悪役令息に転生したおれは、ひたすらに尻を守りたい

壁尻公爵家

「明日、カインの見舞いにヴィッシュ公爵とレイルくんが来る事になった
体調が良ければレイルくんと話をしなさいカイン」


「壁し………………かしこまりましたお父様、見舞いに来てくれるなんて嬉しいです…本当はおれが謝罪に行かねば行けないのに…」


先日、思い出したゲームのことを日本語で書き記しながら、自分の婚約者となる存在、未来の壁尻公爵であるレイルに対して壁尻公爵怖い！壁尻職人との関係どうしたらいいんだよって悩んでたらまさかの…先方から家に来るらしい…

え、お見舞いに来てくれるの？おれがレイル公爵子息を追いかけ回して自業自得な感じで自分で池に落ちたのに…お見舞いにくるの！？謝罪に行くのこっちなのに！？爵位的にもいいの？


思わず壁尻来るんですかと言ってしまいそうになるのを必死に堪えつつ、父様の話を聞いた

なんと、爵位的にはヴィッシュ公爵家が上だが、現在事業に失敗しかけたのを救い、ついでに物凄くうちが出資し、天候不順での不作の時もすごく援助している為、我が家に頭が上がらないのだと言う
今回のおれと、公爵家次男であるレイル公爵子息との婚約の話も、実は援助してくれるロズウェル侯爵家との繋がりを強め、爵位的な恩恵を我が家に差し上げたい的な政略的婚約…

だからこそ、おれがレイルを追いかけ回そうが未来の妻は恥ずかしがり屋ではしゃいでいますわよって感じに受け入れられてしまっているという
相手は全く怒っていないのだと…







嘘だ、それは確実に嘘だ…おれには分かる…！
ご両親目線ではそうかもしれない、しかし！！当事者は違うんだ…！

レイルはおれの行為を許してはいない
というか忘れてただけで、おれその事実知ってる！だからこそ「お前はぼくに頭が上がらないだろう？言う事を聞けよ！」ってなんか上から目線で命令しまくって…それで…………

ヴィッシュ公爵ーーーーー！！！！！お宅のレイルくん！カインに色々虐められる経験が性癖を歪めまくって、将来的に自宅に壁尻を自分で作るなんて暴挙に出てしまう因子をお持ちのとんでもないお子様ですよ！！！

主におれのせいなんですけどね！！婚約者におれって悪役子息がいると性癖が歪みますよ！

もう大変！わかります？壁尻です！か、べ、し、り！！！このアホエロゲーの世界では有名なのか一般的なのかそれは知らない…！知らないが、壁から尻を出すように固定された哀れな尻を虐める性癖が…おれと婚約したら生まれてしまうんですよ…！！

いいのか、大事な息子が壁から生えた尻を撫でて「今日も可愛がってあげるよ」とか言うんだぞ！？いいのですかヴィッシュ公爵ー！！！


そう、叫びたかった　



うおおおお！！どうしよう！？明日来るの！？なんで来ちゃうかな！？
既におれはやらかしている…事業助けてやってるんだからって…レイルに対して小馬鹿にしたり、追いかけ回したり、虫を投げたりと…おれの酷い行動三昧相手を責めているんだ…
今後、ゲームで正式に婚約者になるとそこから更になんで自分を守らないんだよ！婚約者だろ！って怒り狂って酷い酷い…
てかなんでおれが妻枠なの？レイルが婿入りすること決定なのはどうして？てか男同士の結婚が普通なのかー！さすがアホエロゲーの世界…


普通にこんな顔だけ男のくせに可愛いけど、生意気で野蛮な男嫌だろ？じゃあおれと婚約破棄しない！？って爽やかに伝えたい…結婚しても未来が見えない…！婚約解消求めたら許される？絶対許されないんだよなー！！！
家の契約とか利害関係とかあったらそう簡単に婚約解消なんてならないじゃないか…





悩んでいるうちにあっという間に翌日になり、おれは今、ヴィッシュ公爵家御一行様と面会している
にこにこ優しい顔した父様、どうしようって冷や汗ダラダラのおれ…
目の前には男前なおじ様なヴィッシュ公爵と、少しそわそわしたレイル公爵子息がおられる

本当にヴィッシュ公爵の表情から息子に何してくれたんだね君って感じの敵意を感じなくて嫌だ…
てか、レイルくんもなんでそわそわしてるの？キミ、おれのこと嫌いでしょ？嫌いだよね？


「貴重な時間をありがとう、ロズウェル公爵
カインくん、誕生会ぶりだね？あの日は家の息子がすまないことをした…お尻は大丈夫かい？」


「あ、…えっと…大丈夫です…
そもそも池に落ちたの事も自業自得なんで、ヴィッシュ公爵やレイル公爵子息に謝罪されるなんてそんな…そんな………こちらこそ、この度はご迷惑をお掛けしてしまいすいません……」



冷や汗ダラダラなのを隠しながら必死に会話をするおれを、隣のお父様が嬉しそうに見てくる気がした
うちのこ生まれ変わるって言って、本当にちゃんと謝れてる偉い！って雰囲気を感じる…

お父様、おれは本当に生まれ変わったんです…なのでこの婚約の話ももう一回考え直して…お願いだから…事業云々関わってるの知ってるけど…！じゃあせめておれを夫枠にして…！

そんな必死な気持ちは声を出さないと伝わらない、しかし声に出して言えるもんでもなかった



暫く話をして、ついにその時が来てしまう



「見舞いに来たのも確かだが…大切な事業相手のご子息の臀部に怪我をさせてしまったたのは、我がヴィッシュ公爵家の恥だ
婚約の話を早く進めようと思うんだ…どうかな？」



どうかなじゃないです…どうしろっていうんだよ本当…