黒い獣は巻き込まれ平凡を持ち帰る

たなぱ

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平凡と獣が平穏な新生活を望む話

平凡はどこにもいない

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読みが甘かった



ただその一言に尽きる
ミーシア王女を嵌める計画…
『おれ、囮作戦』は途中まで大成功していた…

グレスを洗脳している、害ある存在と言われたおれはもうグレスの側にいれないと、誰にも行き先など言わずに辺境伯邸を飛び出した
それに気づいたのは明朝、グレスや辺境伯家の皆はは青白い顔(メイク)で、おれを探す、しかし見つかる気配すらない、街の人はやはり害だったのかあの男はとミーシア王女を信じる者が増えるが、グレスの取り乱す姿に動揺も同時に覚えていた

グレスの動揺とミーシア王女に助けを求めたいという情報からミーシア王女はまんまと釣れた
彼女は商業ギルド長の屋敷に匿われていた


ミーシア王女を見たグレスは必死に頼む
「ミーシア王女は何か情報を持っていないか、助けてくれ、もうあなたしか頼れないんだ」


そう、王女に縋り付いて…
グレスは続ける
「ユウマは何かを隠している、このまま行方不明ではそれがわからなくなる、どうか王女の力を借りたい、今の私では洗脳されていると思われ誰も力になってくれない…ミーシア王女しかいないんだ…」



男前が王女に縋るなんてそんな…そんな…
王女がコロッと騙されても無理はない



「グレス様、顔をあげて?私は強力いたしますわ、あの奴隷の真実を一緒に暴きましょう?このまま逃がしてはなりません」
大方予想通りの返答を返したそうだ



そして、おれを見つけるフリをしておれを捕らえ排除とグレスからの愛を勝ち取る…その大まかな流れは当たっていた
途中までの経緯をセイルくんが隠れているおれに伝達魔法(一方通行)で教えてくれた
ドブの香りに縋り付くグレスを思うと心が痛んだ…


おれはグレス達に町外れの廃屋に隠れると伝え、そこで待機している、隣国から来ている彼らには伝などすくない、この廃屋とてもいいステージだろう?
さぁ来いミーシア王女、ヘリックとかいう男と一緒におれの計画を成功させにこい!
そんな気持ちで待機していた…



しかし…



現実はそう甘くはなった
「おい、こいつ王女が言ってる性奴隷じゃねぇか?」
「ああ、?まじかよこんな所に隠れやがって」


まずい
おれを見つけたのは王女でもヘリックとかでもなく薄汚い格好をしたいかにもヤバそうな奴らだった…
秘密裏に処分を狙うんじゃねぇのかよ!?!
冷汗が止まらない…まずい…こんな展開望んでいない…廃屋の周りにいた見張りはどうしたんだよ…!!


「あっ…………っ」
ストンっ………驚きに腰が抜けてしまう
まずいまずい…なんでこんな時に…この男たちがどう行動するかわからない…
後ずさるおれを楽しそうに見つめて、徐々に近づいてくる…


「性奴隷って言うならアノ人に突き出す前に犯してもよくねぇか?最近相手に逃げられて溜まってんだよ」
「アノ人には捕獲しろしか云われてないからな…まぁ委員じゃないのか…?」


男の手がおれに伸び、胸ぐらを掴まれた
鳥肌が立つ…全身が拒絶反応を起こしてる…
性奴隷じゃない…おれはただの人家だ…気持ち悪い…さわるなっ…


ベロリ…………


口元を舐められた
「ひぃっ………っやだ………なにすんだよ……!?」

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い舐められたグレス以外に口舐められたっ…………気持ち悪い気持ち悪いいやだいやだいやだ…
視界が滲む、涙が出てくる、吐きそうなほど気持ち悪い…グレス以外に触られたくないのに…

「ははっ………いいなぁ?この性奴隷、普通の顔だが唆る泣き顔してるわ…大好きなご主人様にはもう会えないが、アノ人に処分される前に俺が天国見せてやるよ?なぁ…?優しいだろ?」


また男の顔が近づいてくる…涙が溢れる、気持ち悪さで…やめろ、やめろ、やめろよ…こっちにくるな…
男の舌が、おれの頬を舐めようとした瞬間、入口から声が聞こえた


「やめなさい、まだ早い、計画を台無しにする気か?
その奴隷は例の場所に行ってから好きなだけ犯せばいい、移動するぞ、姫を待たせるな」


入ってきたのはヘリックという男だった
ミーシア王女と一緒にいた時よりもだいぶ表情が心を伴わない異様な雰囲気…
ヘリックという男の声を汚らしい男達は従い、おれは四肢をロープで縛られ布に包まれて担がれた
胃に男の肩が食い込み気持ち悪さに拍車がかかる…

なんだ、何なんだよこの異様な感じ…
おれの読みが甘かった…?ミーシア王女に関しては正解していた、ヘリックというやつがこの男たちを?こいつ…こいつら一体…
考えてもわからない、隣国の使節団という正式な視察にこんな汚らしい男が加わるのか?
金で雇ったにしてはこいつらは獣人だ…人に上手く化けているが獣臭さがすごい…
辺境伯にいたゴロつきでもない…ならどこから…?


しばらく移動すると硬い床にたたきつけられる、痛みにもがき、布がめくれると目の前にはミーシア王女がいた

「あらぁ?性奴隷くんじゃないですか?グレス様を洗脳して、悲しませて酷い奴隷だこと!
私の運命の番を奪おうとするから罰が下るんですわよ!まあいいですわ………
ふふふっ、これからあなたは処分されるの、害虫処分♡己の愚かさを反省しなさい」


王女はおれの頭を踏んでくる…痛い…痛いがそれどころじゃない…ヘリックというやつと獣人の男2人の顔が明らかにおかしい…王女を見る目じゃない…
なんだよこの違和感…ミーシア王女とヘリックというやつの計画じゃないのか?



「ミーシア様、そろそろ向かいますよ、あ、この二人は護衛なので気にせず」

「そうなのですか?わかりました、ヘリックが処分にいい場所を知っていてよかったわ
護衛の二人、よく働いて頂戴ね?」

どう見ても護衛じゃないやつらを普通に信じてしまう王女…それでいいのかよ…警戒心人間より優れてるんじゃなかったのか…



おれを床に転がしたまま、地面が動き出す…違う、これは馬車だ…
どこへ行く…?おれをどこに連れて行く…?
グレスに行き先を告げることができない…こんなはずじゃ無かったのに…

















Side グレス

ユウマの計画、それは的確にミーシア王女の性格を読んでいた、明朝から開始された計画はスムーズに進む

縋りつきたくもないミーシア王女に助けを求めるなどプライドがボロボロになることもあったが、計画通りだ
シュゼル殿下もミーシア王女へ協力を求め、後はユウマを排除しようとした所を捕らえればいい
それで終わりの筈だった

事前に廃屋にユウマは隠れている、知らない国に来ているミーシア王女が遠くに行く頭はない、その考えには賛同だった、街の人を口先だけで味方にしているが、ユウマを排除となればあまり大々的すると自分の経歴にも傷が付く
俺とシュゼル殿下、少数の部下に見られるのがベストだろう、所有の奴隷に襲われた、責任を取ってくださいと訴えるのにも少数が妥当だ
婚姻前に処女を失うことは致命的、失った可能性があると言いふらされるのは避けたいはず

魔術が使えないユウマ宛にセイルが一方通行でだが連絡も送っていた、そうそう失敗するなどしない計画の筈だった…



「ユウマがいない…!???」


廃屋に付けていた見張りが倒れていると報告を受け、何か起きたのかと直ぐに向かうと先に到着していたシュゼル殿下から思いもしない報告を受ける


いるはずのユウマがいない…


「はい、見張りは頭を殴られ気絶していました…ユウマ様はの姿は影も形も無く…廃屋から姿が消えています…周囲を探しましたがユウマ様の匂いがしないのです…

そして…良くない報告がもう一つ…
ユウマ様が隠れていた場所に獣人の匂いを感じました、男の獣人二人…そしてヘリックの匂いです」



ヘリック…
あの王女の側仕えのような男…その男だけならまだしも…知らない獣人の男が二人…?
嫌な予感がする…現場へ入り俺自身も確認するがシュゼル殿下の話は本当だった

部屋の奥にユウマと獣人の匂い…そこでユウマの匂いは途切れている…ヘリックと獣人2名は廃屋の裏口までで匂いが途切れている…


嘘だろう…?
まるで用意周到に移動手段まで準備していたような、事前にこうなることを計画されていたような…違和感…………
ユウマが計画する前に何かを起こそうとしていた…?ミーシア王女の計画?それとも…………


誰の計画だろうが関係ない
ユウマはユウマは無事なのだろうか!?!
焦っても解決しないことなどわかる…しかし、ユウマ…どこにいるんだ…
セイルや皆が情報を集めてくれている…俺も早くユウマを見つけ出せないと…






駄目だ…こんなにも心に穴が空いたようになってしまう…俺にはお前が必要なんだ…

知らない間に強く手を握りしめていたのか血が滲んでいた
待っていろユウマ、直ぐに見つけ出す…











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