詩

誰か (2023.7.26)

　誰かが言った
「この世は金が価値を決める」と
　誰かが言った
「この世は美形にしか価値がない」と
　誰かが言った
「この世は学歴がものをいう」と
　誰かが言った
「この世界は努力した者が勝つ」と
　誰かが言った
「この世は勝った者が正義だ」と
　誰かが言った
「この世は正義が勝つように出来ている」と

　僕らは誰かの言葉に従い
　誰かの言葉を受け入れて
　僕らはみんなで頑張ろうと
　誰かの噂を信じて
　僕らはその道に行こうと手を繋いでたんだ
　真っ直ぐ歩いていたはずなのに

　誰かが言った
「正義など無い」と
　誰かが言った
「学歴も運も親次第」と
　誰かが言った
「美形は金で買える」と
　誰かが言った
「1番運がいいものに金が集まる」と
　誰かが言った
「金を持つものが正義だ」と

　なんだよそれ
　どういうことだよそれ
　どうしてそうなってんだよ
　なんでそうなんだよ

　僕らはいつの間にか
　握っていた手が離れて行って
　後ろを振り向けば

　あるものは人を騙してお金を奪い
　あるものは自分を傷つけて自分を殺し
　あるものは自分の為に他人を殺し
　あるものは他人の為に自分を犠牲にし

　僕らが目指していた
　僕らが学んでいた
　僕らが教えを受けた
　僕らが伝え聞いた

　正義も平和も平穏も愛情も
　
　僕らより先に生まれた人間が

　消費し
　浪費し
　壊して
　放って

　生ゴミのように腐っていた

　こんなものを食べるために
　こんなものを与えられるために
　こんなものを守るために
　こんなものを愛するために

　僕らは今まで生きてきたのか

　ねぇ誰か
　誰か僕らを見つけてよ
　誰か僕らの声を聞いて
　誰か僕らの目を覗いて
　誰か僕らへ心を向けて


　誰か
　誰か
　誰か



　誰か僕らを助けてよ



　〆