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平凡と獣が平穏な新生活を望む話
平凡は告白と疑心を知る
しおりを挟む規則正しい寝息が聞こえる…
まだ薄暗いのに不意に起きてしまった
おそらく昨日のミーシア王女の発言と行動が自分でも知らないほどショックだったのだと思う
運命の番…それが獣人にとってどれだけ価値があることなのかおれにはわからない…
なんでグレスなんだよって本当に混乱した…でも、グレスにとって王女のフェロモン?は好んで好きになるものでは無かったってことが救いだ…
目の前にはグレスの寝顔…寝てても時々耳がパタパタするのはずるいと思う…かわいい
今日もグレスの腕の中で目覚める…今日も、だ
自分と同じ気持ちかわからないと不安になってたけど、好きでもない相手を抱きしめて毎日寝るだろうか?特効薬としての存在を踏まえたとしても、飼い主とペットの距離感を大きく超えたスキンシップを日々しているおれたち
グレスが結ばれたい相手は誰だと考えてみても……グレスと殆どの時間を一緒に過ごしているのはおれしかいないんだ…
よくよく考えてみれば、もしも他に好きな相手がいたとしていつ逢うのかと思うくらいずっと一緒なんだぞ?…おれたち…周りからみたらバカップルくらいくっついてたし
それでも、ミーシア王女が怖い、運命の番が怖い、何も言わないままグレスがおれから離れてしまう可能性が怖い…だから…
寝顔を眺めるおれの視線に気付いたのかグレスが薄っすらと目を開ける、まだ寝ぼけているその表情には幼さが残る
「おはよう…ユウマ…」
寝言のようにおはようって言ってくれるのが愛おしい…そのまま軽く唇が触れるだけのキスをしてくる、おれも答えるようにキスを返すと、布団の中で尻尾が喜んでいるのかパタパタしているのが見えた
舌を入れないキスも好きだ、もどかしくて癖になる…暫く互いに好きなだけ触れて堪能してしまった
グレスがちゃんと目覚めたのか舌を入れてこようとしたのを静止して、しっかりと目を見る、エロいキスしてる場合じゃないんだよこっちは!散々堪能しておいて言えたもんじゃないけど!ちゃんと聞いてくれおれの気持ち!!!
「グレス、話がある…昨日のミーシア王女の発言と行動でおれは確信した…おれは…お、おれは…お前が好きなんだ!!!
ミーシア王女にとられたくない、グレスに甘えられるのも…一緒に寝るのもおれだけとして欲しい…グレス無しじゃ生きていけないんだ…だから…だからおれと付き合ってください…!」
気持ちを伝えたおれにグレスの手が伸びる、頭を、背中を抱かれ胸板に押し付けられるみたいに、抱きしめられた
温かい、グレスの心臓の音が聞こえる…おれと同じくらいドキドキしてる…
「…………それは!!!本当か…?っ………嬉しい、ユウマ…おれのユウマ、俺だってユウマが好きだ、愛してる…ユウマ無しでは俺も生きていけない…本当は、もっと準備を整えて妻に迎える時に伝えたかった」
グレスも、おれを好き…恋人飛ばして妻って言葉が聞こえた気がする…どうしよう…これって両片思いってやつじゃん?互いに生きていけないなんて依存入ってるじゃん…どうしようドキドキする
抱きしめ返して互いの体温を確認し合う、夢じゃない…現実だ…
「グレス、付き合う通り越しておれのこと妻にしてくれんの?どうしよう…おれ、男なのにグレスの妻になれるかもって事態が嬉しい…いいの?おれが妻で?てか、結婚できちゃうの男同士で?この世界」
「ユウマ以外と婚姻を結ぶなんて考えた事はない、こんなにもずっと側にいて癒される…俺の心を満たしてくれるのはユウマだけだ…
まだ準備が足りないから直ぐには婚姻できない、しかし数は少ないが法律上、同性婚も可能だ、確率は低いが同性でも子を成す魔法もあるくらいだからな」
「異世すげぇ…え…同性で赤ちゃん作れるの…?……………なぁ…グレス、おれもママになれたり…する?」
「ユウマが子を望むなら、俺との子を望んでくれるなら、母親にもなれるだろうな…」
自分で言っておいて赤面してしまう
現在寝起きベッドの中だ、本日は午後から使節団の皆様をおもてなしday二日目だ、ミーシア王女との戦いもある
しかしここは寝起きのベッドの中、おれとグレスは寝る時全裸なのだ…なんで全裸で寝始めたのかは覚えてないが、ここ数年全裸で寄り添って寝てる
グレスとの子を望んだらママになれる…………………それってさ…
「ぐ、ぐ…グレスさ…確認なんだけど…平凡な顔と身体のおれで勃つの?抱けちゃう感じ?」
「当たり前だろう?ユウマ以外に勃起しない自信はあるが、ユウマが好きだと自覚した頃から抑制剤飲んで勃起をコントロールする程度には…ユウマを抱き潰したいな」
抱き潰すくらい!?おれで興奮してくれんの?グレスさん…………抑制剤飲んでたのか…どうしよう抱き潰されたい…
いや、男同士でヤることに?グレスと性行為することに全く嫌悪感が生まれない…男同士って尻の穴使うんだよな…あの懐かしいフェラの時の怪物ちんこがおれに…男同士未経験なのに…どうしようドキドキする
互いに全裸…グレスの手がおれの尻を撫でてくる…お腹ゾクゾクするのはなんで…尻を使ったことないのに…それをご褒美にならミーシア王女の行動と我慢くらべも戦えるかもしれない…
グレスの耳元で会話の答えを告げる…
「王女様や使節団の件が全部解決したらおれのこと、抱き潰して…………?グレスに抱き潰されたい…♡」
抑制剤飲んでるっていうグレスのペニスが少し大きくなった気がした…………
「まぁ♡お待ちしておりましたの!お、はようございますグレス様、今日もとても格好いいお姿…ドキドキしますわ♡」
グレスと気持ちを伝え合って有頂天だったおれは、まさか辺境伯邸の応接室にミーシア王女がいるとは思ってなかった、グレスもそうだろう
濃紺のドレス、黒と銀のコサージュにサファイアのような宝石が散りばめてある…グレスカラーのドレス…
昨日の今日で、どうやって準備したんだよ…
そしてなんでここにいるんだよ…
「ミーシア王女…本日は午後から辺境伯領土を回る予定では?先触れも無かったので驚きました…どうしてここへ?」
そうだよ…王女が来るってわかってたら先手打てたかもしれないのに…使用人の皆はとても困った顔している…無理やり来たんだな…そして王女の隣にはヘリックと呼ばれてた運命の番素敵男も座っている
「私の運命の番は常に一緒にいるものですのよ?私、昨日は寂しくて夜も眠れませんでしたの、今日からはこちらでグレス様と一緒のお部屋で眠りたいですわ♡」
「姫様、それは素晴らしい、運命の番のあるべき姿ですな!」
いやいやいやいや…????大丈夫この王女???何いってんのこの王女????この男も大丈夫??
気持ち的には余裕だったのに王女が怖い
なんでグレスと一緒の部屋を希望するんだよ…運命の番のあるべき姿って何?
グレスもなんとも言えない顔してる…返答に困ってる…おれが口出ししていいか悩む…この王女に奴隷って思われてるから…
「それは困ります、ミーシア王女、あなたは使節団としていらっしゃっているお客様です、お客様はホテルで丁重におもてなしをと決まっているんですよ?
それに…申し訳ない、運命の番のフェロモンというのが私にはわからないのです…あるべき姿等言われても動揺してしまう…」
丁寧に部屋に、ついでに屋敷に入ってくんなを伝えてるグレス強い…確かに運命の番フェロモン?グレスにとっては王女、ドブの香りだっけ?それが本当に運命なのか…運命だとしてなんで差があるんだ…?
「な、な、なっ…なんですって?運命のフェロモンがわからないのですか…?そんなことって…私から甘い甘い香りがしないのですか?うそ、そんなの嘘よ!そんなはず無いわ!」
泣き出す王女…泣かないでくれ…国際問題にならないように攻略したいんだよこっちは…
とても可愛らしく泣いた王女をグレスが抱きしめるような事態にはならず、ヘリックと呼ばれた男が焦っているようだった
グレスが言い過ぎたか?とこちらを見てくる…ソンナコトナイヨってアイコンタクトしていた
その光景を…………王女が見ていたことに気付かなかった、不意に王女が泣き止む…怒りに似た何かを感じる
「おかしい、こんなのおかしいわ!運命の番よ?相手が受け取れないなんておかしすぎるのよ!!あなた達今見つめ合ってましたわね?…………っ!!!そこの奴隷!貴方の異様な魔力…それは何?何故グレス様から奴隷の魔力の残滓が漂っているの?まさか…性奴隷…?ひどい、ひどいわ!!グレス様を汚して私のフェロモンを感じにくくしたの!?ううっ………そんな事をするなんて……あんまりよ!私が飼い主になってあげるって昨日言った時も変な顔をしていたのはこういうこと!?
ひどい、ひどい、ひどいわ!!!」
そう叫びミーシア王女は辺境伯邸を飛び出して行った…ヘリックという男が後を追いかける…
今、おれなんて言われてた?…………性奴隷?性奴隷って?グレスを邪魔なんかしてないし思い合ってたし…でも…………おれの異質で異様と言われた魔力が本当にグレスに影響して運命の番を感じ取れないとしたら…?
一瞬考えてしまったことが頭から抜けない…冷や汗が出る…神子様のような力を使えるどの属性にも当て嵌まらないおれは本当に無害なのか…?
グレスに肩を揺すられ呆けていた事に気づく、憤慨するグレス…性奴隷と呼ばれた事を怒ってくれてありがとう…
でも、おれは、王女に何か言う前におれ自身を知らないといけないのかもしれない…
王女が出ていき、使節団を案内するために迎賓館へ向かうとシュゼル殿下が申し訳なさそうな顔で待っていた
妹がすまないと、でもそれだけではなかった
参加されない方が平和かと殿下と使節団の皆様だけで視察と観光に行ったのがマチガイだった
あの王女は囚衣を巻き込み始めたんだ
「グレス様の飼っている性奴隷の魔力が彼を穢してるわ、私の運命の番フェロモンが届かないのはあの奴隷が悪いの」
「グレス様の番は私なのに、こんなにも愛おしい気持ちが止まらないのに、彼は性奴隷の異質な魔力に囚われているの…あんまりだわ」
「あの性奴隷はただの人間じゃない、魔力が異質で気持ち悪い…グレス様は操られているのかもしれないの、酷すぎるわ」
領土内をみて回り、迎賓館へ戻ると王女はデタラメな話を風潮していた
おれの魔力が異質で異様なのは事実だ
一つでも真実が混じっていると嘘は途端に本当の様になる
おれは神子様のおまけ、ちょっと浄化が使える珍獣…それが本当は嘘だったら?
王女の見た目だけは儚げで守りたくなる涙と声にみんな哀れと悲しむ…シュゼル殿下が叱ってくれても運命の番じゃないとこれはわからないと言われてしまえば、真実がどれなのかわからなくなる
楓原の時と似ている
王女の涙に疑心暗鬼になりおれへの視線が冷たくなる…おれ自身もわからない事を反論もできない…
あの異世界人は安全なのか?
そんな噂がまん延するまで時間は掛からなかった
王女の話を信じた人の視線が怖い
グレスが違うと言ってくれても証拠がないんだ…
トラウマを思い出す…苦しい…怖い…
まだ、グレスや辺境伯邸に住む使用人やセイルくんはおれを信じてくれている…それだけが救いだ…
その最中、ミーシア王女とグレスの縁談を提案する書類が王家から届いた
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