黒騎士爆走物語

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最終決戦の部屋3

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「……!」

一瞬、スライの剣が止まる。
スライはただのスライムだ。
テレパシーや魔術の類は使えず、故に相手の主張が嘘か真かを判断する確実な方法は持ち合わせていない。

だが、今この瞬間。
対峙した青年の言葉に偽りはないと、直感でそう思った。

ぐらりと傾いたのは、己の中の義憤か。
同胞を殺された怒りはいまだ抱いてはいるものの、視線を反らすことなく言い切ったキューの覚悟は、スライも認めざるを得ない強固なものであった。

「せめて動機も悪であったなら、この剣も鈍らずに済んだものを……」

否。
スライは言いかけた己の言葉を首を振って否定した。
二体は既に戦いを始めている。
そこに情けや手加減は無用。
当人に覚悟があるのなら、なおのことだ。

「互いに譲れぬものがあることはわかった。ならば、後は力で勝敗を決めるのみ! 私は貴殿を打ち負かし、故郷へ帰る!」

三本に増えた触手を振り払い、木剣の切っ先をキューへ向ける。
宣戦布告と同時に足を踏み出し、触手生物を操る黒幕を叩き伏せんと構えをとった、その時だった。

かくん。

「ぬぅ……っ!?」

スライの足から力が抜ける。
突然の出来事に受け身も取れず、鎧ごと膝をつく。
ガシャンと大きな音が部屋に響いた。

一体なにが起こったか。
頭いっぱいに疑問符を浮かべるスライの頭上から降り注いだのは、笑い声だった。
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