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保健室の先生

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「と言うことがありまして。一応ここに来て早退させてもらおうかと。」

と俺は保健室の先生に一通り話した。
この先生は俺のことを知らないが親身になって聞いてくれた。

「では、早退と言うことにしましょう。部活を除いて朝来て授業も受けず、早退するのは佐藤君が初めてですよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

なるほど、保健室の先生でも、こんな生徒初めてなのか。

「でも、今帰ったら怪しまれるでしょう。少し私と話しましょう。それぐらいいいでしょ?」

「まあ、それくらいなら。」

俺は早く帰りたいが、先生の言うことも確かだ。今の時間帰ると逆に怪しまれるだろう。

生徒が朝のホームルームの時に帰ることにしよう。

「佐藤くん、家族はいらっしゃるの?」

「居ませんね、今まで一人暮らしをしてました。二年前に祖母が他界してそれから独りですね。」

「ごめんね、聞きにくいことを聞いてしまって。」

こう言うことはよく聞かれ、謝れるもう慣れるさ。

「いえ、構いませんよ。事実ですから、それに俺はもう割り切ってますから。」

「学校楽しい?」

「楽しいという感情は学校には持ち合わせてないですね。ここには将来のため通ってますから。それだけです。」

俺は嘘偽りなく答えた。
だから、ボッチであるがそれは俺が望んだこと。

「そうなのね、友達は?」

「居ませんね、ボッチですよ。だからたまたま女子生徒に話しかけられて、クラスのやつに目の敵にされてるのかもしれませんね。まあ正直、眼中に無いですけど。」

俺はこの保健室の先生に怒ってるわけでもないが、少しキツめに言ってしまった。

「あなたを殴った子をどうするの?停学くらいになら出来るけど、上に報告する?」

「面倒なのでいいです。それとあいつは恐らく俺が体調不良と言うことにして帰ったと担任に言うでしょう。それに担任も信じると思いますがね。」

「林先生ね、まあ若いからね。そういうのに流されるかもね。」

あの担任は若い、殆どの生徒に舐められている。授業もそんな雰囲気がいつもしている。

俺はこういう人間が嫌いだ。進路も大変だと思うなこの担任だと。

それにしてもこの人普通に担任をディスったよな。ここに誰もいないから出来ることか、それとも俺に同情するための嘘か分からないが。

「ねえ佐藤君、あなたダンジョン潜ってるでしょ?」

なんで最近こうも身近な人にバレるかなぁ。しっかり隠蔽してるのに。いや、鎌かけてる場合があるから一応否定しとくか。

「行ってないですよ、俺は命が大切ですから。」

「ふふっ、ゴメンね私、真偽眼と言うスキル持ってるのよ。でも、強かろうとそうでなかろうと関係なく貴方はあなたの強さを持っている。それで十分だわ。」

真偽眼か、また厄介なスキルだな。鑑定すると真偽眼と出た。嘘の一つも言えないのか。まあ、沈黙すれば勝ちだけど。

「そろそろね、ここにいつでも来ていいわよ、年の私のところに来る生徒なんか居ないから。」

この学校で一番素晴らしいと感じた先生のもとに誰も来ず、若いだけの先生のもとに生徒が寄るのか見る目がないな。

「じゃあ俺が先生と喋るために明日から通いますよ。他の生徒も見る目がないな、こんな素晴らしい先生がいるのに。これは本当ですからね?真偽眼で確かめて下さい。それではまた明日。」

「さよなら~また明日~」

と俺はここを出て家に帰った。



side保健室の先生

佐藤君面白い子だったわね。

「明日から私と喋るためにここに通うか、この年になってそんな生徒初めてだわ。」

とりあえず、林先生に佐藤くんが早退したと伝えないとね。



「林先生」

「浜口先生、どうされました?」

この人は本当に大丈夫かしら、

「佐藤君早退したわ。」

「ああ、みんなから体調不良だから来て早々帰ったと聞きました。保健室に行っていたのですね。」

本当にあの子の予想通りだわ、まあそんなクラスたしかに楽しいという感情は持てそうにないわね。

その原因の一端はこの担任だけど。

「ハァ。それは良かった。あなた見る目がないわね。」

「それはどう言う意味ですか?」

少しイラつきながら私に言い返して来る。少しは自分で考えて欲しいものだわ。

「自分で考えなさい。あなたのクラス恐らく崩壊するわよ。まあ、せいぜい頑張って下さい。」

「林先生、気にすることないですよ。若い貴女に嫉妬してるんですよ。」

「ありがとうございます」

私が林先生のところから去るとそのような事が聞こえてきた。

本当にダメだわこの担任。そして、周りの人も。いや、数人は顔をしかめている先生がいますか。

そして言って私はこの職員室を出た。



ガラガラ

昼ごろ珍しく、先生と生徒が1人ずつ入ってきた。

1人は青木涼香、1人は橋田先生。女性の先生だ。

この先生は顔をしかめている1人だった。何故この2人が一緒に来たかは分からないが私に用があるのだろう。

「どうしました?体調が悪いようではないですけど。」

「「あの、」」

「あ、青木さんからどうぞ。」

「いえ、橋田先生から」

「では、朝のことを詳しくお聞かせできますか?」

「とりあえず座って。」

「朝のことね、その前に青木さんの用件は?」

「あの、佐藤君はどうして帰ったんですか?」

なるほどこの子が佐藤君に話しかけて男子の嫉妬を買ったと。今の高校生はそんなことでくだらないわね。

「朝の事を簡単に話すと、青木さんに佐藤君が話しかけられたことに嫉妬したクラスの男子が佐藤くんを殴ったわ。それで佐藤君は早退した訳。」

「それで、佐藤君は大丈夫‥‥ですよね、」

この子もダンジョンのこと知っているのね。

「まあ、傷は作っていたけどピンピンだったわね。私と軽く談笑して帰ったわ。」

「で、橋田先生の事だけど林先生のクラスの生徒は佐藤君を体調不良で帰ったと言ったそうだわ。そのことに担任は気づかず放置。佐藤くんの予想通りだったわ。それにこう言うのが続けば、このまま佐藤君がやられっぱなしの訳ないじゃない。青木さんがよくわかってるのじゃない?」

「‥‥‥はい、」

「それで、そのクラスは崩壊すると、佐藤君がやられっぱなしじゃないってどう言うことですか?」

橋田先生は佐藤くんのこと知ってるようね。

「橋田先生、佐藤くんのこと知ってるの?」

「知ったのは最近です、国語のテスト学年一位でしたから。」

あの子らしいわね。

「佐藤君って頭いいの?」

「あんまりこういうのは言えませんが今回のテストは学年トップでした。以前も常に1桁を常にキープしてましたし。」
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