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黒騎士爆走物語1
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かすかな振動が天井を震わせる。
埃が降ってくる中、確実に起きつつある異変を警戒しながら辺りを見回す。
現在、私はテンリィと戦った部屋を後にし、先程使用した階段へ戻ってきていた。
地図を見たところ、どうやらこの施設は二つの棟に分かれた数階建ての建物であるらしい。
今立っているのが五階。
ここから階段で三階まで下り、渡り廊下でもう一つの棟に渡って更に別の階段で地上階に下りることで出られる、ようだ。
「どうして両方の棟に出入り口をつけないんだ」
心底不可解だったが、その疑問に答えてくれる者はいない。
しばらくすると振動は収まり、元の静寂が戻ってくる。
好機と、急ぎ足で階段を駆け下りた。
「今のは……地震、というわけでもなさそうだ」
自然災害にしては揺れが小さい。
そもそもサムニエ国近辺で地震が発生したという話はもうだいぶ長いこと聞いていない。
どこかの島国では日常茶飯事並みに発生しているということだが、私が意識を失った短時間で海を渡ったとも思えない。
つまり、人為的なものだ。
私はテンリィとの会話を思い出す。
スライムの遺体について知っているということは、なんらかの方法で私の行動を監視できることは間違いない。
テンリィから地図を得て、私が脱出しようとしていることも筒抜けと見ていいだろう。
となると、黒幕は確実になんらかの対策を打ってくる。
「さて、何を仕掛けてくるか……」
構えた剣は残念ながら木製だ。
あの部屋は正しく訓練室であったらしい。
机も椅子ももはや持ち運べる状態ではなくなってしまったので、今はこの木剣が最後の頼みの綱と言えた。
埃が降ってくる中、確実に起きつつある異変を警戒しながら辺りを見回す。
現在、私はテンリィと戦った部屋を後にし、先程使用した階段へ戻ってきていた。
地図を見たところ、どうやらこの施設は二つの棟に分かれた数階建ての建物であるらしい。
今立っているのが五階。
ここから階段で三階まで下り、渡り廊下でもう一つの棟に渡って更に別の階段で地上階に下りることで出られる、ようだ。
「どうして両方の棟に出入り口をつけないんだ」
心底不可解だったが、その疑問に答えてくれる者はいない。
しばらくすると振動は収まり、元の静寂が戻ってくる。
好機と、急ぎ足で階段を駆け下りた。
「今のは……地震、というわけでもなさそうだ」
自然災害にしては揺れが小さい。
そもそもサムニエ国近辺で地震が発生したという話はもうだいぶ長いこと聞いていない。
どこかの島国では日常茶飯事並みに発生しているということだが、私が意識を失った短時間で海を渡ったとも思えない。
つまり、人為的なものだ。
私はテンリィとの会話を思い出す。
スライムの遺体について知っているということは、なんらかの方法で私の行動を監視できることは間違いない。
テンリィから地図を得て、私が脱出しようとしていることも筒抜けと見ていいだろう。
となると、黒幕は確実になんらかの対策を打ってくる。
「さて、何を仕掛けてくるか……」
構えた剣は残念ながら木製だ。
あの部屋は正しく訓練室であったらしい。
机も椅子ももはや持ち運べる状態ではなくなってしまったので、今はこの木剣が最後の頼みの綱と言えた。
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