篁 しいら

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貴方はあの日 空へ飛んで行った
私は悲しんだ 皆も泣いていた
貴方が居ない世界は とても寂しくて
貴方がいない世界で 皆は俯いている
地上は貴方が居ない涙で
常に地面は濡れている

嗚呼 どうして神様は
貴方のように 心がとても
美しく 凛々しく 輝いている人を
私達から 奪っていくのでしょう
嗚呼 何故 神様は
貴方のような 穏やかで
賑やかで 優しくて 真面目な人に
恋をしてそのまま 連れ去ってしまうのでしょう

貴方を想い 空を仰ぐ
夏の日差しが眩しくて
宙に舞う水が 蒸発し
アスファルトは 熱されて
私達は 全身に鎧を纏い
戦地に赴く 兵士のように
死に近い街を ただ歩く
嗚呼 世界はこんなにも
厳しく 辛く 寂しいものだろうか

考えながら 汗をかき
下を向きながら 歩く私の
真上を 大きな雲が
覆い被さり 日差しを遮った
助かったなと 私は見上げる
瞳に映った その雲は
白い大きな 翼だった


嗚呼、そうか
貴方は雲になったのか
貴方は空へ行く時に
雲になりたいと願ったのか


雲になれば貴方は 翼を広げる様に
地球の何処にでも 行くことが出来る
優しい貴方は 雲になれば
夏の厳しすぎる 日差しから
地上を 守ることが出来る
自分の雲が 太陽を遮れば
人々は 夏の日差しを遮った
雲を仰ぎ見て 貴方を見上げる

そんな皆の様子を見て
貴方は 少年のように
笑いかけるのだろう
地上にいる 私達に

僕はここにいるよ
上を向いて
空を仰いで
僕に皆の笑顔を見せて

皆の笑顔を僕は
もっと沢山見たいんだ
僕はとても沢山の
小さな雲を作って
大きな雲に作り変えて
翼のみたいに大きく広げ
眩しすぎる太陽へ向かい
日差しを遮る悪戯をして
皆の上に日陰を作るよ


だから
なかないで


翼が 優しい風に吹かれて
ゆっくりと 横に流れる
翼の切れ目から 光が差して
私は眩しさに 目を細め
掌で顔に 影をつける

掌から零れて こちらを覗いた雲が
小さな悪戯が成功した 少年のように
優しく 楽しげに はにかんだ気がした

貴方は 世界を周りながら
地上にいる人々へ 笑いかけて
眩しすぎる太陽に 悪戯をして
皆に優しい日陰を 作る
大きな翼の雲に なったんだと
私は今とてもそう 想いたい

私は願おう 私は祈ろう
貴方へ対して 神様に対して


空へ行った貴方が
世界中を楽しく旅をして
沢山愛されますように


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