黒騎士爆走物語

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最終決戦の部屋2

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「そういう貴殿こそ、どうなのだ!」

一本は同じようにいなす。
わざわざ死角から襲いかかるもう一本は、振り向きざまに肘鉄を食らわせた。
鎧越しにぶにゅりとした柔らかい感触。
骨のない身体に、あまりダメージは入っていないようだ。

吹き飛んだ拍子に触手がまとう粘液がびちゃびちゃとスライへ降りかかる。
触れたいとは思えないそれに、兜の下から唸り声が上がった。

「テンリィは私を助けるためにここへ連れてきたと行った! だが、それにしては襲いかかってくる施設の仕組みや貴殿の行動が矛盾している! 貴殿は今、なぜ私と戦っているのだ!?」

触手と戦いながら投げかけられた問いに、キューは一瞬詰まる。
どうしてこんなことになっているのか。
そんなの彼自身が一番聞きたかった。

最初はトラブルを持ち込んだシンに頼まれたから。
何か勘違いをしたのか、暴れ始めた黒騎士をなだめるため。
事情を説明して身の潔白を証明しようと躍起になっている内に、同胞の死を悲しむ高潔さに心を揺さぶられた。
しかし、問いかけに対する答えとしてはどれも正確ではない。

「決まってる」

今ここで、キューがわざわざ生身で戦っている理由。

「俺の身近な人達を、危ない目に遭わせたくないからだ」

触手生物に指示を出しながら、黒騎士からは目を離さぬように。

「やっとの思いで逃げてきた子供達に、もう一度戦争を見せないようにするためだ!」

その目には固い意志の光が宿っていた。
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