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平凡と獣が平穏な新生活を望む話
平凡は運命を見る
しおりを挟む理解しきれないことが起きると人は考える事をやめる、おれも新人社員だった頃とんでもない営業先に辺り考える事やめた経験がある
今回もその類だ
考えたく無いだけかもしれない…それだけ衝撃的でどう理解すればいいかわからなくて…
運命の番
そう可愛らしい声で、仕草でグレスへ伝えたミーシア王女は、おれと同じく現状を理解できていないグレスへ駆け寄り…そして抱きしめた
周囲も現状が飲み込めていない…ミーシア王女の可愛らしい声だけが響く
「私の運命はこの国にいらしたのね!ずっとお会いしたかった、グレス様♡とても素敵なお名前とお姿♡ミーシアは貴方に会うためにこれまで生きていたのかもしれませんわ」
グレスの胸で甘えるようにすり寄るミーシア王女…運命の番ってなんだよ…そこはおれの場所なのに…言いしれぬ不安が過る…グレスが抱きしめ返して居ないことだけが唯一の救いだった
「ミーシア、皆さんが困っているだろう?やめなさい、申し訳ないグレス辺境伯…妹は世間の常識をあまり知らない箱入りなんだ…悪く思わないでくれ…」
シュゼル殿下の一言でその場は一度収まったが…ミーシア王女はグレスの腕にしがみついたまま離れようとはしなかった
グレスもどうしていいかわからない表情をしている、相手は他国の王女、無下に扱うわけにはいかない、使節団の他の人達も動揺している素振りが見えた…1人、運命の番という言葉に興奮している様子だったが意味がわからなかった
一度ガゼボで休憩を促し使節団の皆さまを案内する、グレスがやんわりミーシア王女に離れるように伝えたが通じていない
「グレス様は恥ずかしがり屋ですのね♡」
とか普通に勘違いしている様子…どうしようこの顔だけ可愛い感じ、ますます楓原と重なる…トラウマが揺さぶられるみたいで嫌だ…
セイルくんも他の使用人も心配そうにおれを見てくる視線を感じで余計に不安になってしまった
迎賓館の後ろは広い庭になっている、色とりどりの花やインテリア、その中にガゼボがある
ソファ形式で低めの机が可愛らしいゆったりできるタイプの場所、ソファ形式を採用したことをこんなにも後悔する日がくるなんて誰が思っただろう…
「グレス様♡素敵なお庭ですね?私、国から出たことがありませんでしたの!こんなにも綺麗なお庭初めてですわ♡
グレス様の膝の上でお茶ができるなんて…うふふ幸せですわ♡」
グレスが勧めた使節団の皆様への席を無視し、シュゼル殿下の言葉も聞かず、ミーシア王女はグレスが腰掛けたソファへ向かい膝の上に乗った
楽しいお茶会の筈が動揺だけが広がる…おれはグレスの横へ座る予定だった…そこで紹介も兼ねて…の予定がミーシア王女の行動で座らずにソファの後ろで控えている状態
モヤモヤしてしまう…グレスの膝におれ以外が座る事実に…グレスが何もミーシア王女に直接言えないのもわかる、不敬を働けば国際問題になってしまうから…
運命の番って…なんなんだ…使節団が滞在する間ずっとこうなのか…?居づらい…
「ミーシア王女!おめでとうございます、運命の番など中々見つかるものでは無い!この辺境伯殿の所でしたら嫁いで来るにも問題ないかと、国王陛下へ直ぐに早文を送りましょう」
そう、とんでもない事を言ったのは先程一人嬉しそうだった使節団の男…嫁いで…?誰が誰に?嫁いでくるんだ?
「まぁ!お父様へ早く伝えて!私、グレス様に早く嫁ぎたい♡運命の番ですもの♡」
はっ????????なんて言った?
顔色は変わってないか、変な顔をしていないか不安になる、他国の客の前なのに…グレスの事になると駄目だ、いやだ…おれの、おれだけの場所なのに…なんで奪われそうになってるんだよ…
「ミーシア、ヘリック、軽く口にする事では無いよ、父上には連絡するのは早すぎる、グレス辺境伯の事を何も考えずに行動していいと思っているのか?彼が既に婚約していたら?運命の事の風習があるのは我が国だけなんだよ?わかっているのか?
重ね重ね申し訳無い、グレス辺境伯…運命の番とは獣人に現れる生涯唯一無二のフェロモンを持つ相手の事なのです…我が国では運命の番は尊い物とされ優先的に婚姻を結んでいます
妹の運命の番が本当に辺境伯のことならば…縁談と言う形でお話をさせて頂く事になると思います…
グレス辺境伯は婚約者はおられますか?」
シュゼル殿下の説明にゾッとした…運命の番…下手したら相手に恋人がいようが婚姻する関係ってことか?グレスとミーシア王女が婚姻?する可能性があるって…?焦るおれに、周囲にバレないよう視線を少し向け、グレスは答えた
「婚約者はおりません、ですが私には心に決めた相手がおります、その者以外と婚約も婚姻もするつもりは無いことをご理解頂きたい」
きっぱりと、言ってくれた
咄嗟に考えた言い訳かもしれない、でもグレスがずっと一人で居てくれたらおれにもいつの日かチャンスが来るかもしれない…その心に決めた相手がおれだったらいいな…そんな淡い期待を持ってしまう…今は飼い主とペットの関係だ
シュゼル殿下はグレスの答えをちゃんと納得してくれているようだ、ミーシア王女をグレスの膝から降ろそうとする…しかし
「そんな!そんなことはあってはなりませんの!運命の番ですのよ??2人にしかわからない愛のフェロモンを感じることが出来る唯一無二の運命!
それ以上に勝る存在などないのに!
グレス様、私はグレス様と結婚します!運命の番っですもの!お父様へ婚姻の打診を出していただきますわ!ルティーリア国とガレナ神聖国の素晴らしい架け橋になれるこの運命の婚姻が拒否される理由ありませんもの!
その心に決めた相手も第二夫人でしたら許して差し上げますわ?私優しいの」
涙を目に貯め、見た目だけなら最高に可愛いミーシア王女はグレスへ訴える…半分脅しにも近い言葉
国との繋がり、ルティーリア国から縁談を持ちかけられる事になってしまったら断る事など出来るのだろうか…てか、第二夫人ってなんだよ…
グレスは答えに困っている様子だ…発言が通じない相手、楓原をきっと頭に浮かべているかもしれない…
答えが返ってこないグレスにもやもやしたのかミーシア王女はおれを見てきた
「ねぇ、そこの…使用人…?奴隷?あなたもグレス様と私の婚姻は素晴らしい事だと思うでしょう?隷属の首輪をしてグレス様に飼われてるんなら、今日から私もあなたの飼い主ね?素敵なご主人様が増えて嬉しいでしょう?」
この王女が何を言っているかわからない…
お前がご主人様?は?だめだ、口を開いたら暴言しか出てこない気がする、国際問題になってしまう…隷属の首輪込でおれの存在なのに、他国の要人の癖に頭足りてねぇのかよ!!なんだよ奴隷って!
グレスの握られた指に力が入っている、怒りを覚えてくれているようで少し嬉しい
でもこの王女…本当に人の話を聞かない…どうするんだよこいつ…
「ミーシア、いい加減にするんだ、我々は使節団として来ているだよ?それに彼は奴隷じゃない、そんな事も知らないのか?とにかくグレス辺境伯から離れなさい!」
「そこまで言わなくてもシュゼル殿下、ミーシア王女の運命の番ですよ?もっと祝って差し上げても」
シュゼル殿下が場を収めようとしてくれるのに、ヘリックと呼ばれた男はミーシア王女の味方のようだ…そのうちミーシア王女が泣き出した
私は間違っていないお兄様の馬鹿…と叫びながらガゼボを出ていく…後を追うヘリックという男
追わなくていいですとグレスや他の人に伝えてくれる殿下の表情は少し暗かった
完璧に寝る間も惜しんで今回の使節団を迎えるために準備をしたのに出だしが最悪になってしまった
その後も元が脳天気な性格なのか復活も早いミーシア王女は事あるごとにグレスへ抱きつき、膝へ座り…夜開催された晩餐会ではグレスへエスコートを求めた…シュゼル殿下の言葉は届かず王女へ他の使節団のメンバーは物を言えない
そして夜、
まさか出会ってからの短時間でグレスの瞳と髪色を交えたドレスを準備してくるとは思わなかった
グレスは辺境伯としての正装だが、ミーシア王女はグレスの色に染まりエスコートされる…
知らない人が見れば2人は婚約者だ、その二人の後ろを歩く隷属の首輪を着けた、おれ…2人に飼われていると勘違いされてもおかしくない状況
真顔で国際問題にならないよう笑顔もない、グレス専用の神子様もどきのついて歩くおれも真顔…
今日は終始胸のもやもやが募っていた
流石にグレスの部屋へミーシア王女が泊まろうとする暴挙はシュゼル殿下の活躍で防がれ、迎賓館の隣のホテルへ泊まって貰った…よかった
辺境伯家へ戻り、皆で顔を見合わせてしまった…
使用人の皆も、セイルくんもおれとグレスを見てよく頑張ったなって顔をしていた
グレスと部屋へ戻る
今日はミーシア王女が来てからグレスと直接話していない、部屋の扉が閉まるとグレスはおれを抱き締めて唇を奪ってきた、相当焦っているのか頭を抱き寄せられ、無茶苦茶に口内を貪られる
「ん゙っ、んん♡んぁ゙……っ♡グレスっ、ちゅ♡焦んなって…はっ、んんっ♡」
おれの言葉も無視して息が上がるほど舌を吸われて甘噛みされて、唾液を奪われた
おれは息絶え絶えでグレスに支えられるようになってから、少し落ち着いたのかボソボソと今日のことを話し合う
「あの王女の言ってることがわからない…運命の番って…がわからない…あの女からは凄く嫌な匂いがした…ドブのような酷い匂いだ…それが運命?そんなわけあってたまるか…
もっと許せないことは俺のユウマを奴隷だと、奴隷と言った事だ…巫山戯ている、ユウマの飼い主は俺だけだ、ユウマは俺だけのなんだ…
畜生…下手に騒げば国際問題になってしまうことが不愉快だ…シュゼル殿下と使節団の大半は普通なのに何なんだ…ユウマ、ユウマが足りない…あの女に触れられた所が臭うんだ…」
「おれはグレスのだよ、誰にでもないグレスだけの日比野優真だ、そんな泣きそうな顔すんな?おれだって今日は不安で泣きそうだった…
グレスの膝の上はおれの居場所なのに…あの感じ、楓原がもう一人いる気持ちになって辛かった…
おれは鼻良く無いからわからなかったけど見た目だけ可愛くて臭いの?あの王女様
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王女が臭いで2人で笑った、一緒にお風呂に入ってグレスを丸洗いして…冗談で言ったのにグレスがおれの匂いつけるって射精させたの腹に塗りだしたのは焦った
酷い1日だった…明日はどんなことをしてくるのか不安でしかない…でも、こうしてグレスに抱きしめられて眠ると嫌なこと忘れられるんだ…
グレスは王女を好きじゃなくてよかった…おれを腕の中に求めてくれて嬉しいよ…
2人で眠りにつく…
そして、また朝が来てしまう
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