黒騎士爆走物語

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黒騎士になにがあったか3

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それが数時間前の出来事。
今の私は、指揮官などと大層な呼び方をされるような職とはうってかわって、地面に転がる戦死体になりかけていた。

(大した外傷がないのは不幸中の幸い……だが……)

死ぬ覚悟で挑んだ殿は、予想していたよりも長く時間が稼げた。
自分の勢いに戦意を削がれたか、こちらへ手傷を負わせてくるほどの威力ある猛撃がなかったのだ。
やがて降伏の伝令が伝わったのか、旨味がないと判断したか、向こうの兵士達は引き上げていった。

そこまではよかった。
後は自分も引き上げるだけ、なのだが。

(体が……動かん……)

敵を撹乱し、攻撃を防ぎ、とにかく時間稼ぎに終始した。
途中で馬は足をやられ動けなくなり、申し訳ないとは思いつつちょうどあった水場の近くで乗り捨てて、後はずっと己の力のみで走り続けた。

人よりも体力と魔力を使うこの身体は、いまやどちらも底を尽きかけていた。
倒れたのは戦いによる影響で荒れ地となった場所だ。
水も食べ物も補給は望めない。

(敵軍は引き上げた、他に追手は見当たらない……少し、眠って回復、を)

天候は干からびるほどの晴天でもなければ、鎧が錆びるほどの雨が降る気配もない。
ゆえに、体力の回復を優先すべき、と。
私はほんの少し、意識を緩めてしまったのだ。
殿を務め、自軍を逃しきったこの時こそ、油断するべきではなかったというのに。

「お! いいのみっけ」

(なんだ、……誰かの声?)
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