23 / 32
23話 ひつじとしろくまの連携
しおりを挟む
「くまくま……」
トロールのとどめの一撃をなんとか躱して距離を取るものの、先ほどまでのような動きはもうできない。
ここからはじわじわとなぶり殺される。
否、作戦通りだ。
ゴブリントロールは実力的に格上の存在。
いくらこちらが3人でも単純にぶつかれば勝つことは難しい。
勝つためには作戦がいる。
そして罠を張らなければいけない。
地面はトロールが攻撃してあちらこちらが陥没してひび割れている。
こおりはリーゼントをちょんちょんと整えて挑発する。
トロールの最大火力は跳躍から両拳の振り下ろし。
自分よりも格下でボロボロの存在に挑発されて作戦通りの行動に移った。
それを見てこおりは地面をバットで思い切り叩いて、その場を離脱。
飛んできたトロールがそこに着地した瞬間に地面が大きく崩れてトロールの足が埋まる。
抜こうと必死になっているが踏ん張りの効かない態勢では簡単に抜け出せるものではない。
ぽむはそれを見て出来る限り小さく圧縮した深淵業火をこおり目掛けて放った。
そしてすぐに次の深淵業火の準備をする。
こおりは向かってくる業火をバットでトロールの方へ打ち返す。
「グガァ、グガァァァァ」
トロールは怒り狂ったように脱出を試みるが、その度により深くハマっていく。
こおりの打ち返した業火とぽむの放った二発目の業火がトロールに同時に着弾して大きな火柱を上げる。
黒き炎は螺旋を描いて高々と燃え盛る。
驚くべきはゴブリントロールの耐久力だろう。
森を半分焼失させるほどの火力を受け続けてもまだ生きている。
しかし、暴れる力は徐々に弱まっていく。
3人はその様子を静かに見守ることしかできない。
ノアはここで倒せなければ逃げることを決めていた。
いくらポーションでMPやHPを回復しても集中力がなければ戦闘はできない。
その点で言えばもはやぽむもこおりも限界以上の力を発揮してくれていた。
炎が弱まってきて全身黒焦げのトロールの姿が現れる。
それでも未だに立って動こうとしていた。
「グガ……」
腕を動かせば方から崩れて灰になる。
足を動かせば腰から下が崩れる。
下半身を失った上半身は地面に落ちる。
両腕がないので受け身を取ることもできない。
仮に取ることができたとしてもどうしようもなかっただろうが。
地面に落ちた衝撃で亀裂が顔まで伸びてゴブリントロールは命の火を消した。
「よっしゃぁぁぁ」
ノアはガッツポーズをとった。
強敵との戦闘を勝利することができた。
ただの勝利ではなく今後につながる大事な勝利である。
ぽむとこおりの成長に連携も見ることができた。
「くまくま……」
「メェェ……」
ぽむとこおりは緊張の糸が切れたようでその場でへたり込む。
しかし、休んでいる暇はなかった。
ゴブリンの丘は帝都近くと違ってセーフティゾーンがない。
ここでゆっくりしていればまたゴブリンが湧いてきて戦うハメになってしまう。
安全圏まで帰るのが重要なのである。
ルキファナスの世界には最後まで油断するなという物語がある。
勇者が悪しきドラゴンを激闘の末討伐したが、その帰り道にゴブリンに負けてしまうという物語だ。
地域によってこのゴブリンの部分がスライムだったり、スケルトンだったりと、弱いモンスターに変わったりしているが意味合いとしては同じだ。
「さぁ、帰るぞ。今日はお祝いだな!!」
「メェ!!」
「くま!!」
ぽむとこおりはすぐに立ち上がって帝都へ向かって歩き出した。
§
帝都ではチャコルルファミリーの内部抗争が激化していた。
「おい、テメェら人数を集めやがれ。強引だろうと親父を殺しにいくぞ」
「うすっ!!」
チャコルル・キリロフスは組員を集めて父の入院する病院へ殴り込みをかけようとしていた。
「なんて愚かなことを……堅気の方に迷惑をかけるなんて」
「ふん、マフィアが人助けしてどうなるというんですか? あなたは大人しくここにいればいいんですよ」
母親を奥の部屋に閉じ込める。
母であるチャコルル・ミザリーを生かしているのには意味があった。
ミザリーは元々、クレナドファミリーという武闘派マフィアの一人娘だった。
ボチャロフスと結婚をしてクレナドはチャコルルの傘下に入ったのだ。
その武力は帝国も恐れるほどのもので、今でもクレナドファミリー発言権は強い。
クレナドファミリーの特徴としてはミザリーを第一に考えている。
それもそのはずでミザリーこそがクレナドのボスなのだから。
今はボチャロフスの妻としてクレナドの若頭であるカッツェオに実権を譲って大人しくしているが、カッツェオとしては自分がクレナドのボスになろうとは思ってもいない。
ミザリーが人質にとられてはキリロフスの命令を聞くしかなかった。
これがキリロフスがミザリーを軟禁している理由だ。
クレナドファミリーの力がなければ一瞬で潰されるほどに力の差がある。
しかし、ここを上手く乗り切ればチャコルルファミリーの本家筋、クレナドファミリーは互いに削りあって漁夫の利で自分が帝国の裏を牛耳れると考えていた。
様々な思惑が交錯する中、帝都は混乱に陥ることになる。
トロールのとどめの一撃をなんとか躱して距離を取るものの、先ほどまでのような動きはもうできない。
ここからはじわじわとなぶり殺される。
否、作戦通りだ。
ゴブリントロールは実力的に格上の存在。
いくらこちらが3人でも単純にぶつかれば勝つことは難しい。
勝つためには作戦がいる。
そして罠を張らなければいけない。
地面はトロールが攻撃してあちらこちらが陥没してひび割れている。
こおりはリーゼントをちょんちょんと整えて挑発する。
トロールの最大火力は跳躍から両拳の振り下ろし。
自分よりも格下でボロボロの存在に挑発されて作戦通りの行動に移った。
それを見てこおりは地面をバットで思い切り叩いて、その場を離脱。
飛んできたトロールがそこに着地した瞬間に地面が大きく崩れてトロールの足が埋まる。
抜こうと必死になっているが踏ん張りの効かない態勢では簡単に抜け出せるものではない。
ぽむはそれを見て出来る限り小さく圧縮した深淵業火をこおり目掛けて放った。
そしてすぐに次の深淵業火の準備をする。
こおりは向かってくる業火をバットでトロールの方へ打ち返す。
「グガァ、グガァァァァ」
トロールは怒り狂ったように脱出を試みるが、その度により深くハマっていく。
こおりの打ち返した業火とぽむの放った二発目の業火がトロールに同時に着弾して大きな火柱を上げる。
黒き炎は螺旋を描いて高々と燃え盛る。
驚くべきはゴブリントロールの耐久力だろう。
森を半分焼失させるほどの火力を受け続けてもまだ生きている。
しかし、暴れる力は徐々に弱まっていく。
3人はその様子を静かに見守ることしかできない。
ノアはここで倒せなければ逃げることを決めていた。
いくらポーションでMPやHPを回復しても集中力がなければ戦闘はできない。
その点で言えばもはやぽむもこおりも限界以上の力を発揮してくれていた。
炎が弱まってきて全身黒焦げのトロールの姿が現れる。
それでも未だに立って動こうとしていた。
「グガ……」
腕を動かせば方から崩れて灰になる。
足を動かせば腰から下が崩れる。
下半身を失った上半身は地面に落ちる。
両腕がないので受け身を取ることもできない。
仮に取ることができたとしてもどうしようもなかっただろうが。
地面に落ちた衝撃で亀裂が顔まで伸びてゴブリントロールは命の火を消した。
「よっしゃぁぁぁ」
ノアはガッツポーズをとった。
強敵との戦闘を勝利することができた。
ただの勝利ではなく今後につながる大事な勝利である。
ぽむとこおりの成長に連携も見ることができた。
「くまくま……」
「メェェ……」
ぽむとこおりは緊張の糸が切れたようでその場でへたり込む。
しかし、休んでいる暇はなかった。
ゴブリンの丘は帝都近くと違ってセーフティゾーンがない。
ここでゆっくりしていればまたゴブリンが湧いてきて戦うハメになってしまう。
安全圏まで帰るのが重要なのである。
ルキファナスの世界には最後まで油断するなという物語がある。
勇者が悪しきドラゴンを激闘の末討伐したが、その帰り道にゴブリンに負けてしまうという物語だ。
地域によってこのゴブリンの部分がスライムだったり、スケルトンだったりと、弱いモンスターに変わったりしているが意味合いとしては同じだ。
「さぁ、帰るぞ。今日はお祝いだな!!」
「メェ!!」
「くま!!」
ぽむとこおりはすぐに立ち上がって帝都へ向かって歩き出した。
§
帝都ではチャコルルファミリーの内部抗争が激化していた。
「おい、テメェら人数を集めやがれ。強引だろうと親父を殺しにいくぞ」
「うすっ!!」
チャコルル・キリロフスは組員を集めて父の入院する病院へ殴り込みをかけようとしていた。
「なんて愚かなことを……堅気の方に迷惑をかけるなんて」
「ふん、マフィアが人助けしてどうなるというんですか? あなたは大人しくここにいればいいんですよ」
母親を奥の部屋に閉じ込める。
母であるチャコルル・ミザリーを生かしているのには意味があった。
ミザリーは元々、クレナドファミリーという武闘派マフィアの一人娘だった。
ボチャロフスと結婚をしてクレナドはチャコルルの傘下に入ったのだ。
その武力は帝国も恐れるほどのもので、今でもクレナドファミリー発言権は強い。
クレナドファミリーの特徴としてはミザリーを第一に考えている。
それもそのはずでミザリーこそがクレナドのボスなのだから。
今はボチャロフスの妻としてクレナドの若頭であるカッツェオに実権を譲って大人しくしているが、カッツェオとしては自分がクレナドのボスになろうとは思ってもいない。
ミザリーが人質にとられてはキリロフスの命令を聞くしかなかった。
これがキリロフスがミザリーを軟禁している理由だ。
クレナドファミリーの力がなければ一瞬で潰されるほどに力の差がある。
しかし、ここを上手く乗り切ればチャコルルファミリーの本家筋、クレナドファミリーは互いに削りあって漁夫の利で自分が帝国の裏を牛耳れると考えていた。
様々な思惑が交錯する中、帝都は混乱に陥ることになる。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
歴史改変戦記 「信長、中国を攻めるってよ」
高木一優
SF
タイムマシンによる時間航行が実現した近未来、大国の首脳陣は自国に都合の良い歴史を作り出すことに熱中し始めた。歴史学者である私の書いた論文は韓国や中国で叩かれ、反日デモが起る。豊臣秀吉が大陸に侵攻し中華帝国を制圧するという内容だ。学会を追われた私に中国の女性エージェントが接触し、中国政府が私の論文を題材として歴史介入を行うことを告げた。中国共産党は織田信長に中国の侵略を命じた。信長は朝鮮半島を蹂躙し中国本土に攻め入る。それは中華文明を西洋文明に対抗させるための戦略であった。
もうひとつの歴史を作り出すという思考実験を通じて、日本とは、中国とは、アジアとは何かを考えるポリティカルSF歴史コメディー。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~
夜夢
ファンタジー
剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。
盗賊が村を襲うまでは…。
成長したある日、狩りに出掛けた森で不思議な子供と出会った。助けてあげると、不思議な子供からこれまた不思議な力を貰った。
不思議な力を貰った主人公は、両親と親友を救う旅に出ることにした。
王道ファンタジー物語。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる