黒い獣は巻き込まれ平凡を持ち帰る

たなぱ

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平凡が異世界で獣と出会う話

平凡の知らない平凡

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「ユウマ、お前王宮で話題になってた」



「はっ?」





国王陛下より呼び出しされたグレスが離宮に帰ってくると早々、おれにそんなことを言ってきた


「あの神子様とんでもない奴だな、あれに指導とか一緒にいたユウマが可哀想になったよ」
少し困った顔でおれの頭を撫で回し、楓原の新人指導していたことを同情された




先日のクソ殿下&楓原の思い出したくもない来訪から数日、おれは知らない所で悪事を働いているらしい、おそらく楓原の仕業だろう



おれに悪事を働くことが可能だと…?
どれだけおれのアリバイが完璧だと思っているんだ楓原さんよ…
男根に奉仕という屈辱を味わったあの日、グレスに慰められながらずっと抱きしめられて朝を迎え、更にペットに対して優しく過保護になってしまったグレスと風呂も飯もずっと一緒、トイレも入口まで一緒、時折メイドさんや執事さんを踏まえてもグレスの自室より一歩も出ていない
本当に一歩足りとも出ていない、夢遊病の気配がもしもあったとしても寝る時はグレスの腕の中だ、ペットポジションに死角はなく翌日目が覚めるまで放してくれない


乱入者の発言で思わぬ屈辱を味わったせいで、ちょっと外の世界が怖くなってしまったおれは家庭菜園の趣味もせず、ひたすら自室に籠りグレスに甘やかされるペットに生活に入り浸っていたんだ

おれのアリバイは完璧だと言うのに、証人は第一王子殿下ぞ?そんなおれは、いつ悪事を働くのか…?否、楓原の脳内オンリーだろう


話題のおれが、どの様な悪事を働いたか
ある時は神子楓原様に暴言、髪を引っ張るなどの暴力を働き、ある時はクソ殿下から貰った大切な私物を壊したり、またある時は気に入らないと階段から突き落とし、噴水に突き飛ばしたり、そしてトドメに神子楓原様に割り当てられた予算を勝手に使い商人を呼んで散財、男娼を呼んでお楽しみしたと……………………


どこからツッコミいれたらいいのだろう…
楓原が何をしたいのかわからない…わかりたくないのかもしれない…最後のは確実にグレスのせいだ許さねぇ…


そんな悪事の結果、楓原は上手く魔力を使えず未だに浄化ができていない、クソ殿下に慰められながらおれの悪事に怯え日々泣いて過ごしている…王宮の人々はなんて可哀想な神子様と同情し、守って差し上げなければと息巻いているらしい…


離宮の皆さんに同じ悪事を伝えると、日々のおれを知ってるから「まぁまぁ妄想癖でもあるのかしら神子様」と的確な答えを言ってきて笑った






「国王陛下に呼ばれたのもユウマの件だ、本当に悪事を行っていないか確認された
隷属の首輪は勿論、この離宮の監視魔法を過去から今まで全て見せてユウマが一歩たりとも離宮から出ていないこと、俺や家臣の証言も全て叩きつけてありもしない悪事でユウマを困らせるなと威圧しておいた」


「そんな事になってるのか…証言してきてくれてありがとう…」



怪しく笑うグレスさんが男前過ぎてかっこいい
身の潔白さらっと晴らしてくれて男前かっこいい…

んっ…?監視魔法の過去から現在って体液奪われてるおれも含まれるの???特効薬のこと内緒にすると男に感じてる子にならない?そこ大丈夫??
気になったが怖くて聞けない…



「国王陛下と宰相、近衛兵にはユウマが無害であり俺の加護下にある存在であることは分かってもらえたが、その他大多数は神子様の言うことを信じ切っている…集団心理にしてもおかしい話だ…ユウマはどんな奴か、それすらもわからないのに神子様を叩いてる所を見ました…なんて奴もいた」


「こっわっ!!おれの事見たことあるのこの城の関係者で3人しかいないのに!?グレスとクソ殿下とモブ兵士だけじゃん…なんで見たこともない奴の悪事が出てくるんだよ…」


「おかしな話だ…国王陛下が真実を伝えてくれるかも怪しい、あの人も神子様の反感は食いたくないからな……わかった事は本当にこの離宮以外安全な場所は無いって事だ、今以上に注意した方が良い、俺は肩書は第一王子だがこの姿、王宮に味方はいない、全ての誤解を解けなくてすまない…」



落ち込むグレス…犬耳までぺたんと落ち込んでしまっている…すまなくない!そんな事ないですグレスさん!!!
ガバっとグレスの頭ごと抱きしめる、いつもグレスがしてくれている事をペットも真似してるだけだこれは!


「謝んな!グレスはなんも悪くないだろ?国王とかその辺だけでもおれの無実がわかってもらえたのはグレスのおかげだ、ありがとう!
お前に飼われてよかったって胸張って言えるんだよおれは」




犬耳モフりながら頭をわしゃわしゃ掻き回してやる、
グレスに拾われてなかったら、こんな穏やかに離宮で悠々自適な生活送れてないんだから



男根奉仕事件は男としてのプライドがズタボロになるくらいショックが大きかったけど、それ以上におれはグレスを信頼していると自覚する
特効薬渡すためにキスもフェラも、下手すると汗まで舐められてるが、気持ちいいし嫌じゃない…
抱き締められて寝てくれないと安眠できないくらい信用してるんだ…
ペットとして、男としてじゃなくペットとして…!!!



頭撫で回してたのに、いつの間にかグレスにキスされて、午後は一緒に昼寝しようと誘われた
昼寝、嬉しい、抱きしめてくれ













Side 楓原

おかしい、おかしい、こんなの絶対おかしい!
むしゃくしゃして用意された部屋の枕を叩きつけてる


私は楓原奏、昔から周囲に可愛いと褒められ、モデルと間違われることもよくある、自分に自信を持っていた
新卒である会社に入社して、日比野優真と出会ったことが私の運の尽き…
すごく平凡でほんわかした先輩、それが日比野優真
仕事もほどほどによくできて周囲からの、信頼もそこそこ厚い、私にも分け隔てなく優しい…すごく良いと思った、こんな平凡で優しいが私を甘やかしてくれたらと…

何度も、今まで告白されたし、付き合った、好意の目しかない世界、私を嫌いになる人なんていないと思ってたのに…日比野優真は…!!

私がちょっと気がありますって態度を取るとあからさまに逃げた、飲みに誘っても逃げる、ボディタッチしてあげてるのに嫌な顔をしてくる
可愛い子に詰め寄られて逃げるなんてどういう神経してるの???


腹いせにあることないこと周囲に吹き込んだらみんな同情してくれて、やっぱり私は間違っていなかったと実感する
日比野優真、あなたがおかしいのよ!


ある営業の日、日比野優真と外回り最悪って道路を歩いていたらこちらへ向ってくる光、地面が抜けているように光っている…そこへ日比野優真を落とそう…なぜかそう思ってあいつの腕を掴み白い光へ向かった…


そして、目覚めたらこれだ
まさか私までこんな場所へ来るなんて!!
でも、私は神子様らしい、みんなが私を崇め、大切にしてくれる世界
日比野優真のこれまでの仕打ちの仕返しもしたくて嘘泣きしたら軽く実質死刑が決まって笑った



私に泣いて謝ったら許してあげようと思ったのに!いつの間にか地下牢にはいなくて…
何故って探してもらったら、私を可愛いと崇めてくれる第二王子のお兄さん、呪われた第一王子に囲われているとかなんなのよ!!!

日比野優真に会いに行ったら、男前のイケメンを侍らせて腹が立った、隷属?好き好んで男を咥えこんでるに違いない、汚らわしいものを見せられて、男前だって私のほうがかわいいからいいに決まってるのに、あの男が奪う


ああ、イライラする、上手くいかない!!私の素敵な人生に泥を塗ったあいつが許せない!





叩きつけて過ぎて枕から綿が出てしまった…
新しいの買ってもらわなきゃ…


日比野優真、許さない、泣いて土下座して謝ったら私が隷属して飼ってあげるわ

魔術を習うのに全然上達しないのもあいつのせい、
浄化を早く進めたいとか言われても困るのよ!
そうだ、隷属して飼育したらあいつを痛ぶってあげよう、きっと晴れやかな気持ちになる気がする
そうすれば浄化魔法なんて簡単に使えるわ







ゾットするほど素敵な計画だ…
待ってなさい日比野優真…








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