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色彩 (2023.1.08)
しおりを挟む物心付いたころは
自分の世界は色彩に溢れていた
春には桜が舞う華やかな色が。
夏には海がギラつく派手な色が。
秋には葉が彩る鮮やかな色が。
冬には雪がチラつく静かな色が。
春夏秋冬に色があって
それに人々が感嘆して
その中にいる自分も同じく
声を弾ませ
目を潤ませ
息を呑み
心を弾ませていた
そんな気がする。
少なくとも
今の自分の瞳は
現在の自分の心は
全てが白黒に見えるぐらいに
世界から色彩が枯れてしまったらしい
何時から枯れてしまったのだろうか
もともと枯れていたのかもしれない
いや
たくさん捨ててしまったのだろう
ゴミを捨てるように
いや
どこかで無くしてしまったのかもしれない
亡くなった人を数えなくなった頃から
いや
自分のもとから離れてしまったのかもしれない
自分が大事にしなかった人の分だけ
それにしても
そうにしたって
なんて世界は白黒なんだ
まるで漫画の世界に迷い込んだようだ
目の前の色が記号にしか見えない
なんて世界はつまらないんだ
まるで幸せの絶頂期に異世界に飛ばされたような感覚だ
最悪な感覚だ
色がないことに気づかなければ
自分はそのままで居られたのに
嗚呼、色が欲しい。
あの華やかな春を。
あの派手やかな夏を。
あの鮮やかな秋を。
あの静かな冬を。
自分という世界に色彩を取り戻したい。
空を見上げて晴れているな。
ではなくて
空を見上げて雲がなくて
綺麗な空色でいい日になりそう。
そう思っていた自分をまた
取り戻せたなら
もっと世界は綺麗で美しい
自分の世界は面白くて素晴らしい
そう言えるような自分になりたいと
妄想しながら現実は
白と黒の地下鉄へ
歩を進めて体を運んで
雑踏の中に消えていった
消えていく
落ちていく
枯れていく
亡くなっていく
嗚呼
俺の輝かしい色彩は、どこだ。
〆
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