そこにはきっと、 がいた

序章

彼ノ物、何処ヘト

 ｢いつどこになるかは分からないけど、きっとまた…｣

    白く薄い布の隙間から、およそ白とは言えない淡い橙の光が差し掛かる。星々は焼き尽くされ、空は真っ赤に染まった。その光景は、戯曲の世界(とはいっても、二組のカップルも、妖精もいなかったが)より醒めたばかりの私にとっては眩しすぎて、思わず腕で瞳を覆った。
｢まぁ、もう高校二年生だし、さすがにね。｣
    小学校の制服を来て実家付近を自転車で漕いでいた先程までの自分は夢の中の住人であったことを確認した後、今度は現実の自分の身の回りの確認へ移った。布団の上には、三年間大事に使ってきたおかげで未だにヒビの一つもないスマホと片っぽだけのワイヤレスイヤホン、読みかけの文庫本が置かれていた。
｢まじか、音楽聴きながら寝落ちしちゃってたのか…。絶対耳やられたし、最悪。｣
    もう片っぽのイヤホンを耳から外し、机の上を見ると参考書やら雑誌やらノートやらが踊り狂っていた。そう表現出来てしまうほどに躍動感溢れる散らかし様だった。｢地獄絵図｣っていう作品名で万博出せるんじゃないだろうか。何だかこれを片付けるのは勿体ない気がしてきた(掃除したくないだけである)。