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決闘の部屋6
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一瞬。
両者力量を測り、一手を実行するには充分な時間であった。
先に動いたのは相手側。
手首のスナップを効かせた動作は何を投げたのかと疑問に思うまでもなく、私の眼前に答えが迫る。
黒い筒に入った物体。
漂う火薬の匂い。
どぉん!
爆発が空気を揺らし、棒状の的が何本か焼ける。
そこでやったかと足を止めるような程度であれば対処も楽であったのだが、燻る視界の向こうで移動する足音が聞こえた。
私と同じ方向へ向かっている。
「馬車の爆発も貴殿か」
「おや」
黒煙を振り切り見下ろせば、特に驚くでもなく片眉を上げるテンリィの姿。
互いに射程距離範囲内だが、仕掛けない理由は察していた。
どうせやるなら、攻撃力を上げてから。
「気が合いますね」
とても戦闘をしているとは思えない冷静な声だが、テンリィの眼はまばたきをすることもなく私を見据えていた。
手が伸ばされる。
剣置きに立てかけられていた剣を掴み取ったのは、同時だった。
「む」
女戦士の姿が視界から消える。
戸惑いは一秒に満たず、私は剣を握る小手ごと頭の上で構えた。
次の瞬間。
ガキィン!
金属同士が激突し、重力をも攻撃に加えたテンリィからの振りかぶりが私に襲いかかる。
びりり、腕が痺れた。
予想外の重さに、人間体へ変身していた腕がスライムへ戻りかける。
「なかなかの腕力だな」
「機械触手を素手で千切った貴方に言われると照れます」
到底照れているようには見えない顔で、テンリィは次の一手を放つ。
両者力量を測り、一手を実行するには充分な時間であった。
先に動いたのは相手側。
手首のスナップを効かせた動作は何を投げたのかと疑問に思うまでもなく、私の眼前に答えが迫る。
黒い筒に入った物体。
漂う火薬の匂い。
どぉん!
爆発が空気を揺らし、棒状の的が何本か焼ける。
そこでやったかと足を止めるような程度であれば対処も楽であったのだが、燻る視界の向こうで移動する足音が聞こえた。
私と同じ方向へ向かっている。
「馬車の爆発も貴殿か」
「おや」
黒煙を振り切り見下ろせば、特に驚くでもなく片眉を上げるテンリィの姿。
互いに射程距離範囲内だが、仕掛けない理由は察していた。
どうせやるなら、攻撃力を上げてから。
「気が合いますね」
とても戦闘をしているとは思えない冷静な声だが、テンリィの眼はまばたきをすることもなく私を見据えていた。
手が伸ばされる。
剣置きに立てかけられていた剣を掴み取ったのは、同時だった。
「む」
女戦士の姿が視界から消える。
戸惑いは一秒に満たず、私は剣を握る小手ごと頭の上で構えた。
次の瞬間。
ガキィン!
金属同士が激突し、重力をも攻撃に加えたテンリィからの振りかぶりが私に襲いかかる。
びりり、腕が痺れた。
予想外の重さに、人間体へ変身していた腕がスライムへ戻りかける。
「なかなかの腕力だな」
「機械触手を素手で千切った貴方に言われると照れます」
到底照れているようには見えない顔で、テンリィは次の一手を放つ。
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