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4話 マナを感じよう
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講義が始まってから3日が過ぎた。
お昼休憩の教室は静かなもので、ほとんどの生徒が食堂へと足を運ぶ。
クライは机に顔を伏せて口から魂でも抜かれているかのように呆然としていたが後頭部に走る痛みで魂は引っ込み我に返る。
「なにやってんのよ、食堂行くわよ」
「はぁーぁ、ふぇーい」
エレナに大きなあくびをしながら返事をして食堂へ向かう。
ここまでやる気が出てないのには理由がある。
クライの大好きなスキルについて未だ授業で触れられておらず、お預けをくらっている状態なのだ。
学校紹介などには興味がないが図書館の存在を知れたことは僥倖であった。
すぐに図書館で本を借りて暇があれば食い漁るように読みふけている。
これがよくなかった、本の内容にスキルが登場する度に自分も使いたいと欲望に拍車がかかってしまう。
魔法学校の敷地内には食堂が3つある。
その中でも席数にして500席用意されているこの大食堂はとにかく広い。
壁の一面がガラス張りでそこから中庭が覗けて、巨大な大樹に地面に敷かれた芝生を心地の良い風が
吹き抜け、春の温かさを感じさせる。
ベンチも用意されているので食堂で注文をして中庭で食事をする人も少なくない。
外でなくともガラスの天井から差し込む3つの太陽光は湿った心を包み込むような春の温もりを与えてくれる。
俺のせいで出遅れてしまったが、席を確保できたのはラッキーだったな。
机の反対側ではエレナが申し訳程度のお肉とほどほどの野菜を口に運ぶ。
まぁ、体型でも気にしているのだろう。
俺からすれば丁度いい塩梅な気がするが、決して口には出さない。
それで痛い目にあったことがあるからだ。
横にライラがいるが、机に並べられているのは肉、肉、肉、一切の妥協がないほどに、野菜の存在を否定するかのように、気持ちのいい食べっぷりを見せてくれている。
ライラの豪快な食事を見ていると自分の前に並べられている料理がすごく質素に見えてしまうが、実際は平民が食べるには豪華な料理の数々が並んでいる。
これらが無料で食べられるなんて『ヴェルリア王国』万歳としかいいようがない。
食堂だけでなく授業料や寮の宿泊など基本的に必要な生活費は国が保証してくれる。
今日も豪勢な料理に舌鼓を打っていると、幸せな時間を壊すように下卑た笑い声を響かせてそいつらは現れた。
自分たちは特別なんだぞと言わんばかりに指輪、腕輪に首飾りをこれでもかと飾り散らした三人の男はイレスを先頭に我が物顔で近づいてくる。
「初めてこっちの食堂を使ってみたが、よくこんな下賤な料理を食べれるな」
「イレス様のおっしゃる通りです、飼い犬の方がいいもの食べてますよ」
三人は机に並べられている料理を蔑む様に見下ろした。
「十分おいしいのにな」
イレス達に向けた言葉ではないが、俺の素直な感想だ。
エレナとライラは目も向けずに食事を続ける。
「そこの女、俺についてくるなら貴族の食事というものを食べさせてやってもいいぞ。ついでにお前もどうだ?」
イレスの目に男の俺は映ってなく、下品な目がエレナとライラの二人に向けられている。
「結構です。十分満足してるので」
エレナは脱みつけて言い返す。
「はぐはぐ、はぐはがはぐはぐ」
ライラに至っては食べながら喋っているので何を言っているのか分からない。
「俺の誘いを断るとはどうなっても知らないからな」
イレスは捨て台詞を吐いて足早に去っていった。
「どうして、貴族ってだけであそこまで調子に乗れるのかしら?」
「いや、俺に言われても分からないよ。俺が気になるのはいつからスキルが使えるかってことだよ」
「あんたはスキル、スキルってそればっかり、美女二人と食事できてるのよ、もう少しありがたがったらどうなの」
「美女?」
鈍い音と共に額に衝撃が走った。
まぁ確かに、エレナもライラもかなり整った顔立ちでそこらの貴族にも負けていない気がする。
中身がもう少しおしとやかならな……
「クライ、何考えてるの?」
エレナの頬が引きつる。
「いいえ、何も。あーご飯が美味しいな」
お昼休憩が終わってからの講義は相も変わらず副担任のロゼリアが行っている。
これまで担任のトバイアスが講義を行ったことはない。
ただ、生徒は小難しそうなトバイアスよりも凛々しく整った顔立ちのロゼリアが初々しく講義を行う姿を見てほっこりとした気持ちで講義に望めていた。
人気はなかなかのもので生徒の中にはロゼちゃんと呼ぶものもいて愛されている。
「では、マナについて学んでいきたいと思います」
きたきたきたー!!
心の中で歓喜の声を上げる。
マナはスキルを使う上では欠かせないもので、とうとうスキルに関する講義が始まるということだ。
興奮しているのは俺だけではない、教室内のボルテージが上がっている。
やはりみんなの思いは同じだったらしい。
マナは誰もが体に秘めていて、それを使用することによりスキルが行使できる。
講義の内容はシンプルで体の内に眠るマナを感じるというもの。
目を閉じて瞑想に入る。
周りの音が遮断され、心臓から全身に送られる血液、呼吸するたびに酸素が肺に取り込まれるのを感じる。
それらとは別に何とも言えない抽象的なエネルギーが体に満ちているのが分かる。
これがマナなのだろう、 不思議な感覚だ。
優しく右肩を叩かれたのを感じて、ゆっくりと目を開けると、ロゼリア先生が立っていた。
「素晴らしい集中力でしたね」
そういって時計を指さすと、気づけば講義が終わる時間になっている。
およそ1時間が一瞬で過ぎていた。
お昼休憩の教室は静かなもので、ほとんどの生徒が食堂へと足を運ぶ。
クライは机に顔を伏せて口から魂でも抜かれているかのように呆然としていたが後頭部に走る痛みで魂は引っ込み我に返る。
「なにやってんのよ、食堂行くわよ」
「はぁーぁ、ふぇーい」
エレナに大きなあくびをしながら返事をして食堂へ向かう。
ここまでやる気が出てないのには理由がある。
クライの大好きなスキルについて未だ授業で触れられておらず、お預けをくらっている状態なのだ。
学校紹介などには興味がないが図書館の存在を知れたことは僥倖であった。
すぐに図書館で本を借りて暇があれば食い漁るように読みふけている。
これがよくなかった、本の内容にスキルが登場する度に自分も使いたいと欲望に拍車がかかってしまう。
魔法学校の敷地内には食堂が3つある。
その中でも席数にして500席用意されているこの大食堂はとにかく広い。
壁の一面がガラス張りでそこから中庭が覗けて、巨大な大樹に地面に敷かれた芝生を心地の良い風が
吹き抜け、春の温かさを感じさせる。
ベンチも用意されているので食堂で注文をして中庭で食事をする人も少なくない。
外でなくともガラスの天井から差し込む3つの太陽光は湿った心を包み込むような春の温もりを与えてくれる。
俺のせいで出遅れてしまったが、席を確保できたのはラッキーだったな。
机の反対側ではエレナが申し訳程度のお肉とほどほどの野菜を口に運ぶ。
まぁ、体型でも気にしているのだろう。
俺からすれば丁度いい塩梅な気がするが、決して口には出さない。
それで痛い目にあったことがあるからだ。
横にライラがいるが、机に並べられているのは肉、肉、肉、一切の妥協がないほどに、野菜の存在を否定するかのように、気持ちのいい食べっぷりを見せてくれている。
ライラの豪快な食事を見ていると自分の前に並べられている料理がすごく質素に見えてしまうが、実際は平民が食べるには豪華な料理の数々が並んでいる。
これらが無料で食べられるなんて『ヴェルリア王国』万歳としかいいようがない。
食堂だけでなく授業料や寮の宿泊など基本的に必要な生活費は国が保証してくれる。
今日も豪勢な料理に舌鼓を打っていると、幸せな時間を壊すように下卑た笑い声を響かせてそいつらは現れた。
自分たちは特別なんだぞと言わんばかりに指輪、腕輪に首飾りをこれでもかと飾り散らした三人の男はイレスを先頭に我が物顔で近づいてくる。
「初めてこっちの食堂を使ってみたが、よくこんな下賤な料理を食べれるな」
「イレス様のおっしゃる通りです、飼い犬の方がいいもの食べてますよ」
三人は机に並べられている料理を蔑む様に見下ろした。
「十分おいしいのにな」
イレス達に向けた言葉ではないが、俺の素直な感想だ。
エレナとライラは目も向けずに食事を続ける。
「そこの女、俺についてくるなら貴族の食事というものを食べさせてやってもいいぞ。ついでにお前もどうだ?」
イレスの目に男の俺は映ってなく、下品な目がエレナとライラの二人に向けられている。
「結構です。十分満足してるので」
エレナは脱みつけて言い返す。
「はぐはぐ、はぐはがはぐはぐ」
ライラに至っては食べながら喋っているので何を言っているのか分からない。
「俺の誘いを断るとはどうなっても知らないからな」
イレスは捨て台詞を吐いて足早に去っていった。
「どうして、貴族ってだけであそこまで調子に乗れるのかしら?」
「いや、俺に言われても分からないよ。俺が気になるのはいつからスキルが使えるかってことだよ」
「あんたはスキル、スキルってそればっかり、美女二人と食事できてるのよ、もう少しありがたがったらどうなの」
「美女?」
鈍い音と共に額に衝撃が走った。
まぁ確かに、エレナもライラもかなり整った顔立ちでそこらの貴族にも負けていない気がする。
中身がもう少しおしとやかならな……
「クライ、何考えてるの?」
エレナの頬が引きつる。
「いいえ、何も。あーご飯が美味しいな」
お昼休憩が終わってからの講義は相も変わらず副担任のロゼリアが行っている。
これまで担任のトバイアスが講義を行ったことはない。
ただ、生徒は小難しそうなトバイアスよりも凛々しく整った顔立ちのロゼリアが初々しく講義を行う姿を見てほっこりとした気持ちで講義に望めていた。
人気はなかなかのもので生徒の中にはロゼちゃんと呼ぶものもいて愛されている。
「では、マナについて学んでいきたいと思います」
きたきたきたー!!
心の中で歓喜の声を上げる。
マナはスキルを使う上では欠かせないもので、とうとうスキルに関する講義が始まるということだ。
興奮しているのは俺だけではない、教室内のボルテージが上がっている。
やはりみんなの思いは同じだったらしい。
マナは誰もが体に秘めていて、それを使用することによりスキルが行使できる。
講義の内容はシンプルで体の内に眠るマナを感じるというもの。
目を閉じて瞑想に入る。
周りの音が遮断され、心臓から全身に送られる血液、呼吸するたびに酸素が肺に取り込まれるのを感じる。
それらとは別に何とも言えない抽象的なエネルギーが体に満ちているのが分かる。
これがマナなのだろう、 不思議な感覚だ。
優しく右肩を叩かれたのを感じて、ゆっくりと目を開けると、ロゼリア先生が立っていた。
「素晴らしい集中力でしたね」
そういって時計を指さすと、気づけば講義が終わる時間になっている。
およそ1時間が一瞬で過ぎていた。
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