黒騎士爆走物語

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黒幕は決意する3

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「…………」

己の乏しい想像力でも思い描けてしまった身の毛もよだつ光景に、キューは唇を引き結んだ。
直後、管理室にぱん、と乾いた音が響く。
喝を入れるため、キューが両頬を叩いたのだ。

「すまんテンリィ。お前のおかげで目が覚めた」

赤くなった頬をそのままに、キューは操作盤へ指を滑らせる。
これまでよりも段違いに速くなったそれは、長年放置されていた機械達に指令を与えていく。
プログラムという命を得たそれらは縦横無尽に動き回り始めた。
コードで繋がれた機械触手だけに留まらず。
扉の開閉、穴のサイズ、果てには部屋の位置そのものまで変わっていく。

「今は俺の感情なんて二の次だ。誤解させたままのあいつをなんとしても脱出させない」

とはいえ、この施設はからくり屋敷ではない。
細かな位置は変えられても、出口などの全体的な配置そのものはそのままだ。
方向音痴でもない限り、テンリィが渡した地図で脱出は可能だろう。

「あの地図作ったの俺だし」

なんで渡しちゃったんだよ。
キューは施設に入るにあたって、部下が迷わないようにと一時でも自分の持ち物を貸したことを後悔した。

それに加えて。
轟音を立てて稼働していく施設そのものの異変に、おそらく向こうも気づいているだろう。
機械触手の猛攻も金属製のドアも、戦闘狂の部下でさえものともしなかった黒騎士だ。
きっと機械だけで迎え撃つには心もとない。

「……いいさ、そろそろ引きこもってるのも飽きてきたところだ」

だから、キューは立ち上がる。
最後にオート稼働になるようスイッチを入れ、部屋を後にする。

「俺が出る」

モニターの画面が変化する。
黒い背景に蛍光色のピンクが描くのは、文字だ。

『transition to ERO trap dungeon mode』

それはこの施設が最終形態に移行したことを示している。
最後のすれ違いが、今始まろうとしていた。
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