19 / 26
缶箱
しおりを挟む小さな頃に 大人から貰った
綺麗な柄の お菓子の缶箱
空のままだと 軽すぎて
叩くとカンカン 音が出る
思い付いたように 引き出しを開けて
宝物を詰めてみた 今の自分の宝物
鉛筆 消しゴム 可愛い付録
友達からの プレゼント
ノート 花びら 美麗な栞
家族と行った 旅行の地図
ドンドン箱は 重くなり
叩くとコンコン 音が出る
素敵な柄の お菓子の缶箱
小さな自分の 宝箱
最後は何を入れようか
最後に何を入れようか
少し息を吐きながら
少し頭をひねらせて
頭に電球 閃いて
鉛筆 消しゴム ノートの切れ端
可愛い付録に付いていた
可愛いシールを取り出して
大きな文字で 書いてみる
大きな自分へ お手紙を
『げんきですか わたしはげんきです』
『わたしは今 しあわせですか』
『わたしは今 しあわせだよ』
『たくさん人を しあわせにしてますか』
『わたしはたくさん しあわせです』
『友だちは いますか』
『わたしは あんまりいないけど』
『みんなが 大好きです』
『てがみを見たら おへんじ ください』
『じぶんより』
メモを畳んで シールを曲げて
貼り付け 簡単 小さなお手紙
一番下に 入れ込んで
蓋を閉めたよ 宝箱
誰も知らない 見もしない
暗い所に 駆け寄って
置いてみたよ 宝箱
大事なものを詰め込んだ
自分だけの 宝箱
大人になった自分が 見つけた
少しだけ錆びた 重い缶箱
コンコンと詰まった 音がして
赤錆で汚した 両手で開く
小さな自分の 宝箱
想い出詰まった 宝物
探して泣いた 鉛筆に
無くしたと騒いだ 消しゴムに
去った友の プレゼント
買い直したノートに 忘れてた栞
自分の色を亡くした 花びら
家族と行った旅行の記憶は
地図を見たとて分からない
こんなものを何故 遺したんだと
訝しみながら 底に触れ
最後に見つけた ノートの切れ端
ペタベタになった シールの封
剥がして 中を覗き込む
そこに書かれた 大きな文字と
拙い言葉で 思い出す
小さな自分の 優しさと
小さな自分の 願い事
自分が好きな人も
自分が嫌いな人も
みんな笑顔で 幸せで
自分も幸せに なりますように
頬を伝う 涙が最後の
自分の願いに 落ちていく
『てがみを見たら おへんじ ください』
会話が好きな 小さな自分へ
大きな自分が 返事を繋ごう
『あなたは元気ですか?』
『私は少し 病気です』
『ただ 私はあなたなので』
『へこたれずに 生きています』
『あなたの友は 元気ですか?』
『私に友は 余りいませんが』
『親友もいるし 友を増やすため』
『色んな場所へ 顔を出しています』
『あなたが思う大好きは』
『今の私には あまりに劇物で』
『全ての人を大好きにはなれないけど』
『今は頑張って 目の前の人は』
『好きになるために 修行中です』
『あなたが願った幸せは』
『あなたの手にある幸せは』
『今の私に届きました』
『遺してくれて ありがとう』
『私はあなたの優しさと』
『あなたが残した思い出で』
『また幸せに 手を伸ばしています』
『まだ頭が恐怖で怯えて まだ足が竦んで』
『また手を伸ばしたら 消えてしまうのではと』
『記憶が邪魔をしてるけど』
『小さい笑顔を 増やすため』
『小さな幸せを 増やすため』
『私の幸せを 叶えるために』
『私の笑顔を 雰囲気に換え』
『笑顔を浮かべるより先に』
『嬉しい気持ちを 身にまとい』
『人と共に 生きています』
『私はあなた あなたは私』
『だけども私は あなたに成れない』
『小さなあなたが 缶箱に遺した』
『大きすぎる海のような 優しさを』
『今の私は持ち合わせてない』
『しかしだからこそ 私は』
『小さなあなたが まだ持っていない』
『広すぎる電子盤で 少し覚えた』
『私の言葉であなたを広める』
『小さな私』
『あなたが笑顔で 幸せになるような』
『世界が少しでも 広がるように』
『私は幸せに 手を伸ばします』
『私が大好きな あなたよ』
『その笑顔を忘れても』
『幸せの形が崩れても』
『全てを忘れてしまっても』
『あなたは私が 幸せにしましょう』
『どうか どうか 小さな私』
『あなたが楽しく 素敵な気持ちを』
『缶箱に入れた 今のあなたの』
『その想いを 忘れないで』
『私が愛する 優しいあなた』
『思い出をありがとう』
『大きなあなたより』
あなたの言葉を 私は紡ぐ
繋いで 綴って 世に放つ
拙い心は 標準装備
それでいいよと 笑うだろう
あなたはそれだけ 優しい子
私はあなたの 手を繋ぎ
言葉を紡いで 綴りましょう
私の心の缶箱は
叩くと 中身が空っぽで
カンカン音が するけれど
あなたが恋した 缶箱に
また沢山の 思い出積めて
コンコンとした 音にしよう
あなたが缶箱を開けた時
目をキラキラさせながら
笑顔で 幸せと 言えますように
〆
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
台本保管所
赤羽根比呂
大衆娯楽
noteのマガジン『台本保管所』をこちらに引っ越し中です。
【明るめ・優しい感じ】【暗め・責める感じ】【朗読・呟く感じ】【恋文】【掛け合い・演じ分け】の大まかに五つのジャンルで構成してますので、好きな台本を読んでください。
※著作権は【赤羽根比呂】にありますがフリー台本なので、YouTubeやstand.fmなど音声投稿サイトなどでの公開は自由です!使用の際は、ご一報下されば聴きに行きます。
フリー台本と短編小説置き場
きなこ
ライト文芸
自作のフリー台本を思いつきで綴って行こうと思います。
短編小説としても楽しんで頂けたらと思います。
ご使用の際は、作品のどこかに"リンク"か、"作者きなこ"と入れていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる