ヘビー短編集

篁 しいら

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泡沫の夢

泡沫の夢 2

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世界が壊れた。

それまで私たちは古い日本家屋の、微かに鼻に香る新しい井草で作られた畳の部屋にいた。
優しく和やかなその部屋の風景は、たった一言で白い白い空間へと変貌した。

「嫌だ」

否定するために開かれた口から、その言葉が出ることは無かった。
否、私は声が出なかった。出すことが出来なかった。この時が来ることを知っていたかのように、声すらも出来なかった。

そして私が撫でていた、私の幸せの全てを持つアナタは立ち上がり、私ではなく土足で世界を壊した誰かの方へ向かう。

私は手を伸ばす、そばにいて欲しいと。離れたくないと。いなくならないでと。私も連れて行ってと、その想い乗せた精一杯の右手を、アナタの方へと伸ばした。
その想いを振り切るようにアナタは振り向かず、誰かの隣で止まった。
そのままこちらを振り向き、アナタは私を見た。


その瞳は、最初にアナタと私が出会った時のような希望と喜びに満ちた真っ直ぐな碧瞳。
宝石のような綺麗で真っ直ぐな、あの瞳。
アナタのそんな瞳を見た時、私の夢はゆっくり現実へと浮上した。

アナタはその美しい瞳で、私に「あなたなら大丈夫だよ」と言ったような気がした。




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