狂人は、踊る。

篁 しいら

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男は回想する、自身の原罪を。

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そうだこれだ、思い出した。

別の作品を書き上げてから一か月後のことだ。
俺が一か月前に書き上げた二次創作作品は、数人にしか読まれていなかった。
まぁそれは仕方ないと、俺は深く考えずにため息をついた。

それはなぜか?
俺は細々と活動していたし、たまにしか二次創作を書かない。
久々の二次創作ながら俺的にきちんと調べ上げて時間をかけて書き上げ、作品をきれいに締めることも出来、俺の中ではとても満足していた。
自信作だったので、時間があるときに読んでほしいと友人にも頼んだ。
読んだ友人の感想は「とても良かった」だったので、俺もそこで満足していた。


あの作品を、見るまでは。


その作品は、二次創作漫画だった。
使ったキャラも同じで、内容は俺の作品に近かった。
優しい雰囲気の、優しい話、締めの展開も似ていた。
最後の言葉の使い方、俺もその言葉に近いものを作品に使用していた。

ただ、大きな違いがあった。

たくさんの人が漫画を『読んでいた』。
たくさんの人が漫画を『拡散していた』。
たくさんの人が漫画を『素晴らしいと褒めたたえて』。
たくさんの人が漫画を『中心に感想を語り合っていた』。
この瞬間、俺はその作品の全てを。




妬んだ。

その作者も、同じぐらい調べたのだろう。
俺と同じぐらいそのキャラが好きだし、同じぐらい俺の作品に誇りを持っているのだと感じた。
否、その作家の方が俺よりも漫画に気持ちを込めたから、俺の小説よりも読まれたのかもしれない。
俺の情熱がその作者に負けただけだと、頭は冷静に事態を呑み込んでいる。
俺はそれでも、目の前で話題になった漫画と作者に対しての嫉妬と憎悪で頭が真っ白になっていた。

なぜ、俺の作品には語り合ってくれる読者がいない?
なぜ、俺の作品には称賛がなにも書かれていない?
なぜ、俺の作品には拡散マークがついていない?
なぜ、俺の作品には誰にも読まれていない?
なぜ、なぜ、なぜ、なぜ?!



なぜ、俺の作品はほとんど読まれないんだ!?


俺は暫く憤りを隠しきれずにいた。
が、時間が経てば経つほどに冷静になり、今の状況や読まれないことに納得せざるを得なかった。

俺は、積極的に目立つことをしないように努めていた。
公私ともに、男は自分以外の他人が注目されることが嫌いであった。
現在インターネットで物書きをしているが、俺はそこですらひっそりと活動していきたいと考えていた。
何故か、俺が嫌いなものは他人も嫌うと本気で思っていたからだった。
だからこそ、嫉妬するのは完全にお門違いなのである。
俺は、本当に作品を読まれたいと思うのであれば自分から目立つように動かなければならない。
しかし俺はしなかった、やるという思考はもちろんあったが二の足を踏み続けてずっと同じ場所で足踏みしていた。
傍から見れば俺は、行進する真似をして立派に足上げをしているだけの、物書きである。
そして、とてつもなく捻くれ者であった。 俺の作品は、読む人が読めば必ず、素晴らしいものだと考えていた。
否、プライドという貞操概念に囚われ、男は自身の作品を沢山の人に目に晒されることを恐れ、避けていたのだ。
知能が少しでもあればすぐに思い付くことを、俺は徹底的に排除していた。


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