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決闘の部屋1
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ひとしきり嘆いたことで、私の精神は一周回って落ち着いてきた。
同時に全身にのしかかるような疲労を自覚する。
わめきちらして疲れるなど、幼子のようで少し恥ずかしさが込み上げた。
今は亡き同胞の気持ちを胸に、眠気の誘惑に逆らわずにいたい気分であったが、そうもいかない。
黒幕がスライムに危害を加える存在であると分かった今、脱出する必要が更に高まった。
亡骸を連れて行ってやりたかったが、この先に危険があるならば傷つけてしまう可能性がある。
私自身が万全の体調でないなら尚の事だ。
名残惜しくはあったが、私はここに彼らを置いていく決断を下した。
「せめて地面に放り出すよりは良いだろう」
肩当ての一つを外し、敷布の代わりとする。
硬かろうが、私の粘液が内側に染み込んでいるので居心地は良いかもしれない。
曲線を描く金属板に乗せられ、ゆりかごのようにゆらゆらと揺れる亡骸達を背に、私は部屋を後にした。
さて、これからどうするか。
日誌の詰まった本棚を通り過ぎ、私は万能鍵あけ術を施した扉の前まで戻ってきていた。
スライム達のいた部屋は行き止まりだった。
見た限り他の空間へ通じる扉はなかったため、行くあてがなくなってしまったのだ。
手詰まり感が否めないまま、やはり番号のついた扉をしらみつぶしに探し回るしかないのかと視線を巡らせた時。
「……ん?」
両開きの扉のすぐ近く。
廊下の一番端の壁に、別の扉がある。
刻まれているのは、番号ではなくなにかの文字。
他の扉と同じ造りである上に、先に両開きの扉に気を取られたため見逃していたらしい。
もしやと思ってドアノブを捻ると。
同時に全身にのしかかるような疲労を自覚する。
わめきちらして疲れるなど、幼子のようで少し恥ずかしさが込み上げた。
今は亡き同胞の気持ちを胸に、眠気の誘惑に逆らわずにいたい気分であったが、そうもいかない。
黒幕がスライムに危害を加える存在であると分かった今、脱出する必要が更に高まった。
亡骸を連れて行ってやりたかったが、この先に危険があるならば傷つけてしまう可能性がある。
私自身が万全の体調でないなら尚の事だ。
名残惜しくはあったが、私はここに彼らを置いていく決断を下した。
「せめて地面に放り出すよりは良いだろう」
肩当ての一つを外し、敷布の代わりとする。
硬かろうが、私の粘液が内側に染み込んでいるので居心地は良いかもしれない。
曲線を描く金属板に乗せられ、ゆりかごのようにゆらゆらと揺れる亡骸達を背に、私は部屋を後にした。
さて、これからどうするか。
日誌の詰まった本棚を通り過ぎ、私は万能鍵あけ術を施した扉の前まで戻ってきていた。
スライム達のいた部屋は行き止まりだった。
見た限り他の空間へ通じる扉はなかったため、行くあてがなくなってしまったのだ。
手詰まり感が否めないまま、やはり番号のついた扉をしらみつぶしに探し回るしかないのかと視線を巡らせた時。
「……ん?」
両開きの扉のすぐ近く。
廊下の一番端の壁に、別の扉がある。
刻まれているのは、番号ではなくなにかの文字。
他の扉と同じ造りである上に、先に両開きの扉に気を取られたため見逃していたらしい。
もしやと思ってドアノブを捻ると。
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