みち

篁 しいら

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私が道を歩いていると、ある看板が目に入ってきた。
足を止め、上から下まで読んだ後に再度上に視点を戻して読み上げた。

「『第7回ライト文学大賞』、ねぇ……」

ライト文学、いずれ書いてみたいと思いつついつも内容が重すぎて、頭を抱えているジャンルだった。
そのため毎度毎度見送ってきた大賞だったが、ある一文が目に飛び込んできて立ち止まったのだ。

現代文学、OK。

「なんてこったい、私の時代来てしまったな」
キランッと謎の効果音をチラチラチラチラ周りに纏いながら、私は自分の頭の中から出しても問題なさそうな作品をピックアップして行った。


うーん、あれは短すぎる。
これは……ちょっと書き直したいからボツ。
あれは、あ、クソ、前に出してやがる。
それは……いや暗すぎんだろみんなの心がズンズンしちゃうよ。
ふーむ、……あ。


私はアルファポリスの画面を思い出し、身体を操作して確認する。
よし、これを出してみよう。 まぁ、これぐらいに完結するっしょ。
まぁ、心配なのは筆が遅いってことと。
「自分の精神が持つか、だな」
私はエントリー画面に移り、自分の作品を選ぶ。
いずれは私が向き合わなければならなかった問題を、私は作品という形で向き合う覚悟を決めていた。
「あ、けどこれ、暗くなる……よな、重くなる……よなぁ」
最近流行りの猫ミームのように頭を抱える。
「いやけど……どうせなぁ、腕も治んないから仕事辞めるし……」
暇もできるしと、ブツブツ念仏を唱えるように独り言を呟く。 


しゃーない、二つだけ決めて取り掛かろう。


私は腹を据え、身体はエントリーボタンをタップして画面を閉じる。 後はやるだけ、やってから後悔しろ。
私はトントンと頭を軽く指で叩いて目を瞑り、ゆっくり深呼吸をした。
スマホの画面が切り替わる、SNSを開いたのを確認するとさらに指を動かし作品について語った。
「あ、待て待て待てぃ」
肝心なことを忘れていた、私はほんとにせっかちだからいけないな。
私は画面に向かって笑顔を作る。 働きながら身につけた笑顔に出来るだけ丁寧に見繕った言葉、そして最低限のマナーとして学んだ敬語を携えて、祖父譲りの大声で挨拶をした。




大丈夫、ここならきっと、私の声は誰かに届くから。



「こんばんは、たかむら しいらです! 本日はお知らせがあり書いています、よろしければぜひ聞いてください!」
私は鳥が飛び立った青い空へ、高らかに大賞への参加を宣言した。











これは人生について考え過ぎた人の、過去への寄り道。
その考え過ぎた人が出した、ただ前に行く為の歩き方。



そしてこれは、自分と一緒に未知へ歩むために描く物語。






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