4 / 6
4話 マナを感じよう
しおりを挟む
講義が始まってから3日が過ぎた。
お昼休憩の教室は静かなもので、ほとんどの生徒が食堂へと足を運ぶ。
クライは机に顔を伏せて口から魂でも抜かれているかのように呆然としていたが後頭部に走る痛みで魂は引っ込み我に返る。
「なにやってんのよ、食堂行くわよ」
「はぁーぁ、ふぇーい」
エレナに大きなあくびをしながら返事をして食堂へ向かう。
ここまでやる気が出てないのには理由がある。
クライの大好きなスキルについて未だ授業で触れられておらず、お預けをくらっている状態なのだ。
学校紹介などには興味がないが図書館の存在を知れたことは僥倖であった。
すぐに図書館で本を借りて暇があれば食い漁るように読みふけている。
これがよくなかった、本の内容にスキルが登場する度に自分も使いたいと欲望に拍車がかかってしまう。
魔法学校の敷地内には食堂が3つある。
その中でも席数にして500席用意されているこの大食堂はとにかく広い。
壁の一面がガラス張りでそこから中庭が覗けて、巨大な大樹に地面に敷かれた芝生を心地の良い風が
吹き抜け、春の温かさを感じさせる。
ベンチも用意されているので食堂で注文をして中庭で食事をする人も少なくない。
外でなくともガラスの天井から差し込む3つの太陽光は湿った心を包み込むような春の温もりを与えてくれる。
俺のせいで出遅れてしまったが、席を確保できたのはラッキーだったな。
机の反対側ではエレナが申し訳程度のお肉とほどほどの野菜を口に運ぶ。
まぁ、体型でも気にしているのだろう。
俺からすれば丁度いい塩梅な気がするが、決して口には出さない。
それで痛い目にあったことがあるからだ。
横にライラがいるが、机に並べられているのは肉、肉、肉、一切の妥協がないほどに、野菜の存在を否定するかのように、気持ちのいい食べっぷりを見せてくれている。
ライラの豪快な食事を見ていると自分の前に並べられている料理がすごく質素に見えてしまうが、実際は平民が食べるには豪華な料理の数々が並んでいる。
これらが無料で食べられるなんて『ヴェルリア王国』万歳としかいいようがない。
食堂だけでなく授業料や寮の宿泊など基本的に必要な生活費は国が保証してくれる。
今日も豪勢な料理に舌鼓を打っていると、幸せな時間を壊すように下卑た笑い声を響かせてそいつらは現れた。
自分たちは特別なんだぞと言わんばかりに指輪、腕輪に首飾りをこれでもかと飾り散らした三人の男はイレスを先頭に我が物顔で近づいてくる。
「初めてこっちの食堂を使ってみたが、よくこんな下賤な料理を食べれるな」
「イレス様のおっしゃる通りです、飼い犬の方がいいもの食べてますよ」
三人は机に並べられている料理を蔑む様に見下ろした。
「十分おいしいのにな」
イレス達に向けた言葉ではないが、俺の素直な感想だ。
エレナとライラは目も向けずに食事を続ける。
「そこの女、俺についてくるなら貴族の食事というものを食べさせてやってもいいぞ。ついでにお前もどうだ?」
イレスの目に男の俺は映ってなく、下品な目がエレナとライラの二人に向けられている。
「結構です。十分満足してるので」
エレナは脱みつけて言い返す。
「はぐはぐ、はぐはがはぐはぐ」
ライラに至っては食べながら喋っているので何を言っているのか分からない。
「俺の誘いを断るとはどうなっても知らないからな」
イレスは捨て台詞を吐いて足早に去っていった。
「どうして、貴族ってだけであそこまで調子に乗れるのかしら?」
「いや、俺に言われても分からないよ。俺が気になるのはいつからスキルが使えるかってことだよ」
「あんたはスキル、スキルってそればっかり、美女二人と食事できてるのよ、もう少しありがたがったらどうなの」
「美女?」
鈍い音と共に額に衝撃が走った。
まぁ確かに、エレナもライラもかなり整った顔立ちでそこらの貴族にも負けていない気がする。
中身がもう少しおしとやかならな……
「クライ、何考えてるの?」
エレナの頬が引きつる。
「いいえ、何も。あーご飯が美味しいな」
お昼休憩が終わってからの講義は相も変わらず副担任のロゼリアが行っている。
これまで担任のトバイアスが講義を行ったことはない。
ただ、生徒は小難しそうなトバイアスよりも凛々しく整った顔立ちのロゼリアが初々しく講義を行う姿を見てほっこりとした気持ちで講義に望めていた。
人気はなかなかのもので生徒の中にはロゼちゃんと呼ぶものもいて愛されている。
「では、マナについて学んでいきたいと思います」
きたきたきたー!!
心の中で歓喜の声を上げる。
マナはスキルを使う上では欠かせないもので、とうとうスキルに関する講義が始まるということだ。
興奮しているのは俺だけではない、教室内のボルテージが上がっている。
やはりみんなの思いは同じだったらしい。
マナは誰もが体に秘めていて、それを使用することによりスキルが行使できる。
講義の内容はシンプルで体の内に眠るマナを感じるというもの。
目を閉じて瞑想に入る。
周りの音が遮断され、心臓から全身に送られる血液、呼吸するたびに酸素が肺に取り込まれるのを感じる。
それらとは別に何とも言えない抽象的なエネルギーが体に満ちているのが分かる。
これがマナなのだろう、 不思議な感覚だ。
優しく右肩を叩かれたのを感じて、ゆっくりと目を開けると、ロゼリア先生が立っていた。
「素晴らしい集中力でしたね」
そういって時計を指さすと、気づけば講義が終わる時間になっている。
およそ1時間が一瞬で過ぎていた。
お昼休憩の教室は静かなもので、ほとんどの生徒が食堂へと足を運ぶ。
クライは机に顔を伏せて口から魂でも抜かれているかのように呆然としていたが後頭部に走る痛みで魂は引っ込み我に返る。
「なにやってんのよ、食堂行くわよ」
「はぁーぁ、ふぇーい」
エレナに大きなあくびをしながら返事をして食堂へ向かう。
ここまでやる気が出てないのには理由がある。
クライの大好きなスキルについて未だ授業で触れられておらず、お預けをくらっている状態なのだ。
学校紹介などには興味がないが図書館の存在を知れたことは僥倖であった。
すぐに図書館で本を借りて暇があれば食い漁るように読みふけている。
これがよくなかった、本の内容にスキルが登場する度に自分も使いたいと欲望に拍車がかかってしまう。
魔法学校の敷地内には食堂が3つある。
その中でも席数にして500席用意されているこの大食堂はとにかく広い。
壁の一面がガラス張りでそこから中庭が覗けて、巨大な大樹に地面に敷かれた芝生を心地の良い風が
吹き抜け、春の温かさを感じさせる。
ベンチも用意されているので食堂で注文をして中庭で食事をする人も少なくない。
外でなくともガラスの天井から差し込む3つの太陽光は湿った心を包み込むような春の温もりを与えてくれる。
俺のせいで出遅れてしまったが、席を確保できたのはラッキーだったな。
机の反対側ではエレナが申し訳程度のお肉とほどほどの野菜を口に運ぶ。
まぁ、体型でも気にしているのだろう。
俺からすれば丁度いい塩梅な気がするが、決して口には出さない。
それで痛い目にあったことがあるからだ。
横にライラがいるが、机に並べられているのは肉、肉、肉、一切の妥協がないほどに、野菜の存在を否定するかのように、気持ちのいい食べっぷりを見せてくれている。
ライラの豪快な食事を見ていると自分の前に並べられている料理がすごく質素に見えてしまうが、実際は平民が食べるには豪華な料理の数々が並んでいる。
これらが無料で食べられるなんて『ヴェルリア王国』万歳としかいいようがない。
食堂だけでなく授業料や寮の宿泊など基本的に必要な生活費は国が保証してくれる。
今日も豪勢な料理に舌鼓を打っていると、幸せな時間を壊すように下卑た笑い声を響かせてそいつらは現れた。
自分たちは特別なんだぞと言わんばかりに指輪、腕輪に首飾りをこれでもかと飾り散らした三人の男はイレスを先頭に我が物顔で近づいてくる。
「初めてこっちの食堂を使ってみたが、よくこんな下賤な料理を食べれるな」
「イレス様のおっしゃる通りです、飼い犬の方がいいもの食べてますよ」
三人は机に並べられている料理を蔑む様に見下ろした。
「十分おいしいのにな」
イレス達に向けた言葉ではないが、俺の素直な感想だ。
エレナとライラは目も向けずに食事を続ける。
「そこの女、俺についてくるなら貴族の食事というものを食べさせてやってもいいぞ。ついでにお前もどうだ?」
イレスの目に男の俺は映ってなく、下品な目がエレナとライラの二人に向けられている。
「結構です。十分満足してるので」
エレナは脱みつけて言い返す。
「はぐはぐ、はぐはがはぐはぐ」
ライラに至っては食べながら喋っているので何を言っているのか分からない。
「俺の誘いを断るとはどうなっても知らないからな」
イレスは捨て台詞を吐いて足早に去っていった。
「どうして、貴族ってだけであそこまで調子に乗れるのかしら?」
「いや、俺に言われても分からないよ。俺が気になるのはいつからスキルが使えるかってことだよ」
「あんたはスキル、スキルってそればっかり、美女二人と食事できてるのよ、もう少しありがたがったらどうなの」
「美女?」
鈍い音と共に額に衝撃が走った。
まぁ確かに、エレナもライラもかなり整った顔立ちでそこらの貴族にも負けていない気がする。
中身がもう少しおしとやかならな……
「クライ、何考えてるの?」
エレナの頬が引きつる。
「いいえ、何も。あーご飯が美味しいな」
お昼休憩が終わってからの講義は相も変わらず副担任のロゼリアが行っている。
これまで担任のトバイアスが講義を行ったことはない。
ただ、生徒は小難しそうなトバイアスよりも凛々しく整った顔立ちのロゼリアが初々しく講義を行う姿を見てほっこりとした気持ちで講義に望めていた。
人気はなかなかのもので生徒の中にはロゼちゃんと呼ぶものもいて愛されている。
「では、マナについて学んでいきたいと思います」
きたきたきたー!!
心の中で歓喜の声を上げる。
マナはスキルを使う上では欠かせないもので、とうとうスキルに関する講義が始まるということだ。
興奮しているのは俺だけではない、教室内のボルテージが上がっている。
やはりみんなの思いは同じだったらしい。
マナは誰もが体に秘めていて、それを使用することによりスキルが行使できる。
講義の内容はシンプルで体の内に眠るマナを感じるというもの。
目を閉じて瞑想に入る。
周りの音が遮断され、心臓から全身に送られる血液、呼吸するたびに酸素が肺に取り込まれるのを感じる。
それらとは別に何とも言えない抽象的なエネルギーが体に満ちているのが分かる。
これがマナなのだろう、 不思議な感覚だ。
優しく右肩を叩かれたのを感じて、ゆっくりと目を開けると、ロゼリア先生が立っていた。
「素晴らしい集中力でしたね」
そういって時計を指さすと、気づけば講義が終わる時間になっている。
およそ1時間が一瞬で過ぎていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める
シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。
メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。
しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる