26 / 32
26話 鉱石泥棒
しおりを挟む
「では安全第一でよろしくお願いします!!」
「メェ!!」
「くま!!」
ノアはぽむとこおりに号令をかけて採掘を始めたが、最初は張り切っていたぽむとこおりは地味な採掘作業にの飽きてしまって、いまでは洞窟内を追いかけっこしていた。
「ダメだよ、他の人の邪魔になるから」
ノアは注意するもののバカップルはイチャイチャして作業をほとんどしておらず、もう1人の青年も体力がないのかへばって座り込んでいる。
「ガハハハ、まぁそんなもんだろうよ。少し早いが切り上げてもいいぞい」
班員たちはお互いの顔を見てガイエンの提案に乗った。
早くは切り上げたものの3人での作業だったので、ノアとしては悪くはない成果であった。
元々、ぽむとこおりが興味があると参加した程度なので期待値も低かった。
バカップルも満足している。
しかし、隣の青年はなんとも浮かない顔をして成果の鉱石を眺めていた。
「どうしたんですか?」
ノアは何となく声をかけてみた。
青年の名前はクライスといい、鉱山都市『シャマラカ』で生まれ育った。
父親が鉱夫でクライスもその道を用意されていたが、それを無視して別の道を目指すことにしたのだ。
鉱石加工職人への道は鉱夫以上に倍率が高い。
鉱夫はどうしても力仕事の部分があるため男性が多い。
それに比べて鉱石職人は女性の職人も少なくない。
むしろ、女性の方が美的センスがあり人気が出る加工を施すことがある。
クライスはそんな険しい道でライバルたちに差をつけられていた。
それに追い討ちをかけるようにとある事件が起きる。
弟子入りしている工房の鉱石が盗まれたのだ。
数の少なくなった鉱石はライバルには渡されるが、クライスには一切回ってこなくなった。
犯人は未だに見つかっていない。
仕方なく自分で加工する鉱石を採掘することになったが、経験もないし、体力にも自信のなかったクライスは観光採掘に参加したが、結果はご覧の有り様。
クライスからすればゴミ同然のような鉱石しか取れていない。
当然といえば当然なのだが現実を見せられては落ち込むしかなかった。
「犯人は見つからないのか?」
「分からないです。冒険者ギルドにも依頼して探してもらってるらしいですが、難航しているらしいです」
警備の厳重な鉱石を盗めるのかと不思議に思われたが、警備の薄いそこそこの鉱石が狙われた。
シャマラカでもいくつかの工房が被害にあっていて厳重態勢だった。
「父親を頼るのはどうだ?」
「難しいですね。ほとんど家出のような形なので今更頼るのは……」
そうでもなければ、わざわざ効率の悪い観光採掘などはしないだろう。
「気にしないでください。話を聞いてもらっただけでもなんだか気持ちが楽になりました」
そういってクライスは去っていった。
少し気にはなっていても家庭の事情に首を突っ込むのもお門違いだろうとノアは自分たちの用事を済ませにいく。
工房に入ると様々な色の加工された鉱石が置いてある。
しかし、どれもが一次加工でここから鍛治師によってアイテムへと変わっていく。
ノアの求めているアイテムはなかった。
その後もいくつかの工房を回って手に入れたのが数個のアイテム。
それでも全く納得はいっていない。
赤の鉱石は爆発鉱石。
投げて相手を爆破することができるが、この鉱石はかなり威力が低い。
使い捨ての上に威力が低く、その割に値段は高い。
これなら下手な魔法使いの魔法の方が有用だし、あまりにもコスパが悪すぎる。
何人かの職人に聞いたところそんな狂った仕事をしている人はいないらしい。
ノアはβテストで割と活用していたアイテムだが、そういえば作っていたのは1人の錬金術師だけで、よくよく思い出せばたしかに狂っていた。
彼女は正真正銘の爆弾狂なのだ。
研究によってできるアイテムはどれも爆発する。
しょっちゅう街で爆破事件を起こしていて、とうとう国から指名手配がかかるほどには狂っていた。
残念ながら彼女は王国を選択したと噂だったし、さらに今回は錬金術師ではなく、鍛治師を選択していた。
彼女はどこにいても事件を起こすのでそれなりに噂が広がるというわけだ。
そんなわけで彼女に頼ることは難しい。
せっかく来たというのに完全なる無駄足だったのかもしれない。
仕方なく冒険者ギルドで仕事でも軽くこなして、帝都へ帰ろうかと思っていたところ、ギルドが慌ただしくなる。
「南のB区画で大爆発が起こったらしいぞ」
「鉱夫数十人が生き埋めになってる可能性がある。すぐに人を集めろ!!」
「あの辺はオールの住処があったはずだ。地上に出てくるぞ」
オールは130センチほどの二足歩行のモグラ型モンスター。
鋭い爪が特徴でその爪を使って穴を掘って地底に暮らしている。
鉱山付近に巣があり鉱石が必要なのだ。
爪を鉱石で研ぐことによって、爪の硬度が上がり、色が変化する。
より質の高い鉱石を求めて鉱山付近に住んでいるのだが、オールは獰猛で人間を襲う。
どれほどの鉱夫がその爪で引き裂かれたか分からない。
熟練の魔法使いが土の魔法でトンネルを固めオールが人の領域に入ってこれないようにしていたが、それが大爆発で崩れたのだ。
「メェ!!」
「くま!!」
ノアはぽむとこおりに号令をかけて採掘を始めたが、最初は張り切っていたぽむとこおりは地味な採掘作業にの飽きてしまって、いまでは洞窟内を追いかけっこしていた。
「ダメだよ、他の人の邪魔になるから」
ノアは注意するもののバカップルはイチャイチャして作業をほとんどしておらず、もう1人の青年も体力がないのかへばって座り込んでいる。
「ガハハハ、まぁそんなもんだろうよ。少し早いが切り上げてもいいぞい」
班員たちはお互いの顔を見てガイエンの提案に乗った。
早くは切り上げたものの3人での作業だったので、ノアとしては悪くはない成果であった。
元々、ぽむとこおりが興味があると参加した程度なので期待値も低かった。
バカップルも満足している。
しかし、隣の青年はなんとも浮かない顔をして成果の鉱石を眺めていた。
「どうしたんですか?」
ノアは何となく声をかけてみた。
青年の名前はクライスといい、鉱山都市『シャマラカ』で生まれ育った。
父親が鉱夫でクライスもその道を用意されていたが、それを無視して別の道を目指すことにしたのだ。
鉱石加工職人への道は鉱夫以上に倍率が高い。
鉱夫はどうしても力仕事の部分があるため男性が多い。
それに比べて鉱石職人は女性の職人も少なくない。
むしろ、女性の方が美的センスがあり人気が出る加工を施すことがある。
クライスはそんな険しい道でライバルたちに差をつけられていた。
それに追い討ちをかけるようにとある事件が起きる。
弟子入りしている工房の鉱石が盗まれたのだ。
数の少なくなった鉱石はライバルには渡されるが、クライスには一切回ってこなくなった。
犯人は未だに見つかっていない。
仕方なく自分で加工する鉱石を採掘することになったが、経験もないし、体力にも自信のなかったクライスは観光採掘に参加したが、結果はご覧の有り様。
クライスからすればゴミ同然のような鉱石しか取れていない。
当然といえば当然なのだが現実を見せられては落ち込むしかなかった。
「犯人は見つからないのか?」
「分からないです。冒険者ギルドにも依頼して探してもらってるらしいですが、難航しているらしいです」
警備の厳重な鉱石を盗めるのかと不思議に思われたが、警備の薄いそこそこの鉱石が狙われた。
シャマラカでもいくつかの工房が被害にあっていて厳重態勢だった。
「父親を頼るのはどうだ?」
「難しいですね。ほとんど家出のような形なので今更頼るのは……」
そうでもなければ、わざわざ効率の悪い観光採掘などはしないだろう。
「気にしないでください。話を聞いてもらっただけでもなんだか気持ちが楽になりました」
そういってクライスは去っていった。
少し気にはなっていても家庭の事情に首を突っ込むのもお門違いだろうとノアは自分たちの用事を済ませにいく。
工房に入ると様々な色の加工された鉱石が置いてある。
しかし、どれもが一次加工でここから鍛治師によってアイテムへと変わっていく。
ノアの求めているアイテムはなかった。
その後もいくつかの工房を回って手に入れたのが数個のアイテム。
それでも全く納得はいっていない。
赤の鉱石は爆発鉱石。
投げて相手を爆破することができるが、この鉱石はかなり威力が低い。
使い捨ての上に威力が低く、その割に値段は高い。
これなら下手な魔法使いの魔法の方が有用だし、あまりにもコスパが悪すぎる。
何人かの職人に聞いたところそんな狂った仕事をしている人はいないらしい。
ノアはβテストで割と活用していたアイテムだが、そういえば作っていたのは1人の錬金術師だけで、よくよく思い出せばたしかに狂っていた。
彼女は正真正銘の爆弾狂なのだ。
研究によってできるアイテムはどれも爆発する。
しょっちゅう街で爆破事件を起こしていて、とうとう国から指名手配がかかるほどには狂っていた。
残念ながら彼女は王国を選択したと噂だったし、さらに今回は錬金術師ではなく、鍛治師を選択していた。
彼女はどこにいても事件を起こすのでそれなりに噂が広がるというわけだ。
そんなわけで彼女に頼ることは難しい。
せっかく来たというのに完全なる無駄足だったのかもしれない。
仕方なく冒険者ギルドで仕事でも軽くこなして、帝都へ帰ろうかと思っていたところ、ギルドが慌ただしくなる。
「南のB区画で大爆発が起こったらしいぞ」
「鉱夫数十人が生き埋めになってる可能性がある。すぐに人を集めろ!!」
「あの辺はオールの住処があったはずだ。地上に出てくるぞ」
オールは130センチほどの二足歩行のモグラ型モンスター。
鋭い爪が特徴でその爪を使って穴を掘って地底に暮らしている。
鉱山付近に巣があり鉱石が必要なのだ。
爪を鉱石で研ぐことによって、爪の硬度が上がり、色が変化する。
より質の高い鉱石を求めて鉱山付近に住んでいるのだが、オールは獰猛で人間を襲う。
どれほどの鉱夫がその爪で引き裂かれたか分からない。
熟練の魔法使いが土の魔法でトンネルを固めオールが人の領域に入ってこれないようにしていたが、それが大爆発で崩れたのだ。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
虚界生物図録
nekojita
SF
序論
1. 虚界生物
界は、生物学においてドメインに次いで2番目に高い分類階級である。古典的な生物学ではすべての生物が六界(動物界、植物界、菌界、原生生物界、古細菌界、細菌/真正細菌)に分類される。しかしこれらの「界」に当てはまらない生物も、我々の知覚の外縁でひそかに息づいている。彼らは既存の進化の法則や生態系に従わない。あるものは時間を歪め、あるものは空間を弄び、あるものは因果の流れすら変えてしまう。
こうした異質な生物群は、「界」による分類を受け付けない生物として「虚界生物」と名付けられた。
虚界生物の姿は、地球上の動植物に似ていることもあれば、夢の中の幻影のように変幻自在であることもある。彼らの生態は我々の理解を超越し、認識を変容させる。目撃者の証言には概して矛盾が多く、科学的手法による解析が困難な場合も少なくない。これらの生物は太古の伝承や神話、芸術作品、禁断の書物の中に断片的に記され、伝統的な科学的分析の対象とはされてこなかった。しかしながら各地での記録や報告を統合し、一定の体系に基づいて分析を行うことで、現代では虚界生物の特性をある程度明らかにすることが可能となってきた。
本図録は、こうした神秘的な存在に関する情報、観察、諸記録、諸仮説を可能な限り収集、整理することで、未知の領域へと踏み出すための道標となることを目的とする。
2. 研究の意義と目的
本図録は、初学者にも分かりやすく、虚界生物の不思議と謎をひも解くことを目的としている。それぞれの記録には、観察された異常現象や生態、目撃談、さらには学術的仮説までを網羅する。
各項は独立しており、前後の項目と直接の関連性はない。読者は必要な、あるいは興味のある項目だけを読むことができる。
いくつかの虚界生物は、人間社会に直接的、あるいは間接的に影響を及ぼしている。南極上空に黄金の巣を築いた帝天蜂は、巣の内部で異常に発達した知性と生産性を持つ群体を形成している。この巣の研究は人類の生産システムに革新をもたらす可能性がある。
カー・ゾン・コーに代表される、人間社会に密接に関与する虚界生物や、逆に復讐珊瑚のように、接触を避けるべき危険な存在も確認されている。
一方で、一部の虚界生物は時空や因果そのものを真っ向から撹乱する。逆行虫やテンノヒカリは、我々の時間概念に重大な示唆を与える。
これらの異常な生物を研究することは単にその生物への対処方法を確立するのみならず、諸々の根源的な問いに新たな視点を与える。本図録が、虚界生物の研究に携わる者、または未知の存在に興味を持つ者にとっての一助となることを願う。
※※図や文章の一部はAIを用いて作成されている。
※※すべての内容はフィクションであり、実在の生命、科学、人物、出来事、団体、書籍とは関係ありません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる