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恐るべき真実の部屋7
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扉をくぐり抜けた先は暗かった。
生物の気配はない。
壁際に灯りのスイッチらしきものがあったが、破損していて動かせそうもなかった。
元からこうだったのか、先程の万能鍵開け術のせいかはわからない。
どちらにせよ失われたスイッチは元には戻らないので気にせず進む。
スライムの体に戻れば視界に頼らずとも周囲を確認することはできる。
身体の一部を水色の流動体に変え、空気の流れを察知して様子を伺った。
「なにかの、倉庫……か?」
壁を埋め尽くさん勢いで設置されているのは、書物が収納された棚の数々だった。
中には乱雑に詰め込まれたものや、倒れているものまである。
簡易的にまとめられた背表紙の文字が規則的に並ぶところを見ると、なんらかの日誌のようだ。
棚の他にはテーブルと椅子が数脚置かれていた。
蓋の開いたインク壺とペンも転がっている。
どうやら日誌をこの場で書いていたらしい。
インク壺を傾けてみたが、液体の一滴も動く様子はなかった。
よほどの時間、放置されていたようだ。
「書いていた時期と、今とで相当の時間が経っている、ということか……?」
棚の一つから適当に本を取り出し、開いてみる。
スライムの体なら周囲を感知できるとは言ったが、それはあくまで空気の流れを感じ取って何があるかを把握する程度のもの。
紙に染み込んだインクを読むのはさすがにできなかった。
しかし、うっすらとでもわかることはある。
「やはり日誌……、それも、観察日記、か?」
ページの左上に書かれている数字は、おそらく日付だろうということ。
そして、時折差し込まれた絵のようなものがなにか動くものであること。
これがわかっただけでも収穫だ。
生物の気配はない。
壁際に灯りのスイッチらしきものがあったが、破損していて動かせそうもなかった。
元からこうだったのか、先程の万能鍵開け術のせいかはわからない。
どちらにせよ失われたスイッチは元には戻らないので気にせず進む。
スライムの体に戻れば視界に頼らずとも周囲を確認することはできる。
身体の一部を水色の流動体に変え、空気の流れを察知して様子を伺った。
「なにかの、倉庫……か?」
壁を埋め尽くさん勢いで設置されているのは、書物が収納された棚の数々だった。
中には乱雑に詰め込まれたものや、倒れているものまである。
簡易的にまとめられた背表紙の文字が規則的に並ぶところを見ると、なんらかの日誌のようだ。
棚の他にはテーブルと椅子が数脚置かれていた。
蓋の開いたインク壺とペンも転がっている。
どうやら日誌をこの場で書いていたらしい。
インク壺を傾けてみたが、液体の一滴も動く様子はなかった。
よほどの時間、放置されていたようだ。
「書いていた時期と、今とで相当の時間が経っている、ということか……?」
棚の一つから適当に本を取り出し、開いてみる。
スライムの体なら周囲を感知できるとは言ったが、それはあくまで空気の流れを感じ取って何があるかを把握する程度のもの。
紙に染み込んだインクを読むのはさすがにできなかった。
しかし、うっすらとでもわかることはある。
「やはり日誌……、それも、観察日記、か?」
ページの左上に書かれている数字は、おそらく日付だろうということ。
そして、時折差し込まれた絵のようなものがなにか動くものであること。
これがわかっただけでも収穫だ。
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