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名簿
しおりを挟む人が亡くなる
居なくなる度
私は思う
また、私の知ってる人が
嗚呼、世界から消えていく
置いていかれる感覚
離れられていく悲哀
痛みに耐えきれずに
私は涙を流してきた
私の中にある名簿の中の
大事な人の名前の上に
黒い線が1本横へ
入っていくのが辛いんだ
あなたの事を忘れたくない
あなたの傍を離れたくない
あなたの事を過去にして
あなたを置いて未来に行けない
そう、思っていたんだ。
知ってる人が亡くなる前に
大事な人が消える恐怖に
目を逸らそうと余所見した
私の中にある名簿に
次の頁があることに
私はたまたま目に付いた
私は頁を捲ってみた
新しい頁
何も書いてない
誰の名前もない
新しい名簿
私は想う
嗚呼、生きるということは
まだ、名前を増やせるということか
頁を戻る
1本横に入った名前を
まだ残った名前を
指でゆっくりとなぞる
書かれた名前は私が歩んだ
人生の中で出逢った大事な人達
私が確実に生きた証
例え私が忘れても
例え誰かに嫌われて
例え誰かが傷つけて
例え私が消えても
私の名簿に書かれた名前は
確かに有った私の旅路だ
ありがとう
私の頁に文字をくれて
ありがとう
私の名簿に書かれてくれて
ありがとう
私の旅路で出逢ってくれて
ありがとう
私の人生に花をくれて
私はまだ、歩み続けるよ。
新しい頁に進む
真新しい紙の匂い
名前が無い頁
ここにインクが染み込んで
鼻腔を擽る渋い香りが
私の人生を彩るのだ
こんなに心躍ることはない
別れは悲しい
亡くなるのは辛い
離れるのは苦しい
この気持ちはまだある
だから私は
私の中の名簿に
新しい名前を増やしていく
最後の頁まで行くだろうか?
最後まで書いたら死ぬだろうか?
人に別れを告げないといけないだろうか?
私の旅路は終わるのだろうか?
私がサヨナラを告げるのだろうか?
考えた時に一筋
額を涙が濡らしていく
成程、嗚呼
この世界に残されるのが怖いんじゃない
この世界に私の大事な人たちを遺して
死ぬのが嫌なんだ
私はなんて、気づくのが遅いんだ。
名簿に触れる
優しく撫でる
そして呟く
そして囁く
「 」
誰にも聞かせない
私だけの独り言
私は名簿を閉じた
まだ怖いけど
恐れるのはやめよう
まだ苦しいけど
歩み続けよう
人が亡くなる事も
人に出逢う事も
私の旅路であり
私の人生なんだ
名簿に書く名前を探そう
ゆっくりでいい
少しずつでいい
出来れば名簿に書く名前は
優しくて
穏やかで
安らげる
そんな人の名前がいい
さぁ、名簿に名前を増やしに行こう
この人生を歩むため
さぁ、名簿に名前を増やしに行こう
この旅路を進むため
私が何れ、この世界を去る時に
私の歩んだみちの後ろに
可憐で美麗で
見た人が少し笑顔になれる
白い花が沢山咲き誇る
生き様が出来ますように。
〆
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