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平凡が異世界で獣と出会う話

平凡は巻き込まれる

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日比野優真
平凡にな人生を謳歌する今年23歳の会社員
特になんの変哲もなく平凡な家庭で育ち、新卒で入社した会社では良くも悪くもなく平凡な営業成績で上司部下との関係もそこそこいい
なんの変哲もない平和な人生…素晴らしい

慌ただしいよりも穏やかな時間の流れが好きだ、友人には、よく老後のおじいちゃんみたいな性格と言われる、おれ。
うるせえ穏やかな性格と言え

そんなおれの趣味は家庭菜園だ



こんな穏やかな日が続くことを信じてやまないおれの生活が一変したのは、新人社員が入社してくる4月…
おれの働く部署にも新人社員が数名配属された訳だが勤務年数的にそろそろ新人指導もしてみようと一人の新人がおれに託された

「おれは日比野、よろしくな?」
「はじめまして!日比野先輩よろしくお願いします、楓原奏です!」

モデルかよってくらい可愛い新卒の女、楓原。
スタイルも抜群、笑顔で明るいいい子に見えた
人当たりもよくて人に好かれそうな、そんないい子と思っていたこの時までは




業務を教えて行く中で楓原は妙に距離が近い女だった、同期は可愛い後輩羨ましいとか言うが、毎日毎日飲みに行きましょうと言われても毎日は流石に辛い、酒弱いし、騒がしい所がどちらかと言うと嫌いだ
そしてスキンシップも多かった、至近距離に来なくてもパソコン見えるだろ?!と肩が触れ合う距離感に目眩がする、無駄に腕を絡めようとしてくる、なぜだ

後輩に好かれて嫌な理由はないんだ、ただモデル並みに可愛いお前が近付くと周囲の男がおれに嫉妬してくるんだよ…適切な距離感大事!!



そう思い、適切な素晴らしい会社員の距離感で接するようにしたおれが楓原は気に入らなかったんだろう、スキンシップが多いモデル並みに可愛い後輩から一転
楓原は、おれに酷いことをされる可哀想な後輩になった



「すいません、私、わたし…こんな風に処理するなんて知らなくて…あのっ、ごめんなさい…」
初歩的な事務処理、おれが入社初日に何度も教えた内容を入社3ヶ月も過ぎた頃に教わっていないと盛大にミスをする
可愛い顔でボロボロ泣く楓原、初歩的なことも教えてないと疑われるおれ、当然指導者のおれの責任になった

楓原はとにかくおれを話題に出しては泣く
「日比野先輩に気があるって思われてて…連れ込まれそうになって怖かった…」
と先輩へ相談した日には節度ある対応をしろと非難を浴び
「日比野先輩が私の悪口を言ってるの聞いて…先輩に嫌われたら働くの辛いのに…なにかしちゃったんですかね私」
と同期に言えば後輩にも優しくできない奴なのかと冷たい目で見られる
「毎日誰かにつけられてて…背丈が日比野先輩と同じで…私の勘違いだといいんですが…」
と、とんでもない事まで言い始めると上司から呼び出しをくらい警察沙汰にならないよう厳重注意を受けた


おれを悪者にして慰められ、褒められ、話の中心にいる楓原は大層嬉しそうにみえる
おれを巻き込むなと指導職員を変えてもらえるように上司に掛け合うが、楓原から先輩の下で頑張りたいと、怖い思いをしたのにおれを信じるいい後輩を演じているせいで指導から外れることもできない



最近、段々と出勤することがしんどくなってきた
最近転職サイトをよく見る、人間関係にも亀裂が入り、楽しく仕事ができない状況…早く転職したほうがいいのかもしれない




日々悩みながら今日は、外回りだなと誘いたくもない楓原を誘う
もう夏だ、外は猛暑…とんでもなく暑い
互いに無言で目的の場所へ進んでいる途中、楓原が急に立ち止まった
「…?どうした楓原」
熱中症にでもなったのかと声をかける
「日比野先輩は私のことなんで嫌いなんですか?酷いことばっかり…どうして…?こんなにも私可愛いのに…」


嫌いよりもめんどくさいから関わって欲しくないんだけど!???
どうしよう楓原が何を言いたいかわからない、こんなにも可愛いらしい…確かに顔面はかわいい、そんな楓原の気持ちがわからない
酷いことされてるのおれじゃん…??


返答に困り無言で楓原を見ることしかできない
嘘泣きなのか本当に泣いているのか楓原の目には涙が浮かぶ…どうしろと言うんだ…




沈黙が流れる中で、楓原が横を走る交通量の多い道路を見る
何かあったのか?誰かいた?
おれも確認しようと道路を見ようとするが急に楓原に腕を掴まれる、ぐいっと引っ張られバランスを崩す身体、楓原と共に道路に足を踏み入れてしまう

おい、おい、おい…!?!
何をした?この女何した…!?ここは…





車のクラクションが響く
何かの悲鳴が聞こえる
おれの身体には何かの衝撃が走った気がした…












「神子様が降臨された!!!」

誰かがそんな事を叫んでいる、ここは…どこだ…?
おれ、車に轢かれたよなたぶん、生きてる?死んでる?神子ってなんだ…?
不思議と身体は痛くない、目を開けるとまるで大聖堂のような煌びやかな場所…
はっ…?ここどこだよ…?

辺りを見ると隣には目を覚ましたのか起き上がる楓原、こいつも怪我はしていないようだ




また声が響く
「ようこそおいで下さいました!神子様!
貴方様の降臨を心待ちにしておりました」


えらく整った顔の神官っぽい見た目の男
興奮を抑えられないと言わんばかりの笑顔で楓原の前に跪き優しく微笑む

…楓原が神子様ってやつなのか…?
誰かこの状況を説明してほしい





カツカツカツっ…
足早に誰かがここへ来る
「神官長!神子様が召喚されたと聞いた!まことか?」


またとんでもないイケメンのThe王子様が現れた
金髪慧眼の素晴らしく整った顔をした王子様っぽい人

「ああ、なんて美しい…ようこそ我が国にお出でくださいました神子様、お会いできて光栄です」
今度は王子様が楓原の前に跪き手に手にキスをしている…




満更でもないような楓原、謎の美形2名、説明を求めるが言い出せないおれ
暫く楓原へ美しい、素晴らしい、愛らしい、神子様などなど賞賛を贈ると、楓原をお姫様抱っこし、あれよあれよと言う間に楓原を連れ3人とも何処かへ行ってしまった…



めちゃめちゃ広い大聖堂みたいな所に置いていかれたおれ
楓原が神子様とやらならおれは…?おれなんでここにいんの?楓原に腕掴まれてここへ来たのか?巻き込まれたのか?
疑問が浮かぶが誰も答えてくれる人はいない



てか周りにおれ見えてる?
美形二人は一瞬たりともおれを見ていない、幽霊なのかもしれない恐怖を覚えてしまう




どうしていいか分からずその場に座り込むしかないおれ
周りの音も聞こえていなかったのか、ぴたりと首に何かが触れた



「神聖な大聖堂にかってに入り込むなど、何用だ侵入者…その見た目…この国の物ではないな…?」
怖い怖い首切られる!!!!
首に触れているのは剣でした…首の皮が触れた剣で薄く切れる…じわりと血が流れる






恐怖で何も話せないおれはそのまま縛られ担がれで牢屋へ連れて行かれた


どうしてこんな事に…早く転職しておけばよかった…






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