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10話 復讐

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「いいえ、ありえません。会長はクレアで、現在は王国の端まで商談に行っているはずです」
「そっ、そうですよ。オリヴィアが会長なわけないではないですか、ご冗談にも程があります」
 私は表に立ちたくなかった。
 だからクレアに表の会長として商談などを任せていた。
 会長の肩書がある方が相手に舐められないから。

 それでも、さすがに王家に嘘をつくわけにはいかず、王家お墨付きをいただく際に王妃様とはじめて顔を合わせた。
 それ以来、王妃様はアイヴィロ商会一の顧客で新商品が出るたびに私が王宮まで献上しに行っていた。
 王妃様は笑みを溢しながら私をチラッと見た。
 これは楽しんでいるときの顔だ。

「冗談ではないわ。あなた達がこの日のために遠ざけたクレアちゃんは商談専門であって、本当の会長は目の前にいるオリヴィアちゃんよ!!」
 王妃様の満足気なドヤ顔にこちらまで恥ずかしくなってしまう。

「そっ、そんなバカな……あっ!? ですが、その女は不貞を働いた女です。信用には値しません」
「オリヴィアちゃん、本当なの?」
「全くのデタラメですね。証拠も揃っています」
 みんなが集めてくれた証拠が私にはある。

「そうよねぇ、王家でも調査をしたけれど、あなた子飼いの婚約仲介人が洗いざらい喋ったわよ」
「あっ……あぁ……」

「あなたのお父上は本当に立派な武人だったわ。グリフィス家は代々その武力によって王国に貢献して来てくれていた。貴族の中でも特別な存在なのよ」
 アランは納得していない様子で王妃様を睨みつけるが、そんなことは気にせずに話を続ける王妃様。

「グリフィス家に騎士として仕えていたヴィクターのことだけど……」
「そうだ、あの裏切りの騎士が……」
「黙りなさいっ!!」
 王妃様が今日初めて声を荒げた。
 アランはその迫力で膝から崩れ落ちる。

「アランさん、それ以上の侮辱は王家へ対する大反逆罪に当たりますよ」
 取り乱す王妃様に代わってルクシア様が間に入る。
「……」
「王族の王位継承者はいくつかの貴族に仕えて、民の上に立つということを学ぶのですよ。第一王子ヴィクター・ルドニール・アセルセアの名をお前如きが気安く呼んでいいものではない」
「連れて行きなさい」
 落ち着いた王妃様の命令で二人は会場から連れ出された。

「ところでオリヴィアちゃん……」
 ニコニコと王妃様が近づいくる。
 逃げたいけど、逃げたら反逆罪だ。
「ヴィクターと上手くやってるようだけど」
「……」
 恥ずかしさで耳まで真っ赤になってしまう。
 最初は全く気づかなくてそういう関係になってしまいました。
 気づいたときには気持ちが抑えられなくなっていた。

「いいのよ、オリヴィアちゃんなら大歓迎ですからね」
「はひっ……はい……よろしくお願いします」
 よろしくなんて、何をいっているんだろう私は……
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