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歯車の街
しおりを挟む『私は、社会の歯車です』
巷でよく聞くこの言葉。
果たして、歯車なのは人だけだろうか?
私は空を見上げる。
高層ビル群の間から見える空は。
あまりにも青くて。
クレヨンか、水彩絵の具の水色を。
全面に塗ったような青すぎる空に。
この世界自体が、創り物なのかと錯覚する。
信号が赤で渡れない私の前を。
昨日も出会った車が通る。
車輪を高速で廻しながら車は走り去り。
その後ろを、昨日と同じタイミングで。
大型トラックが荷物を運ぶために着いていく。
人が社会の歯車なら。
この街は、もしかしたら。
誰かが組み立てて。
ただ楽しむために造られた。
歯車の街かもしれない。
青になる、私は歩き出す。
そして、ある思考を1人で繰り返し始める。
1つの曲しか再生出来なくなった。
壊れたCDプレイヤーのように。
もしこの地球が自然に出来てなくて。
誰かが意図的に創り出したなら。
この世界がとても理不尽で。
この世が地獄である事に納得が行く。
我々には役割があって。
貧困になる役。
ヒールになる役。
スターになる役。
富豪になる役。
それらを自分で選ぶ事は出来ず。
誰かのおままごとで決まっていたならば。
嗚呼、世界はなんて、残酷か。
自分で選んだ道すらも、事実は。
見えない誰かが操っていて。
その役割を辞めようとすれば。
『勝手に辞めるの禁止!』
と言わんばかりの荒々しさで。
立ち上がれないほどの傷を付けられる。
役割を果たす為に生きろと、強制する。
嗚呼、誰だ私に、この歯車を割り当てたのは。
忌々しい、出て来いコノヤロー
私は無意識に空を睨みつける。
口にすることはなく、ただ瞳に怒りを含ませて。
誰もいない空を、歩きながら睨みつける。
私は思う。
もしこの世界が、この街が歯車なら。
欠けた箇所の歯車は、誰が埋めるのだろうか?
一人ずつ役を割り当てているならば。
誰かを虐めて殺し。
誰かを騙して殺し。
誰かを陥れて殺し。
誰かを哀しませ。
誰かを失望させ。
誰かを絶望させ。
大事な歯車を欠けさせてしまったら。
見えない誰かに壊されるのだろうな。
今の私のように、ただただ。
人間のモノマネをしながら。
頭の中で言葉を繋げ続けないと。
自分が誰だか分からなくなる。
歩く屍の様な、役割を。
嗚呼、まただ。
また、頭の中で氾濫する。
子供のような笑い声が、また。
声もなく、見えもせず。
脳の一番奥から頭蓋骨にぶつかり。
まるで、ピンボールの様に言葉が暴れて。
脳内をぐちゃぐちゃにかき混ぜながら。
私の網膜に浮かび上がる。
言葉の形で、暴れ回る。
辞めろ、やめろ。
吐き気がする、気持ち悪い。
涙が溢れて、身体が拒絶する。
脳だけが、全てを理解して。
心は、動揺で固まる。
嗚呼、けど、言わなきゃ。
何処かに流さなければ、壊れてしまう。
壊れて、転がり、堕ちていく。
意識が、心が、わたしが。
わたしのなかの、誰かが唄う。
私は、歯車の街の一角で。
声にもならない文字だけで。
歌う、謡う、謳う。
その詩は、帰りの合図。
黒い鳥が夕焼けに向かい。
鳴いてる時間に漏れる声。
童同士の合言葉。
しかしそれは幻で。
ただ一人の、寂しい童の。
一人だけのおままごと。
無くした歯車数え切れず。
好きな歯車壊れて消えた。
童は不満な顔をする。
しかしまだまだ遊び足りず。
揺らしてみたり、叩いてみたり。
したらば歯車ぐちゃぐちゃで。
童はそれが楽しくて。
地球を掴んで遊んでは。
崩れた歯車をはめ直す。
童の不満は頂点で。
何より地球に飽きてきて。
そろそろ別の玩具に変えようと。
したらば何かが光ってる。
どうもよく見てみたならば。
気に入る形の歯車がいた。
崩れ始めた街の一角。
童は一気に楽しくなって。
黒い鳥の詩を口ずさむ。
別の言葉に言い替えて。
まるでバッタの足をもぎ取って。
動きを見つめてキャハハと笑う。
残酷な好奇心に目を輝かせ。
無邪気な悪意で歌い出す。
歯車欠けたら、こーわそ。
〆
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