黒騎士爆走物語

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決闘の部屋10

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数秒、時間は経ったが彼女は動かない。
そこでようやく警戒を解いた。

「机と椅子を持ってきていて本当によかった……」

しみじみと勝因を呟く。
爆風に晒されていた鎧の前面部分はまだ熱く、テンリィがまだ持っているかもしれない武装を解除しに駆け寄ることも難しそうだ。
ダミーを囮にして剣で切りつけた時も、実は火傷覚悟だった。

「……やはり、つよいですね」

と。
掠れた声が響き、私は飛び上がって剣を構える。
驚いた瞬間にまた少し体液が蒸発したが、あからさまな隙を突くような攻撃はなく。
くの字に折れ曲がるように倒れ伏したテンリィに、それ以上戦闘を続行する気はないようだった。

こうなってくると、目の前の触手生物は強敵から情報源へと変わる。

「テンリィ、先程時間がないと言っていたな。それは何故なのだ。貴殿やその頼まれたという人物はなにが目的で私をここに連れてきたのだ?」

矢継ぎ早に質問を投げかければ、髪と同じ色の目がうっすらと開かれる。

「本当に、目的なんてないんです。間違えてあなたを運んだ奴からたのまれて、断りきれなくて……まあ、そういうところがおもしろいから部下をしているんですが」

ふふ、と横たわったままこぼした笑みに嘘は見当たらなかった。

「目的、なんて、なかったはずだったんですけど、ね……」

はさり。
私の足元に、1枚の紙切れが飛んでくる。
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