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平凡と獣が平穏な新生活を望む話

獣は驚く

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ユウマの体液を使用した浄化の力は予想を大きく上回っていた、瘴気の湧き出てる土地を一瞬で元へ戻してしまったのだ
体内の瘴気に侵食された部分を浄化するよりも早いのは正常な細胞から侵食部分を丁寧に剥ぎ取り浄化する必要が無いからだろうか…

本当に俺があの牢屋で連れて帰り、保護してよかったと思うくらいに…現状隷属で浄化を使用している神子様を軽く上回る力を持っている
国に、他国に知られてはいけない…本当に信頼する者達以外にバレることはユウマを奪われる可能性しか産まない
今の俺を生かしてくれる神子様のおまけ、浄化を多少使える珍しい異世界人の表現が一番安全だろう…


何より、俺はユウマが好きだ、愛している
しかしこの気持ちを伝える事で互いの関係が崩れてしまう事が怖いのは勿論、ユウマが同意してくれても妻に迎えるには準備が足りなすぎる
この国の元第一王子、現辺境伯、それだけでは足りない、人ならざる見た目の俺には敵が多い、ユウマを守れるだけの地位と財力、味方の存在が必要だ
いずれユウマを妻に迎えたい、その為にはユウマを養子に一度迎えてくれる家も必要だ

この国での同性婚は可能だがあまり多くはない
しっかりと準備をしよう、ユウマは俺の側にいてくれると何度も約束してくれている
ユウマが安心して生活できるのが、幸せを感じるのが俺の側であってほしい…

早めに目が覚めてしまい愛おしい寝顔を見つつ頬を撫でていると、甘えるようにすり寄ってくるのが可愛らしい
今日からは辺境伯としての引き継ぎと業務が始まる…気合を入れないとな












気合を入れて迎えた辺境伯としての業務引き継ぎ
文官であり担当の男が屋敷へ招かれる
肩までの深緑の髪を後ろで括り、薄緑の瞳を持っ男を書斎へ通す

「お初お目にかかります、今回担当を務めますセイル.エイベリスと申します、辺境伯殿
国へこの地が返還されてから我々国税課の者で行っていましたが、表面に近い部分の管理です
辺境伯殿へこの地のさらなる発展をと国王陛下様より書面も預かっております、元第一王子様の新たな門出お手伝いさせて下さいませ」

丁寧に挨拶してきたこの男は確かエイベリス侯爵家の3男、俺の気配察知に反応が無いのを見ると、魔力が揺らいでるわけでもなく害意はないようだ


「よろしく頼む、セイル殿
既に私は王子ではなく辺境伯グレス、早くこの地に慣れて発展へ繋げて行きたいと考えている」


「素晴らしい志です!
…………私は隠し事が嫌いなので先に、実は私の実家、エイベリス侯爵領土は何度かグレス様に助けて頂いているんです、魔獣討伐をして頂かなければ甚大な被害でした…ですのでその恩もあります
そして私はグレス様の姿に正直に申します、偏見がありません、私の恋人が隣国に住む獣人の子なんです、ですので、今回の話を私が受けました
いずれ恋人の実家が近いこの地に移り住むのを野望を胸にお手伝いしますのでよろしくお願いします」

「それは、それは有り難い申し出だ、感謝します、よろしくお願いする」


国王陛下が送ってきたと考えると警戒せねばと思ったがセイルと言うこの男は自らの意思で引き継ぎに来てくれたようだ
素直に感謝しよう、私の外見に偏見が無いのも有り難い


書斎に籠りセイルから引き継ぎ要項の説明を受ける
税を支払いギリギリ赤字では無い状況だったが、俺は10年無税を勝ち取ってきている
それを話すとセイルは侯爵家とは思えない反応で爆笑していた、貴族らしい概念が合わないのかもしれない

「も、申し訳ございませんグレス様、ふふっ、そんな勝ち取り想像しないものでして、なるほど…でしたら財源に余裕を持って修繕と開拓を行えそうですね
地図を見て下さい、農村含め街自体は安全ですが、前辺境伯様はこの地を魔獣、魔物の被害から守りきれず国へ返還しています
鉱山に魔物、恐らく侵食された魔獣も出る可能性があるのが一番の痛手です、そしてこの深い森も魔物の発生が多く、侵食されていれば更に危険、魔物の素材を資源とする前にこちら側が怪我をするなど甚大な被害に繋がります
当面、通常の執務に加え、現場の調査、魔獣と魔物の討伐が必須かと」

「心得ている、執務部分は慣れるまで教えて欲しい、何分魔獣討伐しか仕事を回して貰えなかった身だ、言葉では上手く立ち回れても書面では弱い」

「はい、任せてください
魔獣討伐部分、グレス様がいるだけでかなり心強くありますね…」




今後の流れ、執務について近隣の商家や貴族の説明を受けていると早いもので昼になっていたようだ
聞き慣れた足音が近づいてくる

コンコン…部屋にノックの音が響き入室の許可を出す、半日も会っておらす心が飢え始めていたユウマがそこにいた


「グレス……お話中失礼します、昼食の準備ができたので担当の方と食堂をご利用になってはいか…………ふぐっ!」

ちゃんと礼儀正しくしてくれようとするユウマがかわいい、半日もユウマ不足だった俺が足早に駆け寄りユウマを抱きしめてしまうのもしょうがない、自然の摂理だ、致し方ない事だ
ぎゅうぎゅう抱きしめると抱きしめ返してくれる…愛おしい


背後から驚きの気配がする…
あ、セイル殿がいるのを忘れていた…が、そんなこと些細な問題でしかない
ユウマを胸に閉じ込めて項に舌を這わせて匂いを吸う、心が満たされる…狼の因子が入っているんだしょうがない、不足しているんだ俺は
チロチロと項を舐め堪能してたらユウマが震えている………どうした?

「ひ、ひ、ひ、人前!!!本当に本当の人前だろーー!!!グレス!!やめろって!!!あ、あ、やぁん♡」


セイル殿の前で恥ずかしかったらしい、気にしなくていいのにな…服をずらし、噛み跡が残ってしまっている肩に舌を這わせると甘く鳴くユウマ…このままベットに帰りたい




………………が、恥しさに耐えきれなかったユウマの頭突きが飛んできて帰れなかった













無事食堂へ到着すると自然な流れでユウマを膝の上に呼びたいが人前だ、普通の椅子では狭いしな…
隣り合わせにユウマと座り、向かい合わせにセイル殿が座る

「グレス様、あの…彼は?」

状況が読み取れないセイル殿、あんなことするからだろうと俺を睨むユウマ、睨むなと頬を撫でると、無意識にすり寄ってくる…可愛い…
…………説明を放棄してしまうところだった


「セイル殿、紹介する俺の大切な存在、異世界人のユウマだ
王宮で聞いたことがあるだろう?神子様と共に召喚され僅かに浄化が使える、俺の命を繋いでくれる存在、それが彼だ
俺の大切な存在なんで今のようなスキンシップは日々当然のように行っていてな…驚かせてすまない」

「彼があの!幼い方なんですね?始めまして私はセイル.エイベリス、19歳です、侯爵家3男で文官をしています」

「始めまして…さっきはお見苦しい所をお見せしました…すいません…
おれは日比野優真、日本って所から召喚されてきました…23歳なんで幼くはないですね…?」




今、なんと言った?
「「…………23歳?」」


「………………何その反応、ちゃんとした社会人だよおれ、というかグレスは何歳なの?そういえば」


「………………今年で20歳だ」


「……………………………は?」



ユウマは成人していた…しかも歳上だった…こんなに可愛いのに…ギャップがとんでもなかった
ずっと未成年だと…思っていた
なんとも言えない昼食を3人で取り、なんとも言えない雰囲気のまま会話が途切れつつ進む…
年下にあんなに甘えて恥ずかしいと涙目なユウマが可愛すぎて辛かった
歳とか関係無いんだ…そんなに悩まなくて良い
歳上だったユウマに甘えるのもありかもしれないとわくわくする、俺はユウマの事になると狼というより犬になってしまうのかもしれない


セイル殿は状況を飲み込むのが得意らしく、徐々に俺とユウマを見て話を聞いて、理解したらしい
お二人が大切な存在同士の関係なのがわかりました応援しますねと、軽く言える度胸がすごい


午後も業務の引き継ぎを受ける、今度は成人していたユウマも一緒に、未成年だと思っていたが成人しかなり働いていたと話をされたからだ
書類管理についての話になった時、俺は再度驚いた


「グレス、おれってお前の仕事手伝ってもいい?ここに来る前の仕事で帳簿も書類整理も、あと営業周りとかもできるからさ?なんか手伝いたい」


セイル殿と耳を疑った、こんな小柄な未成年だと思っていたユウマがそんな…?仕事…?
恐る恐るセイル殿が帳簿を差し出す、ここ数年のこれから処理する物らしい…普通に受け取るユウマ…黙々と帳簿と書類を見比べ記入していく………まさか…


……………
………


「電卓とか算盤無いと中々時間かかるなー同じ様なのこの世界に無いのかな?セイルさん一応出来たんで見てもらえますか?」


十分程度で出来たらしいそれをセイル殿に手渡す、確認している彼の手が震えている
最後まで確認し俺をみる彼の目は驚きと驚き、驚きに満ちていた

「で、で、で、出来てます」









ユウマの有用性が増してしまった…どうして帳簿なんて付けられるんだ…一緒に仕事が出来るのは嬉しい、嬉しいが…有用過ぎて奪われる可能性が増したみたいで嫌だ…
本日分の引き継ぎが終わり、この日もユウマを一時も離さずそばに置いて過ごした
人目など気にしない、ユウマが離れることが不安だと歳上だったユウマに甘えてみたら顔中にキスされて甘やかされてしまった…


本日分の特効薬タイムがいつもより激しくなってしまったのはしょうがない
甘えるようにすると限界なのに「もっと吸っていい」とか言ってしまう…ユウマが悪い
何処まで俺を虜にするんだ…





気絶した愛おしい存在を身綺麗に抱きしめて眠った











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