詩

塵埃

朝が来た。
扉が開く、人間が来た。
カーテンが引かれて、光が指す。
僕らの肌を包む埃が。
塵と共に舞いあがる。

キラキラ
キラキラ

妖精のように楽しく。
僕らの瞳を楽しませる。
飽きるほど見た光景が。
棄てられた僕らを魅了する。

バタバタ
バタバタ

いつもの人間が、いつものように。
僕らの間を行き来する。
下から見る顔。
正面の顔。
横顔に後ろ姿。

人間は変わっていくらしい。
最初はそんな、低い場所に。
人間の顔は、無かった気がするんだ。
時が進むのは、とても怖い。
僕らがここにいることを。
彼以外の人間は、忘れたんだ。

パタパタ
パタパタ

僕らの頭をはたきが通る。
擽ったくて、くしゃみが出そう。
鼻は無くても出るものは出る。
ほら、埃は取れて塵が飛ぶ。

キラキラ
キラキラ

人間が僕らを見る。
その瞳はいつも優しい。
最初に僕らを引き取った時。
彼はよく来たねと呟いた。
僕らはみんな覚えてるよ。

君が持つ慈しみは。
僕らに掛けてくれた愛は。

この塵埃の様に、キラキラだ。

キラキラ
キラキラ


カラカラカラッ


少し間が空いて、人間が来た。
初めての人間、彼以外の人間。
彼は少し話した後でバタバタと。
人間を僕らの元へ連れてきた。

この子なら、貴方の役に立てますよ。

彼の言葉が体に響く。
人間が、僕を手に取った。
僕は埃を手で拭われて。
僕を持ち上げた人間が、口を開く。

いい品ですね、この子をください。

塵が作った光の道を伝って。
僕は人間の視線を感じ取る。
この人間も彼と同じだ。
仁愛の瞳を持つ人間だ。


僕は先に出る、新しい世界へ。
塵埃の世界で注いでくれた。
慈愛深い彼と同じ眼差しを持つ。
人間と共に、仁愛の世界へ。


〆