10 / 91
目覚めた部屋1
しおりを挟む
我が事ながら実に迂闊。
殿を務めていた時でさえ失わなかった意識を手放し、どれほどの時間がたったのか。
ぼんやりと感知し始めた外界は馬車の中とは様変わりしており、私は半ばむりやり覚醒した。
(これは……!?)
そこは部屋の中だった。
壁は全て金属製で、凹凸のない材質は登ることもできないだろう。
自分は診察台のような脚の長い机に乗せられており、その上部にはなにをするものなのか予想もできない複雑な作りの機械が据え付けられていた。
コードや何か長い紐のような物がたくさんついている、ということしかわからない。
部屋の中は電灯が点いていて明るいが、太陽の自然な光はない。
と、私はここで重大なことに二つ気づいた。
四面、天井と同じ色の壁で囲まれている部屋だが、唯一設置されている窓があった。
曇りガラスの向こう側がどうなっているかは分からないが、ぼんやりとした輪郭が一つ、動いている。
誰かがいる。
こちらの様子を伺っている。
そしてもう一つ。
こちらは火急を要する。
黒鎧がない。
おそらく窓の向こうにいる何者かに剥がされたであろう鎧は私が感知できる限りの空間には存在していなかった。
もはや身体の一部ともいえる外殻はなく、そして意識を手放し、先程覚醒したばかりの今。
私は生まれたままの姿であった。
しばらく眠っていたようなものなので体力は大分戻ってきている。
慌てて人間体に変身するが、私の正体は向こう側の何者かにはバレてしまっていることだろう。
それはすなわち、こちらの手の内がある程度予想されているということ。
(せめて私の正体を見て侮ってくれていればよいのだが)
がが……ざ……
と、突然砂利が擦れあうような音が聞こえた。
発生源は窓のやや上側に設置されている黒い箱のような物体からだ。
技術開発部が実験しているのを見たことがある。
確か、魔法を使わずとも離れたところで音声を伝えられる道具、だったような。
殿を務めていた時でさえ失わなかった意識を手放し、どれほどの時間がたったのか。
ぼんやりと感知し始めた外界は馬車の中とは様変わりしており、私は半ばむりやり覚醒した。
(これは……!?)
そこは部屋の中だった。
壁は全て金属製で、凹凸のない材質は登ることもできないだろう。
自分は診察台のような脚の長い机に乗せられており、その上部にはなにをするものなのか予想もできない複雑な作りの機械が据え付けられていた。
コードや何か長い紐のような物がたくさんついている、ということしかわからない。
部屋の中は電灯が点いていて明るいが、太陽の自然な光はない。
と、私はここで重大なことに二つ気づいた。
四面、天井と同じ色の壁で囲まれている部屋だが、唯一設置されている窓があった。
曇りガラスの向こう側がどうなっているかは分からないが、ぼんやりとした輪郭が一つ、動いている。
誰かがいる。
こちらの様子を伺っている。
そしてもう一つ。
こちらは火急を要する。
黒鎧がない。
おそらく窓の向こうにいる何者かに剥がされたであろう鎧は私が感知できる限りの空間には存在していなかった。
もはや身体の一部ともいえる外殻はなく、そして意識を手放し、先程覚醒したばかりの今。
私は生まれたままの姿であった。
しばらく眠っていたようなものなので体力は大分戻ってきている。
慌てて人間体に変身するが、私の正体は向こう側の何者かにはバレてしまっていることだろう。
それはすなわち、こちらの手の内がある程度予想されているということ。
(せめて私の正体を見て侮ってくれていればよいのだが)
がが……ざ……
と、突然砂利が擦れあうような音が聞こえた。
発生源は窓のやや上側に設置されている黒い箱のような物体からだ。
技術開発部が実験しているのを見たことがある。
確か、魔法を使わずとも離れたところで音声を伝えられる道具、だったような。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
孤独な蝶は仮面を被る
緋影 ナヅキ
BL
とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。
全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。
さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。
彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。
あの日、例の不思議な転入生が来るまでは…
ーーーーーーーーー
作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。
学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。
所々シリアス&コメディ(?)風味有り
*表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい
*多少内容を修正しました。2023/07/05
*お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25
*エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜
嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。
勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。
しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!?
たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。
チート魔王はつまらない。
碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王
───────────
~あらすじ~
優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。
その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。
そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。
しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。
そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──?
───────────
何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*)
最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`)
※BLove様でも掲載中の作品です。
※感想、質問大歓迎です!!
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる