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21話 しろくまは目覚める
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「さぁさぁどうぞ」
ロザリーアは我が家のように無法者専門店の奥の部屋でノアたちに紅茶を振るまう。
「ありがとう。なんだか意外だな」
ノアはロザリーアがカタギではないのに気付いているし、権力者の娘なのも分かっている。
そんな彼女が紅茶をの入れ方を知っているのが意外だった。
「私は……というよりも、チャコルルファミリーは意外と庶民的なんですよ。兄のような者が裏の人間としては普通ですね」
権力を振りかざし、そのために権力を手に入れようと奔走する。
そのなりふり構わない姿がロザリーアには滑稽に映っていた。
まさか実の父親を殺そうとし、母親を軟禁するなど考えられない。
「ところで気になっていたんですけど、そちらの方を紹介していただいても」
「新しく仲間になったしろくまのこおりだ」
「まぁ、こおり様というんですね。よろしくお願いします」
「くまくま」
こおりは照れながら握手を交わす。
「実はこおりの職業が無法者で装備を探してたんだよ」
「そうだったんですね。私に任せてください」
「いいのか?」
「もちろんです!! チャコルル・ロザリーアの名にかけて必ずご希望の品を用意します」
「悪いけどよろしく頼むよ」
「その代わりと言ってはなんですが……」
「もちろん代金は払うぞ」
アーミーアントクイーンの卵が売れたことで懐は温かい。
「その……ぽむ様とこおり様の写真を撮ってもいいですか?」
「そんなことなら別に構わないけど」
「やったーーー」
ロザリーアの雰囲気が年相応の少女に変わる。
写真を撮って、こおりにどんな装備がいいか希望を聞く。
やはりというべきか、こおりはタツの画像を見せて白の特攻服を指差す。
「任せてください!!」
「くまくま」
「じゃあよろしくお願いします」
(こおりの装備をロザリーアに任せれたのはよかったな。無法者専門店はここ以外にもあるけど、どこも似たり寄ったりであまり関わりたいとは思わないからな)
翌日にはロザリーアから連絡があってこおりはご希望の特攻服に袖を通す。
背中には黒文字で死露苦魔の刺繍が入っている。
これもこおりがオーダーした通りだ。
素手で戦うのかと思っていたが武器として金属バットを握る。
そして、少し控えめなリーゼント。
こおりの毛はもふもふだが長さ自体はないので、頭にちょこんと乗っかったような形になっている。
不良しろくまの完成である。
「くまくまーーー!!」
「良かったな、こおり」
(本人が喜んでるんだしいいか」
「メェメェ」
ぽむはこおりの姿を見て拍手を送る。
「こおり、ロザリーアに感謝するんだよ」
「くまくま」
それを聞いてこおりは頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ眼福です……また、何かあればすぐに連絡をくだされば駆けつけます」
「本当にありがとう」
§
ゴブリンの丘で多くの女性の悲鳴が響く。
悲鳴を上げる女性の視線の先で特攻服を着たしろくまがゴブリンと戦っているのだ。
「くまくまーーー!!」
こおりがゴブリンに向かって走っていく。
ゴブリンは棍棒を振りかぶった。
今までなら目をつぶって避けるところを左腕で棍棒を防いで、右拳をゴブリンの顔面に叩き込んで一撃KOを収めた。
服装が変わっただけで自信に満ち溢れるこおり。
素手で敵を蹂躙するその戦いぶりはタツを模倣していた。
「おぉ、凄いぞこおり」
(バットは使わないんだな)
背中に背負ったバットはまだ一度も使っていない。
タツの魔法なら使うことはないんだがそれなら持っている必要がない。
(ゴブリン相手には必要ないってことなのかな)
その地で他のモンスターと比べると一際強力なモンスターが生まれることがある。
通常のモンスターが経験値を得て進化することによってボスモンスターとなる。
ゴブリンの丘にもボスモンスターが誕生していた。
「こおり!!」
2メートルを超える巨体から繰り出される拳をこおりは避けた。
拳は地面を大きく陥没させる。
通常のゴブリンとはかけ離れた姿をしているそいつは横にも縦にも大きい。
緑色の体の所々から草木が生えている。
「ゴブリントロールか……」
ゴブリントロールはゴブリンが進化したもので、攻撃力と耐久力が高い代わりに動きは遅い。
厄介なのはゴブリンが群れで行動するということ。
一体ならなんとでもなっても他のゴブリンの相手もしなければいけない。
その群は五体のゴブリンで構成されていた。
ボスのゴブリントロール、素手のゴブリン、盾を持ったゴブリン、棍棒を持ったゴブリン、そして杖を持ったゴブリンメイジ。
群の中にゴブリンメイジがいたことにより危険度が上がる。
ゴブリンメイジは魔法を使う後衛。
遠距離攻撃の有無で戦い方はかなり変わる。
ゴブリントロールと二体のゴブリンを前衛にしてプレッシャーをかけつつ、ゴブリンメイジが相手を崩す。
ゴブリンメイジの前に盾を持ったゴブリンが構えている。
ゴブリンメイジは魔法を発動して炎の玉をノアたちに放った。
ロザリーアは我が家のように無法者専門店の奥の部屋でノアたちに紅茶を振るまう。
「ありがとう。なんだか意外だな」
ノアはロザリーアがカタギではないのに気付いているし、権力者の娘なのも分かっている。
そんな彼女が紅茶をの入れ方を知っているのが意外だった。
「私は……というよりも、チャコルルファミリーは意外と庶民的なんですよ。兄のような者が裏の人間としては普通ですね」
権力を振りかざし、そのために権力を手に入れようと奔走する。
そのなりふり構わない姿がロザリーアには滑稽に映っていた。
まさか実の父親を殺そうとし、母親を軟禁するなど考えられない。
「ところで気になっていたんですけど、そちらの方を紹介していただいても」
「新しく仲間になったしろくまのこおりだ」
「まぁ、こおり様というんですね。よろしくお願いします」
「くまくま」
こおりは照れながら握手を交わす。
「実はこおりの職業が無法者で装備を探してたんだよ」
「そうだったんですね。私に任せてください」
「いいのか?」
「もちろんです!! チャコルル・ロザリーアの名にかけて必ずご希望の品を用意します」
「悪いけどよろしく頼むよ」
「その代わりと言ってはなんですが……」
「もちろん代金は払うぞ」
アーミーアントクイーンの卵が売れたことで懐は温かい。
「その……ぽむ様とこおり様の写真を撮ってもいいですか?」
「そんなことなら別に構わないけど」
「やったーーー」
ロザリーアの雰囲気が年相応の少女に変わる。
写真を撮って、こおりにどんな装備がいいか希望を聞く。
やはりというべきか、こおりはタツの画像を見せて白の特攻服を指差す。
「任せてください!!」
「くまくま」
「じゃあよろしくお願いします」
(こおりの装備をロザリーアに任せれたのはよかったな。無法者専門店はここ以外にもあるけど、どこも似たり寄ったりであまり関わりたいとは思わないからな)
翌日にはロザリーアから連絡があってこおりはご希望の特攻服に袖を通す。
背中には黒文字で死露苦魔の刺繍が入っている。
これもこおりがオーダーした通りだ。
素手で戦うのかと思っていたが武器として金属バットを握る。
そして、少し控えめなリーゼント。
こおりの毛はもふもふだが長さ自体はないので、頭にちょこんと乗っかったような形になっている。
不良しろくまの完成である。
「くまくまーーー!!」
「良かったな、こおり」
(本人が喜んでるんだしいいか」
「メェメェ」
ぽむはこおりの姿を見て拍手を送る。
「こおり、ロザリーアに感謝するんだよ」
「くまくま」
それを聞いてこおりは頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ眼福です……また、何かあればすぐに連絡をくだされば駆けつけます」
「本当にありがとう」
§
ゴブリンの丘で多くの女性の悲鳴が響く。
悲鳴を上げる女性の視線の先で特攻服を着たしろくまがゴブリンと戦っているのだ。
「くまくまーーー!!」
こおりがゴブリンに向かって走っていく。
ゴブリンは棍棒を振りかぶった。
今までなら目をつぶって避けるところを左腕で棍棒を防いで、右拳をゴブリンの顔面に叩き込んで一撃KOを収めた。
服装が変わっただけで自信に満ち溢れるこおり。
素手で敵を蹂躙するその戦いぶりはタツを模倣していた。
「おぉ、凄いぞこおり」
(バットは使わないんだな)
背中に背負ったバットはまだ一度も使っていない。
タツの魔法なら使うことはないんだがそれなら持っている必要がない。
(ゴブリン相手には必要ないってことなのかな)
その地で他のモンスターと比べると一際強力なモンスターが生まれることがある。
通常のモンスターが経験値を得て進化することによってボスモンスターとなる。
ゴブリンの丘にもボスモンスターが誕生していた。
「こおり!!」
2メートルを超える巨体から繰り出される拳をこおりは避けた。
拳は地面を大きく陥没させる。
通常のゴブリンとはかけ離れた姿をしているそいつは横にも縦にも大きい。
緑色の体の所々から草木が生えている。
「ゴブリントロールか……」
ゴブリントロールはゴブリンが進化したもので、攻撃力と耐久力が高い代わりに動きは遅い。
厄介なのはゴブリンが群れで行動するということ。
一体ならなんとでもなっても他のゴブリンの相手もしなければいけない。
その群は五体のゴブリンで構成されていた。
ボスのゴブリントロール、素手のゴブリン、盾を持ったゴブリン、棍棒を持ったゴブリン、そして杖を持ったゴブリンメイジ。
群の中にゴブリンメイジがいたことにより危険度が上がる。
ゴブリンメイジは魔法を使う後衛。
遠距離攻撃の有無で戦い方はかなり変わる。
ゴブリントロールと二体のゴブリンを前衛にしてプレッシャーをかけつつ、ゴブリンメイジが相手を崩す。
ゴブリンメイジの前に盾を持ったゴブリンが構えている。
ゴブリンメイジは魔法を発動して炎の玉をノアたちに放った。
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