバンクルを確認し合っていたらわざわざこんな端まで来て既視感を見せてくれるヒロイン♂達
これがオープニングにちょっとでるというおれか…
エア曰く高飛車な態度で殿下の心を射止めているのは自分だと言って居なくなるのが流れらしい…
しかし、おれはいつものように一歩も動かず、一言も話していない

今回はおれではない場所に文句を言うことはなかったな…と睨みを利かせる前方の4人を見ていた
ヒロイン♂がしびれを切らしたのか立ち去ると後を犬のように追う殿下達がいた…これがこの国の未来のトップになる可能性が怖い

各々ヒロイン♂と関係があるのによく一緒に仲良く居られるなと感心してしまう
とりあえずこれでこの合宿でのおれの既視感は終わりのはず、後はエアと楽しく成果を活かし野営をしようと、気持ちを気持ちを切り替えたのだ






「エア、とりあえず森の最深部に行こうと思う
浅い所は他の生徒が多いから身動きが取りにくい
それでいいか?」

「大丈夫です、でもいきなり最深部って危険じゃないですか…?実は僕、次期辺境伯ではあるけど戦闘面は弟達にボロ負けなんです…司令塔向きっていうか…魔獣が多く出たら足手まといになりそうです…」


奥へ歩きつつ、少し落ち込みながら話すエアも可愛く、このまま寮に連れて帰って足手まといじゃないよって慰めたくなる気持ちをなんとか抑え込み、闇属性の魔法を見せる
この地を加護してくださっていた、聖獣様を生涯守り通した守り人も闇属性、貴重なこの闇は使い方次第でいくらでも自らの武器になる


「エアはおれと相性のいい最高のパートナーだろ?足手まといなんてなるわけがない
とりあえずこれ、出来そうか?出来たら合宿中楽になるから覚えて置いて損はないよ」


闇属性の魔力を細く練り地面に突き刺す、影と影を繋げる様に糸を張るイメージだ
その細い糸にそのへんに居た虫を引っ掛けると闇属性の網に囚われた様に捕獲される、これが魔獣だったら…?

触れた物の魔力に反応して術者にその反応が返る、人と魔獣の魔力は全く違う物だから魔獣が触れた時だけ捕縛すればいい
自分の影を起点に蜘蛛の巣の様に移動しながら細く網を張っていく…何が生息しているか調査も、他の生徒の動向も判るし例の毒魔獣も早く発見できるかもしれない

それがコレだ、おれは感知糸って呼んでるが正式名称があるかもわからない、授業で習った感知魔法の応用であるこの魔法をエアに進めた


「えっ!?すごい…!虫取り網みたい!いや、コレ、こんなの僕できます??僕魔力量はそこそこいい感じだけど本当に戦闘面使ったこと無くて……出来るかな………すいません…」


エアは自己肯定感が薄いのかもしれない…毒耐性すら受け入れられたのはエアのおれに対する信頼は勿論、努力と魔力に込められた情報を取り込むセンスがあってこそだ
もしかして…おれ経由なら、すんなりエアは受け入れるんだろうか…?


「使ったこと無いならしょうが無い、でも、エアなら使えると思う、感知糸魔法覚えてみるか?」



エアの唇に指を這わせ撫でる、意味を察したのか赤くなる表情が可愛い
目を閉じおれから魔力を受け取ろうとエアは自ら唇を合わせてきた








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