黒騎士爆走物語

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黒幕は目が死んでいる8

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我に返ったキューはそういうおもちゃのように震えだす。

「ちょっと待ってくれ、アレお前にも見えてるか」
「見えてます、ケーブルを素手で引きちぎる男が見えてます」
「あのケーブル金属製なんだけど?」
「いくら本体が金属でも、根元の天井や接続部は脆いところがあるでしょう」
「ああ、なるほどそこが壊れて……」
「まああのおっちゃん金属部分の本体引きちぎってますけど。素手で」
「ええええ!?」

膨れあがる筋肉、血管の浮いた手の甲に千切れ飛ぶケーブルの破片。
おそらく咆哮しながらケーブルへ襲いかかっているだろう男の様子はまさに悪鬼羅刹と言ったところか。
俺たちはとんでもないものを引き取ってしまったのでは? と気づき始めたキューを、更に悪夢のような光景が襲う。

男がちぎれたケーブルの一部を振り回し始めた。
先端に接続機械が繋がったままのそれは、もし音が聞こえていたとしたら遠心力によって空気を裂く恐ろしい音が聞こえていただろう。

ハンマー投げのように回して力を溜めたそれを、
キュー達のいる方へぶん投げたのだ。

ガシャン!
ブツッ。

「あ」
「カメラ壊れた」

モニターの一画面がノイズ混じりの灰色となり、なにも映さなくなる。
キューは椅子に座ったまま腰を抜かし、脱力する。

「良かった……
シンに幻覚掛けといてもらって本当に良かった……!」

本来、魔力吸収装置を稼働させるにはモニター越しの管理室で操作せずともその場で直接動かす方法もある。
むしろ対象の様子を見ながら細かな調節ができるので、後ろめたい目的でなければそちらの方が推奨される。
ではなぜキューはそうしなかったのか。
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