77 / 91
最終決戦の部屋3
しおりを挟む
「……!」
一瞬、スライの剣が止まる。
スライはただのスライムだ。
テレパシーや魔術の類は使えず、故に相手の主張が嘘か真かを判断する確実な方法は持ち合わせていない。
だが、今この瞬間。
対峙した青年の言葉に偽りはないと、直感でそう思った。
ぐらりと傾いたのは、己の中の義憤か。
同胞を殺された怒りはいまだ抱いてはいるものの、視線を反らすことなく言い切ったキューの覚悟は、スライも認めざるを得ない強固なものであった。
「せめて動機も悪であったなら、この剣も鈍らずに済んだものを……」
否。
スライは言いかけた己の言葉を首を振って否定した。
二体は既に戦いを始めている。
そこに情けや手加減は無用。
当人に覚悟があるのなら、なおのことだ。
「互いに譲れぬものがあることはわかった。ならば、後は力で勝敗を決めるのみ! 私は貴殿を打ち負かし、故郷へ帰る!」
三本に増えた触手を振り払い、木剣の切っ先をキューへ向ける。
宣戦布告と同時に足を踏み出し、触手生物を操る黒幕を叩き伏せんと構えをとった、その時だった。
かくん。
「ぬぅ……っ!?」
スライの足から力が抜ける。
突然の出来事に受け身も取れず、鎧ごと膝をつく。
ガシャンと大きな音が部屋に響いた。
一体なにが起こったか。
頭いっぱいに疑問符を浮かべるスライの頭上から降り注いだのは、笑い声だった。
一瞬、スライの剣が止まる。
スライはただのスライムだ。
テレパシーや魔術の類は使えず、故に相手の主張が嘘か真かを判断する確実な方法は持ち合わせていない。
だが、今この瞬間。
対峙した青年の言葉に偽りはないと、直感でそう思った。
ぐらりと傾いたのは、己の中の義憤か。
同胞を殺された怒りはいまだ抱いてはいるものの、視線を反らすことなく言い切ったキューの覚悟は、スライも認めざるを得ない強固なものであった。
「せめて動機も悪であったなら、この剣も鈍らずに済んだものを……」
否。
スライは言いかけた己の言葉を首を振って否定した。
二体は既に戦いを始めている。
そこに情けや手加減は無用。
当人に覚悟があるのなら、なおのことだ。
「互いに譲れぬものがあることはわかった。ならば、後は力で勝敗を決めるのみ! 私は貴殿を打ち負かし、故郷へ帰る!」
三本に増えた触手を振り払い、木剣の切っ先をキューへ向ける。
宣戦布告と同時に足を踏み出し、触手生物を操る黒幕を叩き伏せんと構えをとった、その時だった。
かくん。
「ぬぅ……っ!?」
スライの足から力が抜ける。
突然の出来事に受け身も取れず、鎧ごと膝をつく。
ガシャンと大きな音が部屋に響いた。
一体なにが起こったか。
頭いっぱいに疑問符を浮かべるスライの頭上から降り注いだのは、笑い声だった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
《うちの子》推し会!〜いらない子の悪役令息はラスボスになる前に消えます〜お月見編
日色
BL
明日から始まる企画だそうで、ぜひとも参加したい!と思ったものの…。ツイッターをやっておらず参加の仕方がわからないので、とりあえずこちらに。すみませんm(_ _)m
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
王子様と魔法は取り扱いが難しい
南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。
特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。
※濃縮版
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
仮面の兵士と出来損ない王子
天使の輪っか
BL
姫として隣国へ嫁ぐことになった出来損ないの王子。
王子には、仮面をつけた兵士が護衛を務めていた。兵士は自ら志願して王子の護衛をしていたが、それにはある理由があった。
王子は姫として男だとばれぬように振舞うことにしようと決心した。
美しい見た目を最大限に使い結婚式に挑むが、相手の姿を見て驚愕する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる